表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイジ オブ Mage  作者: 水無月ミナト
建国編 奔走する魔導師
152/192

第七話 「王の死」

 空飛ぶマフラーを使い、デトロア王国の王城へ飛んでいく。

 まずは学園長から問い質した方が良さそうか。そっちから行くとしよう。

 その後王城行って、グレンとフレイヤを問い詰めて、それでもダメだったらクロウド家にでも押し掛けるか。

 どこかしらで何かしらの手がかりは手に入るだろう。


 衛兵に見つからない高さから城門を越え、適当な窓から侵入する。

 すぐに姿を魔法で消して、城内に探索結界を張る。

 フレイヤとグレンの魔力反応を見つける。二人は別々にいるようだ。フレイヤの近くには複数の人がいる。護衛だろう。


 ついでにフレンとフレイも探しとくか。

 こっちの二人にも周りに複数の反応があるな。ま、暗殺が本当であれば当然の対応だろう。

 フレイの居場所は地下か? 下の方にいるな。

 フレンはまた中庭か。何をしているんだ、こっちは。


 俺はとりあえず近くに反応したグレンの方へ向かう。

 城内を進み、グレンを見つける。が、他の兵がいる。そいつらがいなくなるまで彼らの後を追う。

 途中、グレンが立ち止まって取り巻きに指示を下し、散っていく。残ったグレンも少しだけ歩き、足を止めた。


「ばれたか」

「そう仕向けただろ。気配を消していなかった」


 振り向いてくるグレンに合わせ、俺も姿を見せる。


「そんなことはない。消していないとばれるだろ、他の連中に」

「そういうのはいい。何の用だ?」

「それこそわかってるだろ。王様について」

「俺の口からは何も言わん」

「何か知っているのは否定しないと」

「……ま、この身分だとな」


 そりゃそうか。公爵家の跡取りだもんな。

 さて、こっからどう情報を引き出そうかな。


「言っとくが、何も教えるつもりはない」

「教えてもらわなくてもいいよ」


 箝口令でも敷かれているんだろう。が、話してもらわなくても情報は得られるのだ。


「どうしてもダメなら姫様のとこに行くだけさ」

「やめておけ。さすがに今は、誰も面会できん」

「ふーん。即位式か」

「……それくらいなら、明日にも発布される」

「では、王は死んだと」

「そうだ」

「どうして」

「事故だ」

「事故なら公表すればいい。他国にも、早く言わなきゃ余計な詮索をされる。どうしてしない?」

「大臣たちの意向だ」

「それだけじゃないはずだ。もし、本当に事故なら――」

「ネロ、その口を閉じろ」


 グレンが、手をこちらへと向けてくる。

 魔導書の無い今、魔導師のグレンとまともに戦って無事で済むか……いや、魔導師と争う時点で無事で済まない。

 だが、黒の魔導書の無い今、大きな魔法を使う際には一瞬のラグも生じる。今戦いたくはない。


「……じゃあ、取引はどうだ?」

「貴様と取引することなど何もない」


「――その犯人、フレイだよ」


 俺の言葉を聞いたグレンは、突進をしてきて壁に叩きつけられ、押さえつけられる。

 背中の痛みに顔をしかめるが、間近のグレンの顔は怒りで歪んでいるようだった。

 何だ、どうしてこんなに怒っている? 何か、おかしくないか?


「ネロ、もう一度言う――口を閉じろ」

「――――」


 グレンの顔、目、息遣い。

 嘘は、ない。


 なるほど。

 そうか。

 お前も気付いたか。


 俺は頷きを返す。グレンは押さえつけていた腕を放してくれる。

 再三の忠告は誰が聞いているかわからないここで、話すべきことではない、そういうことだろう。

 軽くせき込みながら、こちらに背を向けて歩き去るグレンに声をかける。


「……姫様から離れるな」

「わかっている」


 力強い返事に、俺もグレンに背を向けた。



☆☆☆



 グレン、フレイヤに情報を聞けないとなると、次は学園長の家に行くとするか。

 王城を出て、学園長の家へと向かう。

 玄関から行くのも面倒くさいな。学園長のいる部屋に直接入るか。

 ということで探索結界で学園長宅をサーチする。

 ミネルバとキルラもいるな……後は学園長と、この反応は……王妃?

 王妃が、来ているのか?


