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聖女アレ・クロア  作者: ひろい
旅立 -departure-
72/132

Ⅷ/重役会議

 ヴィルはようやく離れてくれたエミルダの存在にホッとしつつ、当初の目的地に向かっていた。

 途中ようやく気づいたのか遣いの馬車に乗り込み、悠然と正門を潜り、巨大な玄関を通り過ぎ、会議室の豪奢な扉を開かせ、入室。


 とたん、その場にいた二十にも及ぶ御老体が一斉に起立、直立不動の体勢を取る。


「楽に」


 片手をあげたヴィルを合図とし、一斉に席へと腰を下ろす。

 ヴィルも一番奥、向かいの肘掛け椅子に着席。


 それと同時に司会担当者が、


「では、ヴィルフォローゼ王子が到着しましたので、現時刻を持ちまして本会議を開催させて頂きます。司会はわたくし、ケオルミン=レハイヨが勤めさせていただきます。以後、よろしくお願いいたします」


 パラパラ、とまばらな拍手。


 みな表情は険しく、不遜な態度だった。

 腕を組んでふんぞり返り、その脇腹や頬にはたっぷりと贅肉がこびりついている。


 みな、この芸術都市で一角の重役についている人物たちだった。

 そんな彼らが集まったのは、この地に元第四位王位継承権保持者であり、現状でも王子という肩書きにコネクションは未だ健在であるヴィルフォローゼが訪れたのを好機と見て、なにかしら甘い汁をすすろうと画策していたため。


 その様はまさしく老害とも呼べる在り方。

 そういう者たちが最初に行うのは、まずはなにより追及だった。


「……それで、ヴィルフォローゼ王子。なにゆえこれほどまでに長い期間、会議を欠席なされたのですかな?」


 ヴィルはあくまで、愛想笑顔だった。


「いや、各地を遊説して回っていてな。まったく、王子という肩書きも良いことばかりではないよ」


「困るますな、そんなことでは……ヴィルフォローゼ様はこのブルーネルでの、最重要ポストについておられるのですから」


「そう言うな。余も責任は理解しておるが、なにぶん体はひとつ。ひとどころにばかり付きっ切りという訳にもいかぬ。世知辛い世の常よな」


 それにみな、渋面を作りしきりに頷く。


 ヴィルはそれを内心蔑み、嘲笑う。

 仕方ない、こういう付き合いも身分相応の義務というものだ。


「胸中、お察しいたします。では、本日の議題を紹介させていただきます。最初はブルーネルが抱える予算案件。いくつか陳情も来ておりますので、ご検討も。続いて、各地の治安問題の対処。最後にこの地で話題になっております、ミセクスカス森の黒魔女問題について話し合わせていただきます」


「黒魔女、だってぇ?」


 唐突な反応は、その場の誰も予想していなかったものだった。


 ケオルミンの声に応える形のそれは、その場の誰でもないもの。


 それに一同、声がした方――最奥に座るヴィルのさらに後方。

 贅沢な絨毯を越えた先の窓、その向こうにあるベランダの手すりに頬杖をつき、不遜にこちらを見下ろす小汚い三十前後の、髭面男。


 その唐突な出現にまずは一同眉をしかめ――そして目を、見開く。


 この会議室は地上12メートルに当たる、四階に位置するのだぞ?

 いかようにして物音ひとつ立てず、誰にも気づかれることなくその場に出現した?


「――っと、邪魔したか? わりぃわりぃ、なんか面白そうな話し声が聞こえてたんでな。ちっと、聞き耳立てちまった」


「何用かな、ベト=ステムビア?」


 それに応える、その場で最も近くに位置し、背中を向ける形で座る、ヴィル。


 みな、その一挙手一投足に注目する。


 名を知るとは、顔見知りか?

 いやそれよりも――ベト=ステムビアだと?


