第10話 スライム魔王、くっついてくる
「こんなネチャネチャした生物、人間と共存なんてできるのか?」
「うぐっ……! やはり、難しいのかの?」
勇者アクマの言葉に、ライムちゃんはがっくりと肩を落とす。
スライムに肩なんてあるのかは知らないが。
「共存計画は、国を挙げた一大プロジェクトなのじゃが……」
「そんなの、スライムの国で勝手に計画されても、人間にとっては迷惑なだけだ!」
容赦なく反論をぶつけるアクマだったのだが。
「いや、しかしじゃな。今回のプロジェクトは、人間たちの住むこの国と共同で決定した事案なのじゃぞ?」
「共同だと?」
「そうじゃ。もともと、この国の王からの要請で、ワラワはこの国まで来たのじゃ」
詳しく話を聞いたところ、スライムの国にこの国の使者が訪れ、今回の話を持ちかけてきたらしい。
ライムちゃんは首都にある城まで赴き、実際に国王との対談も果たした。
そこで、両国の王の同意に基づき、計画は実行に移されることとなった。
スライムの国に住むスライムたちをすべて、この国の各都市に住まわせ、仲よく暮らしていこう。
そんな友好条約が結ばれ、現在に至るのだという。
「なぜこの国の王は、そんな計画を持ちかけたんだろう……」
「共存できるのであれば、無駄な争いはなくなるであろう? 双方にとって有益な話ではないか」
「いや、そうかもしれないけど……。なにか、変な気も……」
デビルは考えていた。
スライム側にはすべてが有益かもしれないが、人間側から見れば町の中がベトベトするという弊害がある。
それを我慢してまで町にスライムを住まわせるような必要など、どこにもないように思えたのだ。
「そうですね! ライムちゃんが首都じゃなくて、少し離れたこの町に住んでいるのも、なんだか不可解です!」
「それはワラワも思っておった。この小屋は国王から与えられたのじゃが、話し合いのたびに首都まで行くのは少々骨が折れるしの」
スライムに骨などないと思うが、それはともかく。
「アクマは、どうするのがいいと思う?」
「そんなの国王に直接聞けばいいだけだろ! デビル、サタン! 首都まで行くぞ!」
「合点です、勇者様!」「うん、そうだね、そうしよう」
早速首都まで向かおうとする一行を、ライムちゃんが引き止める。
「待つのじゃ!」
「なんだ? オレたちは、止めたって行くつもりだぞ?」
「違う違う。ワラワも一緒に行くと言うておるのじゃ!」
スライム魔王も真実が知りたいようだ。
だが、そこはアクマ。即座に突っぱねる。
「来るな! ベタベタするだろうが!」
しかし、ライムちゃんは一歩も引かない。
「ワラワを連れていかねば、行く先々でスライムが抱きつくように仕向けるぞよ!? 魔王の……いや、女王の命とあらば、全スライムが従うであろう!」
「うっ……! それは嫌だな……」
「こんなふうにの!」
「うおっ! ほんとに抱きついてくるんじゃない! キモい!」
「ついでにお主も!」
「きゃあっ! スカートの中に入ってくるなです! 最悪的な気持ちの悪さです!」
「サタンは男のはずなのに、きゃあ、って……」
そんなこんなで、ライムちゃんも首都へと同行することになったのであった。
「ところで、どうしてデビルには抱きつかなかったんだ?」
「あやつは逆に喜びそうじゃったからの」
「デビルって、そういう趣味があったんですね! えんがちょです!」
「い……いやいやいや、そんなのないから!」
デビルに本当にそういう趣味があるのかどうかは謎のままで……。
――――とぅ~び~こんてぃにゅ~どぅっ!




