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勇者はあくまで脇役です。  作者: 沙φ亜竜
スパイの国ウメボシ
33/53

第33話 デビル、恋に突っ走る

 デビルは考える。


 自分にはなんの力もない。

 アクマの猪突猛進天真爛漫荒唐無稽自己陶酔能力だって、今回は役に立たないだろう。

 頼みの綱であるサタンも、魔法封じのかかった中ではただの女の子モドキでしかない。


 ここで、もう1人の仲間に目を向ける。


「そうだ! ライムちゃんのなんでも溶かす能力なら、大丈夫なんじゃない?」

「うむ、そうじゃの。ワラワの能力は、問題なく発揮できそうじゃ。今はお菓子を食べ過ぎたりなどしておらぬからの!」


 よし! これなら行ける!

 王のもとへ赴き、文句をぶつけられる!

 アクマは希望を見い出し、気合いを高める。


 それを止める声。


「デビルさん、お気持ちは嬉しいのですが……。お城に侵入するなんて、さすがにそこまでするのはどうかと……。下手をしたら、デビルさんたちが捕まってしまいますわ」


 シトヤカが申し訳なさそうに提言する。

 だが、ここでくじけちゃ男が廃る、とばかりに、デビルはハッキリと言い返した。


「止めないでよ! シトヤカさんのために、ボクはなにかしたいんだ!」

「国王のもとへ行くのが、本当にシトヤカのためになると思っているのかい?」


 サワヤカの言葉にも、耳を貸さない。


「もちろんです!」

「……そうか、だったら止めない」

「お兄様!?」


 シトヤカは驚いていたが。

 これでデビルは、兄の了承を得たことになる。


「話のわかるお兄様で助かりました」

「ふふっ、キミにお兄様なんて呼ばれるのは、まだちょっと早いとは思うけどね」

「まだって、お兄様! なにをおっしゃってますの!?」


 頬を真っ赤に染めるシトヤカ。

 そんな妹に微笑みを送り、サワヤカはこれまで以上に爽やかな声で言葉を紡ぐ。


「ともかく、ここは彼らに任せてみようじゃないか。なにか変わっていくかもしれない」

「はぁ……わかりました。ですが……」


 シトヤカが静かにデビルのほうへと歩み寄っていく。

 そして、


「気をつけてくださいね?」


 と言って、デビルの手をぎゅっと握った。


「できれば……応援、お願いできないかな?」


 少々あつかましいかもしれない、とは思いながらも、勇者使い養成学校での出来事を思い出し、デビルはお願いを申し出る。


「スパイでしたから、最後まであの養成学校で学んだわけではありませんよ?」

「それでも構わないよ」

「……わかりました。頑張ってください」(にこっ)

「あと、ボクが無事戻ってきたら……」

「……はい、そうですね。キスしますわ。ほっぺたにですけど」

「……うん」


 やっぱり、ほっぺたか。

 ちょっと残念に思いつつ、デビルは気合いを入れ直し、国王シタタカのいる城を目指した。

 やけにニヤニヤした仲間たち3人を、その背後に引き連れて。


 ――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!


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