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勇者はあくまで脇役です。  作者: 沙φ亜竜
隣国トナリーノ
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第7話 勇者アクマ、スライムに負ける

 スライムの魔王は町外れに住み着いている、という話だった。

 道行く人に尋ねたりもしながら、アクマたちは目的地へとたどり着く。


「ここか!」


 アクマたちの目の前にたたずむ、魔王の居城。


「ボロっちいです! ゴミのようです!」

「そう言っちゃ悪いよ」


 訂正。魔王の住んでいるらしき小屋。しかも、かなりボロボロの。

 サイズも実にコンパクト。平屋の掘っ立て小屋といった様相だった。


「まぁ、ここに魔王がいるのは間違いない!」


 アクマは小屋のドアを蹴り開ける。


「うりゃ! 勇者アクマのお出ましだ! 魔王、覚悟しやがれ!」


 完全に悪者の言動ではあるが、本人は正義と信じて疑わない。


「な……なんじゃ、お主らは!? 勝手にワラワの家に押し入りおって!」

「問答無用! お前を倒す!」

「ちょっ!? 待つのじゃ、やめるのじゃ、話を聞いてほしいのじゃ!」


 剣を構え、魔王をまっぷたつ。

 といった勢いだったものの、スライムの魔王は間一髪でかわす。


「むう、ちょこざいな! 黙ってオレに斬られろ!」

「そんなわけにはいかぬわ! なんなんじゃ、いったい!?」

「問答無用だと言ったはずだ!」


 アクマはさらに斬りかかる。

 スライムはそれを、うにょんうにょんと身をよじらせ、避け続ける。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「あ……危なかったのじゃ……」


 荒い息を吐くアクマと安堵の息をつくスライム魔王。


「ほんとに、なんなのじゃ? 後ろにいるお主ら、答えるがよい!」


 この期に及んで偉そうではあったが、とりあえず素直に応じ、デビルが答える。


「え~っと、あなたがこの国を支配しようとしている悪い魔王だよね? アクマは勇者なので、その野望を打ち砕くべく、退治に来たってところなんだけど」


 緊張感のかけらもない口調ながら、今回この場を訪れた目的を伝えた。

 それを聞いたスライム魔王は、反撃に打って出る。


「ワ……ワラワは支配しようなどとは考えておらぬ!」

「嘘をつくな!」


 アクマが怒鳴りつける。

 しかし、その後はどんどん劣勢に追い込まれていくことになる。


「嘘ではない! ワラワは人間とスライムが共存できる世界を目指しておるだけじゃ!」

「だったらなぜ、魔王なんて名乗ってやがる!?」

「魔王という肩書きがあると、なんかカッコいいではないか!」

「そんなアホな理由かよ!」

「アホとはなんじゃ!? 自らを棚に上げおって! そもそも、魔王だからスライムだからと、問答無用で斬りかかってくるなど、礼を欠くにも程があるわ!」

「ス……スライムごときに対して、礼儀など必要ない!」

「スライムごときじゃと~!? ワラワは人間のそういう考えが許せないのじゃ! スライムにも人権を!」

「い……いや、スライムは人間じゃないから、人権ではないだろ……」

「だいたい、人間どもは自分勝手なのじゃ! 『けいけんちかせぎ』などというわけのわからない理由で、ぷちぷち殺されるワラワたちスライムの気持ち、お主らにはわかるまい!」

「う……それは……」


 アクマもやったことのあるクチなのだろう。


「人間を代表して、お主が土下座して謝るのじゃ!」

「ご、ごめんなさい……」


 最終的に、アクマは言われたとおり、土下座までしていた。


「うわ……アクマが謝るなんて……」

「ごちゃごちゃ言われすぎて、勇者様の脳みその許容量を超えてしまったんですね!」




 こうして、勇者アクマはスライムに言い負かされてしまったのであった。


 ――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!


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