「……ヴィルフォローゼ王子、まさかこの御仁?」


 ひとりの問いかけなど無いかのよう、ベトはヴィルの言葉に答える。


「っへ、いやべっつにー? ただまーこんな小綺麗な街で散策ってのも趣味じゃないんでね。だから――」


「ボクのあとを、尾けたのかい?」


「エミルダに、ちょいちょい言われてるんでね」


 詰問に、開き直りで応対。


 悪びれる様子もない。

 ヴィルは微かに含み笑い。


 あえて問うこともない。

 どうせ目を離すなだとか、気をつけろといった類のことだろう。


「そうか。で、感想は?」


「黒魔女って、何の話だ?」


 領主のひとりが、


「ヴィルフォローゼ様、これはいったい……?」


 しかしヴィルは一顧だにせず、席につきベトに背を向けたまま、


「フフっ、気になるかい? だったらキミも、同席すればいいよ。どうせ下らない予算調整や、陳情を却下する理由をでっちあげるだけだ。気にする事もない」


「! ヴィ、ヴィルフォローゼ王子! そ、それはいくらなんでもあんまり――」


「じゃ、邪魔するぜっ」


 司会ケオルミンの抗議を遮るように、ベトは右手一本で身体を二メートルは宙に舞わせ、室内に侵入。

 それにみな目を見張り、着地を確認してからしばらくして思い出したように眉をしかめるも、そんなことベトの知ったことではなかった。


 ヴィルの右脇に控えるよう並び立ち、


「お前がどんな悪巧みしてんのか、せいぜい拝見させていただくぜ?」


「おぉ、こわいね?」


 双方言葉とは裏腹に、愉しそうに笑っていた。




 会議の内容は、ベトが事前に盗み聞いていた内容とほとんど相違なかった。


 みな苦慮顔で腕を組んだり、しきりに頷いたりはしていたものの、実際のところ予算を節約したり、陳情を解決するための案を述べる者はおらず、自らの取り分を減らすと言い出す者もいはしなかった。

 茶番といって差し支えのないやり取り。


 思わずあくびを一つ、ガッツリ隣から顰蹙の一睨みをいただく。

 どーもすいませんね、育ちが育ちなもんで。


 そして都合二時間ほどを経てようやく、待ちに待った本題だった。


「では続いて、本議題最大の焦点であります黒魔女問題の件に移りたいと思います」


「よっ、待ってました」


 ベトはこれみよがしに声をあげ、パチパチとフザけた拍手を送る。


 もちろんみな眉をしかめ、睨みを返したが気にせず、ヴィルだけが妙に嬉しそうだったが。


「ご、ごほん……えー、本件はミセクスカス森での目撃情報が幾たびも寄せられ、大小様々なる被害も届けられていることは既知の事かと存じますが――」


「いや、オレ知らねーんだけど?」


 ベトの声に眉根を寄せたケオルミンの代わりにヴィルが、


「ミセクスカス。この地ブルーネル、最大の森でね。深く、計り知れず、地元住人でも入り口周辺で木の実を取る程度に留め、滅多に寄ることは無かったそうだ。しかし逆に言えばその命を自ら散らそうとする可哀想な小市民には都合のいい場所でね。毎年幾十人もの罪も無き神の御子が、その周辺で行方不明になっているという」


