第2話 勇者アクマ、旅立つ……?
勇者アクマとその幼馴染みデビルは今、牢屋の中にいる。
「こんなところに入れられるとは、さすがに思ってなかったよ、ボクは」
「ま、いい体験ができたと思えばいいさ! 人生勉強だ!」
「そういうのは、自分だけでお願いしたいけど……」
牢屋に入ってからずっと、デビルはアクマにぐちぐち文句を言い続けている。
一方、アクマは至って楽天的。
「宿の心配もしなくて済むし、一応メシも出てくるし。これはこれでいいだろ!」
「全然よくないよ……」
「自分の家だと思って、存分にくつろいでくれ!」
「アクマはくつろぎすぎだって……」
ため息しか出てこないデビル。
少しは反省してもらわないと、今後また自分がとばっちりを受けかねない。
「ちゃんと目上の人は敬わないとダメだよ?」
「オレが一番偉いしな~。なんたって、世界を救う勇者様なんだから!」
ダメだこりゃ。
人間、諦めが肝心だ。
デビルは悟った。
「しっかし、あのハゲデブのおっちゃん、すっごく怒ってたよな!」
「だからこうなったんだってば。……まぁ、あの程度で死刑になったりまではしないとは思うけど」
そんな会話をしているところへ、兵士の声が響く。
「おい、お前ら! 出ろ!」
ほら、やっぱり、大丈夫だった。
こうやってすぐ釈放されると思ってたんだよ、ボクは。
心の中でそう考えていたデビルだったのだが。
2人が連れていかれたのは、とある建物の中。
屋根はついていないが、非常に広い、円形の建物だった。
外周部分には客席らしきものが無数に設置されており、多くの人が座って歓声を上げている。
「ボク、なんか嫌な予感がするんだけど……」
「ん? そうか?」
不安げなデビルの横で、アクマはへらへら笑いながら歓声に応える。
2人は兵士の先導で、建物の中心に設けられたステージへと連行されていった。
そのステージには、なにかの金属で出来た板状の物体が2つほど立てられている。
そして、司会進行役と思しき人物が、観客に向かって大声を張り上げる
『それでは、ニセ勇者の公開処刑、これより開始致します!』
ウォォォォォォォォン!
観客席からの歓声が、さっきまでの数倍にも膨れ上がる。
「うわあああああ、やっぱり~~~~~!」
慌てふためくデビルと、
「おっ、なんだなんだ? なにか楽しいことでも始まるのか?」
意味が全然わかっていないアクマ。
2人は兵士たちに押さえつけられ、金属製の板に鎖で完全に固定されしまった。
哀れ、処刑台にはりつけにされてしまった勇者アクマとデビル。
旅立ちというのは、あの世への旅立ちだったのか!?
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!