第30話 勇者たち、ちょろまかす
いきなり町の中で争い始めたアクマたち。
声を荒げ、怒鳴り合うだけに留まらず、小競り合いにまで発展する。
周囲は騒然。
そこへ、全員同じ紺色の服を着た何人もの男性が駆け寄ってきた。
「警察だ! ここでなにをやっている!?」
止めに入られたことでアクマたちも我に返ったのか、対話に応じる態勢を整える。
男性たち十人以上に取り囲まれていたから、というのも理由ではあっただろう。
「むっ! お前たち、この国の人間じゃないな?」
「はっはっは! 1人は人間ですらないがな!」
アクマはこの状況でも、まったく動じていない。
「1人? ……この娘も……いや、娘ではないのか……?」
男性の1人が、手を伸ばしてサタンへと近づいていく。
「い……いや~んです! アタシに近づくなです!」
くねくねと体をくねらせ、嫌がるサタン。
しつこいようだが、男だというのに……。
そんなサタンと迫ってくる男性のあいだに、アクマが身を割り込ませる。
「オレの仲間に手を出すな!」
サタンを庇ったのだ。
「勇者様! カッコいいです! やっぱりデビルとは違います!」
「どうして必ずと言っていいほどボクが引き合いに出されるんだろう……」
不満をこぼすデビルは、当然のように無視される。
「ともかく、問題を起こすようであれば、すぐにこの国から出てもらうぞ?」
男性は力強い口調で言い放つ。
とはいえ、無理強いする形ではなかった。
「お騒がせしました。ボクたち、もう帰ります」
デビルは素直に頭を下げる。
アクマが余計な反発をする前に、場を静めてしまおう、という作戦だった。
「まぁ、わかればいいんだ。気をつけて帰りなさい」
男性たちも、周囲に集まっていた野次馬も、あっという間にいなくなっていた。
デビルは名残惜しそうな顔をしている3人を引っ張り、国の外へと続くゲートを目指した。
ジッパングでは、国を出る際に身体検査を受けるのだけど。
なんか面倒そうだとの意見から、サタンの爆発魔法でワープして抜けてしまうことになった。
サタンは、「暗くなってきてますから、早く次の国に行きたいですし!」といった理由も述べていたのだが……。
本当の理由は違っていた。
デビル以外の3人が、ジッパング製品をたくさん隠し持っていたのだ。
アクマとサタンは服の下に数点ほど隠していただけだったのだが。
ライムちゃんに至っては、口から体内へと飲み込み、大量の品々を隠してあった。
半透明の体で透けないように、はんてんらしきものを着た状態で……。
「寒気がするとか言って上着を羽織ってたから、なんかおかしいな~と思ってはいたけど……」
デビルはため息をつく。
アクマたちの所業に気づいた、その直後。
「貴様ら、待て~~~~!」
魔法でワープしてきたというのに、ジッパングの警察官たちは追いかけてきた。
目を血走らせ、凄まじい勢いで。
「くっ……! 爆発魔法は連発できないし、捨てるしかないな!」
さすがのアクマでも、状況は理解できたようだ。
仕方なく、隠し持っていた品々をその場に残し、全速力でダッシュ。
警察官の目的は品物のほうだったため、どうにか逃げ切ることには成功したのだが。
無論、アクマたちは要注意人物として永久入国禁止処分となる。
こうして、ジッパングにも入れなくなったアクマたち一行であった。
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!




