第36話 スライム魔王、ヌメリ気に苛立つ
また新たな国へと足を踏み入れたアクマたち一行。
町の外までサタンの爆発魔法でワープしてきたあと、ごくごく普通の建物が立ち並ぶ、こぐごく普通の町に入ったのだが。
その町の中は、ごくごく普通ではなかった。
「なんだか、やけにヌメヌメしてます! 建物もそこらじゅう、ベチョベチョです!」
サタンが文句を垂れる。
「トナリーノのときと同じだな! ここにもスライムが大量に住んでるってことか!」
アクマが笑いながら言うと、スライムの女王兼魔王であるライムちゃんが急に怒り出す。
「ふざけるでない! よく見よ! このヌメリ気、スライムのものとは完全に異質! なんとも不快感を伴う嫌ぁ~なヌメリ気じゃ!」
「……異質なんだ……。僕には違いがわからないけど……」
「デビル、お主まで! それはワラワを……いや、スライム全般を愚弄する発言じゃぞ!?」
「え……。そんなつもりはないのに……」
ぷんすかと頭上から湯気を立ち昇らせるライムちゃん。
あまり温度が上昇しすぎると、体が蒸発してしまうのではなかろうか。
と、それはともかく。
周囲の様子が少々おかしい、ということに、デビルはようやく気づいた。
「どうでもいいけど、それなりに大きな町っぽいのに、人の姿が見えないよね?」
「あ~、そうだな。確かに人はいないな。だが……」
「別のものは、いっぱいいますですね!」
サタンの指摘どおり、町の中にはたくさんの生物がうごめいていた。
それは人間ではなく。
スライムでもなく。
そこはかとなく、ヌメヌメとした生物だった。
「やはり、こやつらじゃったか!」
ライムちゃんは怒りの度合いをさらに上げ、湯気どころかシューシューと音を立て始める。
本当に蒸発しているのだろうか。
と、それは置いといて。
町を我がもの顔で歩いている――というか、這っているというべきか――その物体はナメクジだった。
「ナメクジが大量発生してます!」
「というか、ナメクジがこの町の住人、って感じじゃないか?」
「鬱陶しいナメクジどもめ、人間の住む町を侵略しおったのか!」
そんな推論を口走るアクマたちに、町の住人――すなわち、ナメクジが話しかけてくる。
「ワタシらは、もとからこの場所に住んでいたんだヌメ。人間たちの文化を吸収し、建物を築き、町を形作ってきたんだヌメ」
つまりここは、ナメクジのナメクジによるナメクジのための国、ということのようだ。
教えてくれたナメクジにお礼を述べ、デビルたちは再び歩き出した。
「それにしても、ヌメヌメとうるさいヤツじゃったの~。体もヌメヌメで気持ち悪い上にあんな喋り方までされては、不快感も倍増じゃ!」
ライムちゃんはいまだに、ぷりぷりと怒っている。
「いろいろと教えてもらったのに、ひどいこと言っちゃダメだよ、ライムちゃん」
「スライムだってヌメってるくせに、なに言ってんだかな!」
「勇者様の言うとおりです! どっちも同じヌメヌメ生物です!」
「なにを言うか! 成分が違うと言うておろう! ワラワたちスライムのヌメリ気は、こんなに不快なヌメリ気ではないわ!」
アクマたちの心ない言葉に、ライムちゃんの怒りは爆発寸前といった様相。
「ナメクジなど、最低最悪の生き物じゃ!」
ライムちゃんが大声で叫ぶ。
ふと気づけば、周りにたくさんのナメクジたちが集まり、アクマたち全員をぐるりと取り囲んでいた。
単なる野次馬……というわけではない。
ナメクジたちの目には、明らかな怒りの念が浮かんでいる。
はたしてアクマたちはどうなってしまうのか?
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!




