第32話 勇者たち、さらに再会を果たす
ドアを開けて、ひとりの男性が家の中へと入ってくる。
しかも、こちらもまた見たことのある顔。
「おや? キミたち、生きていたんだね」
爽やかな声を響かせて入ってきたのは、お菓子の国スイーティアの牢屋で出会ったサワヤカだった。
「お兄様! この方々とお知り合いなんですの?」
「えっ? お兄様!?」
詳しい話を聞く。
サワヤカはシトヤカ同様、この国から送られたスパイだった。
スイーティアで任務に当たっていた際、ドジって捕まったところを仲間に助けられて逃げ出し、今こうして戻ってきた。
アクマたちと比べて時間がかかったのは、爆発魔法による移動手段なんかを持っていなかったからだ。
そして、さっきの会話からわかるとおり、サワヤカはシトヤカの兄でもある。
久しぶりの帰宅。
シトヤカはすかさず、兄のために食事を用意する。
メニューはもちろん、白いご飯とウメボシだ。
「ん~~~~! やはり、このすっぱさは最高だな!」
「ふふっ、当たり前ですわ! ワタクシが丹精込めて漬けたウメボシですから!」
「シトヤカさんも、スパイに出てたんじゃ……」
「あら、デビルさんからツッコまれるなんて……。ライジーンへと出かける前に漬けておいたのですわ。帰ってくる頃には、いい感じに漬かっているんですのよ」
「時間をかけすぎな気もするけど……」
ただ、さっき食べたウメボシが美味しかったのは事実だった。
……と、そうだ! ウメボシなんて、どうでもいいんだ!
国王に文句を言ってやらないと!
デビルは熱くなっていた原因を改めて思い出す。
その件について、アクマが口を開く前に、サワヤカから指摘が入った。
「みんな、さっきの話は聞こえていたよ。国王シタタカのもとに行くのはやめておくんだ。返り討ちに遭うだけだから」
国民全員がスパイであるこの国。反発もないわけではない。
それを退けるため、国王は強固な城を建てている。鉄壁の守りを誇る城だ。
国民がほぼいないのだから、兵士だって少ない。それでも侵略されないのは、その城のおかげでもあるのだという。
「でも、こっちにはサタンの爆発魔法があります!」
「当然ながら、城には魔法封じもかかっているよ?」
「う……。だったら、サワヤカさんの仲間がやったみたいに、爆弾を使って……」
「この国の人間にとって、爆弾の使用は基礎技能のようなものだ。言うまでもなく、城も爆発に耐えられる設計になっている」
デビルは必死に頭を悩ませる。
シトヤカを危険な目に遭わせないため、頑張って考えてみた。
だが、有効な手段は浮かばない。
「くっ……。ボクにはどうにもできないのか……!」
激しく歯を噛みしめ、悔やむデビル。
「もういいですわ。ワタクシたちは、こうやって生きている民族なんですもの。スパイに出る。それは国民としての義務ですから」
そっとデビルの肩に手を乗せ、幼子を諭すように、シトヤカは優しくささやいた。
澄んだ綺麗な瞳に、微かな寂しさを宿しながら……。
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!




