第19話 デビル、恋に溺れる
目の前に迫る凶暴そうな熊。
逃げたい。でも、ダメだ。
背後にはシトヤカさんがいるんだ。ボクが守らないと!
デビルは考える。
サタンみたいに、魔法を使って戦える能力なんて、ボクにはない。
アクマみたいに、無謀に突っ込んでいってもなぜか勝ててしまうような強運も、ボクにはない。
ならば、どうしたらいいのか。
デビルには答えが出せなかった。
そのとき、手に温もりが感じられる。
「ワタクシが、応援致します!」
ぎゅっと、シトヤカがデビルの手を握っていた。
「シトヤカさん……」
デビルはドキドキしながら、シトヤカを見つめ返す。
「ワタクシ、チア勇者コースを選択する予定ですの!」
勇者を応援して、何倍もの力を発揮させる、というのがチア勇者の役割。
これまでの講義で、そういった話を聞いていた。
シトヤカは今後のコース選択で、そちらの道へと進むつもりだったのだ。
「デビルさんは勇者ではありませんが……精いっぱい応援させてください!」
「……うん! シトヤカさんが応援してくれるなら、ボク、頑張れる気がするよ!」
なんとも乗せられやすいデビルだった。
勇者使いによって使われる側の素質もあるのではなかろうか。
シトヤカはさらに、デビルの気を奮い立たせる言葉を続ける。
「無事に熊を倒してくださいましたら、少々恥ずかしいですけれど、わたくしからキスをプレゼント致します」
「よっしゃ~!」
単純なデビルは一気にパワーアップ。
凶暴な熊をも一瞬のもとに打ち倒す。
凄まじいほどの、乗せられっぷりだった。
「デビルさん、助かりましたわ。それでは……」
ちゅっ。
シトヤカはデビルにキスをした。
デビルの、ほっぺたに。
「あ……なんだ、ほっぺたか」
残念に思うデビル。だが、それが当たり前だろう。
「でも、もっと仲よくなれば……」
図々しいデビルは、妄想を膨らませている。
「これからも、一緒に頑張っていこうね、シトヤカさん!」
「はい!」
デビルは考える。
この学校で必死に勉強し、立派な勇者使いとなったあかつきには、シトヤカに告白しよう!
強い決意を固めるデビルであった。
……って、当初の目的から完全にズレてるぞ!?
デビル、それでいいのか!?
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!