 空から玄関の方を見ると、確かに四頭立ての豪華な馬車が止まっている。

 王妃が学園長の家に、か……まぁ、王様が暗殺されたとして、何かしらの相談があるのなら、分からなくもない。

 あの学園長に相談して解決するかは謎だが。

 そういやクォーターだっけあの人。それだけ苦労しているなら人生経験もある……んだろう。

 まぁいいや知ーらない。


 ってことで、学園長と王妃がいる部屋の窓をガンガン叩く。

 突然の音と、それが俺がやっていることに驚く二人。とりあえず開けてくんねぇかな。

 学園長がなんかジェスチャーで下降りろ的なことを言っている気がするが知らんな。開けてくれないなら自分で開けるか。

 魔法でちょちょいとすれば簡単に開いた。

 悠々と侵入する俺を見て頭を抱える学園長。


「……クロウド様の気持ちが何となくわかる」

「失敬な。クロウド家でこんなことしませんよ」

「どこでも普通はしないからな!」


 まったく、と呆れたようにため息を吐く学園長。


「クレスリトが常識を教えるなんて……」


 と驚愕を表しているのは王妃だ。

 俺もまさか学園長に常識を教えられるとは思わなかった。大丈夫大丈夫、非常識ってのは十分承知の上でやってるから、まだ大丈夫。


「……で、何の用だ」

「わかってるでしょうに」

「……フロウ、今日は帰った方が身のためだと思うが」

「いえ、魔導師様にも意見をお伺いしたいのですが」

「やめておけ。この魔導師だけはやめておけ」


 学園長が必死に諭そうとしているが、王妃は聞く耳を持たない。

 まぁ、俺も止めておいた方が良いと思う。だって俺だぜ?

 とはいえ情報が得られそうなのでこのまま進めるが。


「あ、でも俺、魔導師じゃないんで」

「えっ?」

「はっ?」

「魔導書、持ってないので」


 俺は手をひらひらさせる。


「……つまり君のその姿は趣味だったというわけか」

「ああ!? かっこいいだろ黒のローブ!! ふざけてんのか!!」

「本気で怒られた……!?」

「姉さんのセンス馬鹿にすんじゃねえぞ」

「ただのシスコンか……」


 ファミコンだよ。

 その話は今はいい。


「で、俺はどんな意見を言えばいいですかね?」

「……魔導師でないのなら、別に」

「おいこいつどんだけ魔導師に飢えてんだ」

「そういう人だ」


 うーん。

 あ、そうか。


「ちょっと待っててください」


 そういい残し、俺は部屋を出て行った。



 そしてミネルバを連れて戻ってきた。


「魔導師を連れてきましたよ」

「ちょっとネロ、どういうことだ?」

「あの王妃様が魔導師としか話したくないっていうから」

「ああ……えっと」

「あなた、魔導師なのですかっ?」

「い、一応……」


 嬉々として迫る王妃にミネルバが引き気味に答える。


「そ、それで聞きたいことというのは……?」

「それは――夫の、王の死について」

「フロウ!」

「私はこれでも魔法については長けています。頭も悪い方ではありません……が、王の死についてはどうやっても見当がつかないのです」


 ミネルバがこちらを見てくる。

 俺は話を続けるように促す。


「……見当がつかないとは、死因についてですか?」

「すべてです」

「すべて?」

「いつ、だれが、どうやって、死因も、動機も、そのすべてがわからないのです」


 ふーん。まぁ、そりゃそうか。

 そうだろうな。

 ミネルバがまたこちらを向いてくる。俺は耳打ちをする。


「犯人の心当たりを聞いてください」

「わかった。……王妃様、王を殺した者に心当たりは?」

「……身内は疑いたくありません。大臣たちも」


 馬鹿かな。王が殺されるなど、身内以外にどうやって暗殺するというのだ。外は堅い城壁に囲まれ、中は多くの警備が配属されている。

 俺以外にどうやって侵入して殺しまで行える?

 グレンのいるところで。あの騎士の監視をどう掻い潜った。

 フレイヤのいるところで。魔導師ではなくなったが、魔力操作を覚えた彼女に治せない傷はほぼないのに。


「黒幕は身内だ。そこは断言してやる」

「魔導師でないものには用はありません」

「そうかい。じゃあ学園長にでも。黒幕は王族。数は限られているので、誰を疑うべきかはわかるはず」

「……まぁ、一応。だが方法は?」

「魔法に長けた者ですらわからない、となれば……魔法でも、凶器でもない」

「どういうことだ?」

「学園長なら知っているでしょう? それ以外の方法は」

「…………それが君の、推理の果てか」

「ええ。何か、間違いがありそうですか?」

「間違いしかない……と言いたいが、今のままでは状況証拠すらない。ただの憶測だろう?」

「まぁ、ね」

「何か、まだ持っているのか?」


 俺は曖昧に笑ってごまかす。これ以上の情報は、やらない。

 が、まぁ王が死んだ、暗殺されたことが事実であることが分かっただけでも十分だ。


「ミー姉、王妃、学園長。ありがとうございました。後は、何とかします。ただ、王族の動向にはご注意を」



☆☆☆



 その後、国へと帰った俺は王が暗殺された事実は確認できたと、会議に呼んだ者たちに伝えた。

 そして翌日、王の死とともにフレイヤの即位式の開催を告知された。


 同時に、面倒なことも着々と進行していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