「あんたたちが連れてったわけじゃねーんだよな?」


 明らかにギクリ、とした反応を示したものが三分の一。


 いわゆる口減らしというヤツだろう。


 稼げもしない、抱くだけの価値もない。

 そういう人間はいても限りある資源を食いつぶすだけで、今この地においては生きることさえ許されない。


 クソッたれだがこの時代においてはよくある話のひとつではあった。


「……しかしその地で、最近妙な噂が頻出していてね。曰く、死に掛けの病人が復活した。曰く、奴隷商人の死骸が転がっていた。曰く、黒い魔女の奇跡を見た――」


「黒い魔女、ねぇ」


 ベトはフカフカの椅子に腰を沈め、両手を頭の後ろに回す。

 それにヴィルは笑顔を見せ、ケオルミンに先を促す。


「は、はいっ。それで詳細は不明のこの案件ですが、あまりに件数が増えている為これ以上放置しておくのは難しく、一度調査団を結成し、向かう必要があるかと――」


「と、いう話だが、ベト?」


 その誘うようなヴィルの言葉に、選択の余地は無かった。




 別れた場所で一度落ち合い、それから宿へと向かった。


 その宿はベトたちがかつて泊まったことが無いほどのクオリティで、みなただただ口をポカンと開けて呆けるばかりだった。

 プライヤだけ、


「なんですか? なんですか?」


 と訊き回っていたが。


 その晩は豪華な食事を頂き、それぞれの部屋へ。


 初めてみな、個室を割り当てられた。

 エミルダが一番喜んでおり、アレとプライヤは不安そうだったが、結局ひとり一部屋のまま別れた。


 そして部屋のベッドで横になること一時間。

 ベトはおもむろに立ち上がり、物音を立てず"窓から"外に出た。


 気持ちがいいほどの満月が、そこにはあった。


 まるで狼男でも出そうな雰囲気だった。

 まったく、御伽の国万歳だった。


 みんな、楽しんでいる。

 こんな殺伐とした出征に、付き合わせる必要もない。


 ベトは少しだけらしくないことを考え、夜の街を進んだ。

 待ち合わせ場所は、すぐ近くだった。


 街角で、ヴィルは壁にもたれて笑みを浮かべていた。


 近くにはお付きが三人ほど。

 まったく特権階級ってヤツは苦手だね。


「では、行こうか?」


「ああ」


「けれど一応ひとつだけ……アレは連れて行かなくても、いいのかい?」


「あ? 必要ねぇだろ。こんな夜更けに子ども連れて出歩くなんてよ」


「そうか」


「ああ」


「だが、付いてきているよ?」


 まさか、と思った。

 振り返ったそこには、いつもの笑顔だった。


「アレ……あんた、」


「ベト、どうしたんですか? こんな夜更けに」


 そりゃあこっちの台詞だと言いたかった。


 気づかなかった。

 気づけなかった。


 この、自分が。

 女子どもの尾行に。


 そんなバカな。

 それほど耄碌したって言うのか?


 ありえない。

 それになにより、この子は――


 カツ、と音を立てて杖を前に。


「どこか、行くんですか?」


「べ、別に大した用じゃ……」


 誤魔化そうと思った、反射的に。

 確かに自分は嘘こそうまくないが、しかしこの進軍に付いていかせるメリットはひとつもない。


 黒魔女だなんて、なにがあるかわかったもんじゃない。

 まぁそれを言うなら白魔女だって相当キテはいるが。


 考えていると、アレは一歩こちらに間合いを詰めてきた。

 どうしようか、数瞬迷った。


 アレは自分の裾を、掴んだ。

 違和感。


「……アレ?」


「行きませんよね、ベトは?」


 声が、震えていた。

 ハッ、とした時には、手遅れだった。


「ベト、は……行きません、よね? わたしを置いて、どこか、に……行きません、よね? 置いて……独りになんて、しません……よ、ねっ?」


 アレは諾々と、溢れる涙を拭う様子さえ見せなかった。

 ベトは一瞬、自分が取るべき行動を判断できなかった。


 その間が、命取りとなった。


 アレは、決壊した。


「べ……ベト、嘘……ですよね? 嘘だって、言って……言ってくだ、あ、あ、あああ、あ――」


「アレ=クロアっ!」


 ベトは叫び、その小さな身体をかき抱いていた。


 油断していた。

 甘かった。


 勝手に誤解していた。

 クソ身勝手な疎外感を抱いていた。


 自分を、殺したくなる。


「ひとり……じゃ、ねぇだろ、あんたは? みんな、みんないるじゃねぇかよ? エミルダのオバさんだってあんたのこと気に入ってるし、プライヤは似たようなもんだし、ヴィルはなに考えてるかわかんねーが、」


