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勇者はあくまで脇役です。  作者: 沙φ亜竜
スパイの国ウメボシ
32/53

第32話 勇者たち、さらに再会を果たす

 ドアを開けて、ひとりの男性が家の中へと入ってくる。

 しかも、こちらもまた見たことのある顔。


「おや? キミたち、生きていたんだね」


 爽やかな声を響かせて入ってきたのは、お菓子の国スイーティアの牢屋で出会ったサワヤカだった。


「お兄様! この方々とお知り合いなんですの?」

「えっ? お兄様!?」


 詳しい話を聞く。


 サワヤカはシトヤカ同様、この国から送られたスパイだった。

 スイーティアで任務に当たっていた際、ドジって捕まったところを仲間に助けられて逃げ出し、今こうして戻ってきた。

 アクマたちと比べて時間がかかったのは、爆発魔法による移動手段なんかを持っていなかったからだ。

 そして、さっきの会話からわかるとおり、サワヤカはシトヤカの兄でもある。


 久しぶりの帰宅。

 シトヤカはすかさず、兄のために食事を用意する。

 メニューはもちろん、白いご飯とウメボシだ。


「ん~~~~! やはり、このすっぱさは最高だな!」

「ふふっ、当たり前ですわ! ワタクシが丹精込めて漬けたウメボシですから!」

「シトヤカさんも、スパイに出てたんじゃ……」

「あら、デビルさんからツッコまれるなんて……。ライジーンへと出かける前に漬けておいたのですわ。帰ってくる頃には、いい感じに漬かっているんですのよ」

「時間をかけすぎな気もするけど……」


 ただ、さっき食べたウメボシが美味しかったのは事実だった。


 ……と、そうだ! ウメボシなんて、どうでもいいんだ!

 国王に文句を言ってやらないと!

 デビルは熱くなっていた原因を改めて思い出す。


 その件について、アクマが口を開く前に、サワヤカから指摘が入った。


「みんな、さっきの話は聞こえていたよ。国王シタタカのもとに行くのはやめておくんだ。返り討ちに遭うだけだから」


 国民全員がスパイであるこの国。反発もないわけではない。

 それを退けるため、国王は強固な城を建てている。鉄壁の守りを誇る城だ。

 国民がほぼいないのだから、兵士だって少ない。それでも侵略されないのは、その城のおかげでもあるのだという。


「でも、こっちにはサタンの爆発魔法があります!」

「当然ながら、城には魔法封じもかかっているよ?」

「う……。だったら、サワヤカさんの仲間がやったみたいに、爆弾を使って……」

「この国の人間にとって、爆弾の使用は基礎技能のようなものだ。言うまでもなく、城も爆発に耐えられる設計になっている」


 デビルは必死に頭を悩ませる。

 シトヤカを危険な目に遭わせないため、頑張って考えてみた。

 だが、有効な手段は浮かばない。


「くっ……。ボクにはどうにもできないのか……!」


 激しく歯を噛みしめ、悔やむデビル。


「もういいですわ。ワタクシたちは、こうやって生きている民族なんですもの。スパイに出る。それは国民としての義務ですから」


 そっとデビルの肩に手を乗せ、幼子を諭すように、シトヤカは優しくささやいた。

 澄んだ綺麗な瞳に、微かな寂しさを宿しながら……。


 ――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!


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