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メイジ オブ Mage  作者: 水無月ミナト
建国編 奔走する魔導師
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第十四話  「世界会議」

 立体映像によって映し出された七大国の統治者たち。

 デトロア王国の女王フレイヤ。ユートレア共和国の代表として妖精女王アニェーゼ。ゼノス帝国の獣帝代理コローディア。カラレア神国の女王代理レイア。ヴァトラ神国の天王リュート。ドラゴニア帝国の龍帝テンペスタント。アクトリウム皇国のネプチュリス。

 そして、魔導国家ホウライの代理国王、魔王ネロ・クロウド。


「議長は俺がやらせてもらう。さて、始めようか」

「ま、待て! こんなこと聞いていない! 認められるわけがないだろう⁉︎」


サミュエルが叫ぶ。俺はフレイヤへと視線をやり、対応を求める。


「いいえ、通達いたしましたはずですが……ああ、ご実家の方へ送らせていただきましたので、もしかしたら入れ違いになったのかもしれませんね」

「な、なんだと……?」

「フレイヤ、僕も聞いていないのだが?」

「首脳のみで行うという通達でしたので、わたくしと大臣数名が知っていれば十分かと」


うーん、割と強引な論だが、まぁ二人とも黙ってしまったし、大丈夫なのだろう。


『おいネロ! これは本当に映っているのか? たしかに各国の長は見えるようだが……いや、約1名わけのわからん奴が混じっておるな』

「問題ありませんよ、龍帝様。ちゃんと映っていますので、破壊だけはしないでください。賠償金を請求しますよ。それと、獣帝様の代理は承認済みです。龍帝様にも通達はいたしました」

『む、そうだったか? なら良い。許す』


誰も許しを求めいていないのだがな。

ともあれ、これで問題はもうないか。それじゃ改めて始めさせていただこうか。


「議題は単純明快。建国宣言を、承認するか否か。目的は言った通り、世界の均衡を保つことだ」


 俺の発言に、真っ先に異議を唱えたのはアニェーゼだった。


『私は反対いたしますわ。魔導師一人でも危険ですのに、小国とはいえ一つに集めるなんて』

「ああ、その意見はごもっとも。魔導師一人の戦力は一国に相当する。が、国が束になれば勝つことはできる。そのうえガラハドという存在がいたように、一人で魔導師数人を相手に大立ち回りすることも、不可能ではない」

『ガラハドを引き合いに出されても困りますわ。あの人は生まれながらの異質。今の時代にもいるとは限りません』

『ごちゃごちゃうるさいわ! その魔導師を全員、我が相手すれば良いのだ。何も心配いらん!』

『龍帝様、そういう問題ではありません』

『そういう問題だ、妖精女王』


 俺を抜いて、変なところで火花が散ってしまっている。

 まぁ、龍帝はそう言うやつだ。あいつは、賛成派だ。

 だったら、アニェーゼは龍帝に任せるか。説得は、難しいだろうけど。


「獣帝様はなんて回答でしたか?」

『好きにやらせれば良い、と。その程度、脅威でもなんでもない』

「くはは。なるほど。擦り寄るな」

『いいえ。本心でございますよ』

「ああ、ああ。そういうことにしておこう」

『――調子に乗るなよ小僧。その頭カチ割るぞ』


 獣帝の代理人が、ドスの効いた声で脅してきた。

 彼らは、獣帝を守るのに必死、国を守るのに必死、なにもかもに必死そうだ。


「小僧からのアドバイスだ、余裕はもっておけよ。でないと逆効果だ」

『その場にいたなら、貴様の心臓を抉り抜いてやったのに』

「残念だったな」


 この場にいたところで、そんなことできないと思うけど。


「女王陛下は?」

「反対です」


 俺の問いに、フレイヤは笑みで返した。

 まーそうなるよな。


「あなた一人でも危険ですのに、これ以上危険となる要素は増やせません。反対いたします」

「なるほどなぁ」


 色々考えた末の判断だ。仕方ないだろう。


「天使長様は」

「具体的にお前の施策を話せ」

「そうですねー……戦争が起きた際に、俺がどちらかの国の味方として参戦させてもらい、早々に戦争を終結させてもらう。魔導師が増えれば、国ができれば、それごと片側の味方につかせてもらう。どちらにつくかは、我が国での議論をさせてもらった上で決定する」