「酷いね」


「っせーよ、割って入んないま大事な話してんだからよ。……だから俺はいない位の方が、それくらいの方があんたにとって、」


 彼女の身体は小刻みに、震えていた。


「ベト……みんな、みんなわたしを置いていくんです……誰も、誰もわたしを……愛して、くれないんです……ベトベトベト……わたしなんて、わたしなんてもう――」


 今ので決定的に、気づいてしまった。

 この娘は自分とまったく、同類だ。


「ッ……ば、バッカ野郎! あ、あんた死んだらみんな、みんな悲しんで……」


「――ベトは悲しんで、くれないんですね?」


「! な、泣くわっ!!」


 一瞬自分が、どうにかなったように錯覚した。

 アレは涙に濡れた透き通った瞳で、こちらを見つめていた。


「……泣くんですか? ベトが?」


「あ、あぁ……そういうことも、あるかもな」


「でもベト……泣いてるとこ、見たことありません」


「そうだな……正直俺も、泣いたことねぇわ」


「……嘘ですか?」


「言ったろ? そういうこともあるかもな、って……あんたが死んだらなんて想像もつかねぇから、その時は想像もつかない事も起こるかも知れねぇ、って意味だよ」


 半分は、嘘だった。


 アレが死んだかもしれないと思ったことは過去あった。

 あの王さん様の間で、兵に槍で貫かれた時だ。


 あの時は思いがけず激昂し、特攻に近く突っこんでいった。

 だが今は、あの時よりアレに対する想いは変化している。


 果たしてどうなるかわからないというのもまた、事実ではあった。


 アレはこちらの顔を観察するようにじろじろ見ている。

 どういうつもりなのか?


「な、なんだよ? 文句あんのかよコラ」


「いえ……ただ、そういわれると心が落ち着きました。不思議ですよね? ベトが泣くのは哀しいっていうのに、落ち着くだなんて……」


「バカっ。あんたが死ぬほうがよっぽど悲しいっての」


 言って、自分はなにを言っているだろうと思う。

 死はいつでも間近にあり、忌避するものでも恐怖するものでもなかったはずなのに。


 するとアレは泣き顔のまま、柔らかく微笑む。


「ありがとうございます」


 少しだけ落ち着いたアレをあやしながら、ベトはヴィルたちと行軍を共にした。

 馬車の中を見回すと、みな鋭い目つきの屈強な男たち。


 王直属の近衛兵たちを思い出す。

 別に自分がついていく必要なんてないんじゃないか?


「…………」


 ギュっ、とアレがベトの袖を掴んだ。

 たぶん、同じ事を考えたのだろう。


 視線を向けて、笑ってやることにする。


 それだけで、アレは弱々しくだが微笑み返した。

 単純なことだった。


 そんなやり取りを経て、一向は例の森の前に到着する。


「へぇ、ここが……」


 見上げ、ベトは声をあげた。


 高い高い樹木は、そのてっぺんが視認出来ないほどだった。

 目線を、下げる。


 木々が密集したそこは黒々としていて、一メートル先も見渡せそうにない。

 その奥の暗さは、どこか瘴気のようなものが漂っているようにさえ感じられた。


 なるほど、コレは魔性のなにかが棲んでいても不思議ではないかもしれない。


「なぁ、アレ。あんたはどう――」


 気軽な様子で、聞こうとした。

 面食らった。


「────」


 アレは目を、輝かせていた。

 キラキラと、いわゆる御伽噺でも見ている様子。


 この子の反応にはついていけないな、とベトは額を抱える。


 そこに、


「感想は?」


 ヴィルが後ろから、代わりのように尋ねていた。

 ベトは振り返り、ただ肩をすくめる。


 それにヴィルは、乾いたように笑う。

 こんな笑い方を見たの、ベトは初めてだった。


「さて、じゃあ行こうか?」


「別にオレに断りはいらねぇだろう?」


 一度も周囲には気を配らず、そして男たちもまた何を口走るでもなく、行軍は開始された。


 ベトは一歩一歩、踏みしめるようにして森をいった。


 湿度が高い。

 周囲に、獣の気配が充満している。


 狼、犬、鳥、牛――どれも攻撃力があり、闘争本能に溢れている。

 いつ襲い掛かられても、不思議ではない。


 ベトはギオゾルデの柄に、手を掛けていた。


 徒党を組む獣との戦い方に一番長けているのは、自分だ。

 袖を掴み続けるアレを、横目で確認する。


 だがしかし、どこまで歩いても獣たちが襲ってくる気遣いはなかった。


 不思議だった。

 この森は、諍う空気がない。


 なんというか、調和が行き届いていた。

 もっといえば、呑気だった。


 呑気と聞き、ふとアレを連想した。


「……静かだな」


「そうだね」


 ふとした呟きに返したのは、ヴィルだった。

 というかこれだけひとがいて、会話が出来るのがこいつひとりという状況が笑えるものだった。


「なんも起きねぇじゃねぇか、こんだけ物々しくしておいて……いったいどの辺よ?」


「そう言われても困るね。だいたい今回が第一回目の調査遠征なのだから、どこでどうなってるかなんて――」


「待て」


 ベトがヴィルの言葉を、遮る。


 視線は肩越しに、向こうを捉えている。

 ヴィルもそれを追う。


 暗い木陰の群れ──その向こうで、さらにくらい漆黒の影を見た。


「あ……れは?」


 ヴィルは声を、震わせていた。

 ベトも、それに同調していた。


 胸が、震える。


 ひとだ。

 たぶん、ひとだ。


 だがこんな森にひとの影を見るなどと、誰が想像しただろうか?

 噂じゃなかったということか?


 ベトは反射的に、剣を交えたいと思ってしまっていた。

 まったく傭兵は、これだから手に負えない。


「――で、どうすんだい大将?」


「さて、ね。調査というからには、存在を確認したというだけで撤退しても構わないんだがね」


「そんな気、ないんだろうが?」


「まぁね」


 顔を見合わせ笑い、ふたりは再度そちらに視線を戻した。

 そこに影は、既になくなっていた。


『な……!』


 ふたり、声がハモった。

 ありえなかった。


 目を逸らしたのは、僅かに1,2秒程度。

 なのに、それで?


「お、おいアレ……信じられるかよ、いま」


 視線を向けた。


 そこにアレは、いなかった。




 アレは真っ黒な森を、ひとり歩いていた。

 そこに意思は、存在しなかった。


 ただ気づけば、足が前に進んでいた。

 まるで、夢の中にいるかのようだった。


 ふわふわ、と考えがまとまらない。

 ただどこかに行かなければならないという使命感に駆られていた。


 それがどこからくる動機なのかは、判明つかなかった。


 アレはただ、歩き続けた。


 視界は、足元の僅かな円形状しかなかった。

 フラフラしながら、しかし転ぶこともなかった。


 よく考えれば、杖がなかった。

 いったいどこに忘れたのか、どうしても思い出せなかった。


「……ベト」


 ぼんやりと考え事をするとき、アレは彼のことを考えた。


 なぜ、自分に優しくしてくれるのだろう?

 いつまで、彼は傍にいてくれるのだろう?


 考えれば考えるほど、この短い期間が一時の奇跡のように思えてならなかった。


 もしこの夢が消えた時、自分は果たして自分を保てるだろうか?

 彼がいない世界に、自分は耐えられるだろうか?


 考えれば考えるほど、自分の弱さが浮き彫りにされるようで、そんな自分が世界を変えられるとは、到底――


「あなた?」


 ふと、現実世界からの声を聞いた。

 それにアレは我に返り、下げていた視線をあげた。


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