「……魔導師が多いほど、その脅威は大きくなる。お前の国がどちらに着くかで、勝敗は大きく変わる、と」

「だろうな。そうなるように、国の力をつけていく」


 リュートは黙り込んでしまった。どちらにするか考えているのだろう。


「海皇様は」

『構いませんよ。その程度で我が国に被害があるとも思いません。中央海域を自由に使えるようになると考えるなら、メリットは大きい』

「ああ。港に加え中央海域の整備も進めるとしよう」

『ええ。何かあれば、龍帝と共に潰せば良いですから』


 にっこりにっこり。

 腹黒同士の満面の笑みほど怖いものもなかろう。

 海皇とは似た匂いがするんだよなぁ。策士気取ってるあたり。


「カラレア神国は?」

『周りは認めろとうるさいわ。でも、メリットがあるかどうかね。戦争になろうとも、私たちの国はなんとかできるものね』

「まーそうかもな。そうかもしれねえけど」


 ここ以外に切るタイミングはないんだもんなぁ。


「T-REXの恩、どうする気だ?」

『……いいわ。認める』


 ここしかない。

 これが実現できないのであれば、意味はないのだから。

 だから、ここでいい。


「――さて、じゃあそろそろ結論出していただきましょうか」


 もうこのあたりでいいだろう。

 俺はそう打ち切る声を出す。


「まずは、うちの国の建国を承認するかどうかだ」

「デトロア王国は反対します」

『ユートレア共和国も反対ですの』

『ゼノスは賛成だ』

『アクトリウム皇国は賛成です』

『ドラゴニアも賛成だ!』

「ヴァトラは反対する」

『カラレア神国は賛成です』

「賛成4と反対3か。多数決ならば承認となるが……持ち越した方が良さそうか」


 ここで多数決という理由だけで国の承認を認める前例を作るのは良くないだろう。のちのち響きそうだしな。


『そのようですね。記念すべき第一回目の議題が持ち越しとは締まりませんが、仕方ないでしょう』

「ああ。時間をかけた。これにて解散とさせてもらう」


 すると、立体映像で映し出されていた各国の首脳陣も消えていった。


「ほ、ほら……お前の国はできなかったんだろう? だったら今はもういいじゃないか! 帰れよ!」


 サミュエルが吠える。だが、かといってすごすご引き下がるわけにもいかない。

 俺が反論しようとした時、先にリュートが口を開いた。


「そういうわけには行きません。ヴァトラ神国はもう、ノエルを差し出す理由は残っていない。むしろ差し出す理由を検討しなければならなくなった」

「なんでだよ! もう式は終了直前だったんだぞ!」

「終了していなくてよかった。神に背かなくて済むのだから」

「……アブストル! さっさとあの無礼者を捕らえないか!」


 サミュエルが誰かの名前を呼ぶ。すると奥でひっそりと佇んでいた兵の一人がこちらに歩いて向かってくる。

 アブストル……アブストル? 確か、ラカトニアの前王の名前がそんな感じだった気がするな。ということは、極神流の使い手か。相当めんどいな。


「いやぁ、あんた、ネリの兄貴なんだってな? 一度会ってみたかったんだ」

「残念だけどネリと違って魔導師なんだ。剣士と戦うつもりはないよ」

「でしょうな」


 アブストルが懐に手を突っ込む。そして目にも留まらぬ速さで短剣を投げつけた。

 だが、それは俺を狙ったものではない。俺の後ろ――ノエルへと狙いを定めていた。

 俺はその短剣を指2本で受け止める。

 ピュウ、とアブストルが口笛を吹いた。


「怒らないんですか?」

「極神流だからな。容易に想像できる」

「なるほどなるほど」

「めんどくせーから逃げさせてもらうぜ」


 俺は首元のマフラーに手を伸ばし、展開する。

 そしてノエルを担いでマフラーに乗り込む。


「ま、待て! アブストルなにをしている! 逃すな!」

「いやぁ、空の相手にはどうにも」

「何のために高い金を……! ほかの警備兵はどうした!」


 ノエルとマフラーに乗り込み、そして俺が入ってくる際にぶち破った窓から抜け出す。


「リュート、後任せるぞ」


 去り際にそれだけ残し、俺は教会を後にする。


「追え!! 捕まえた奴に賞金を与えるぞ!!」


 サミュエルの声が響く。

 まじかよ。俺を捕らえて賞金程度で済ませられるのか。高くつくぞ。

 そんな喧騒は置き去りにする。

 風を切る音の中、ノエルのか細い声が聞こえた。


「……ネロ」

「ん、なに?」

「遅いわよ」

「ごめん。でもちゃんと間に合った」

「ぎりぎりよ! 本当に……怖かった。来ないんじゃないかって……」

「うん。これからは、もう離さないから」

「絶対よ」

「絶対だ」


 とはいえ、後ろがうるさいのも事実なんだよなぁ。

 俺を追ってきている警備兵。ホドエールのお陰でスワッチロウを飼育できるようになった騎士団だろう。彼らが後ろから迫っているのがわかる。

 ノエルを抱えたまま戦うのは、できないことはない、けど。

 その時、俺をここまで運んできたエレオノーラが、自身の兵を率いて近づいてきた。ちょうどいい。


「ノエル、先にあいつに乗って帰っててくれるか?」

「ネロはどうするの」

「あいつらを静かにさせるだけだ。すぐ帰るよ」

「……今回だけは許す」

「ありがとう」


 苦笑を浮かべながら返す。


「エレオノーラ、ノエルを頼む」

「任せとけ」


 龍化状態のエレオノーラにノエルを渡すと、高く飛翔していった。


「俺らも手伝いましょうか?」

「龍人が手を出すのは後々ごたつく。一人でなんとかするさ」

「わかりました」


 エレオノーラの部下の申し出を断り、俺はマフラーから降りる。

 通常状態にマフラーを戻していると、エレオノーラとその兵団が飛び去っていくのが見えた。


「おや、逃げないのですか?」


 俺を追っていた騎士団の先頭には、アブストルがいた。


「ああ。一応、相手をしてやる」

「そいつぁ嬉しいね。ネリを負かすほどの相手など、そうそういませんから」

「だったら国王決定戦に出ればいいのに」

「あれは命の保証がありませんから」

「俺ならあるって?」

「ええ。人誑しのあなたなら」

「そうかい」


 ま、今の俺なら無血で制圧などお手の物だが。


「まずは、剣でお相手願えますか?」

「いいぜ」


 極神流の神級ってのも、一度やってみたかったところだ。

 ここなら存分にできる。


「極神流なら屋内の方がよかったか?」

「そんなことはありませんよ。極神流は、どこでも殺せる流派です」

「なら良かった――全力でいくぞ」


 俺は、魔眼を光らせた。

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