表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUMPⅡ  作者: 四季 華
9/43

2-4

2-4


 二日後、春一は再び夏輝と共に神社へ向かった。

「こんにちは~。善良な市民の春一です」

「まだ根に持ってたんですか……」

 隣でため息をつく夏輝を無視して春一は境内の中へ歩を進めた。掃除をしていた沙耶がこちらに気付く。

「あ……その、すみません」

「沙耶さん、お気になさらず。ウチの店主は何も気にしていませんので。それで、進展がありましたので、ご報告に」

 夏輝が再び隣にやってきて、進展があったことを報告する。その言葉を聞いた途端、沙耶の顔がパッと明るくなった。

「本当ですか!?ありがとうございます!」

「沙耶さん、妖怪にはね、普通の人間が思い描く妖精のようなタイプの奴もいるんだよ。本当、体長なんて三十センチくらいでさ。そんで、ここにいるのもその手の奴。木に棲むタイプの奴で、聞いたらこの桂は立派だから住みやすいんだと。良く手入れされてるらしーな。で、それだけ」

「それだけ?だって、妖怪のせいで転落事故が起きてて……」

「転落は事故じゃねー。事件だ」

「ど、どういうこと?」

 不安そうな顔をする沙耶に、春一はボリボリと髪を掻いて続きを話した。

「この神社に恨みをもった奴らが、意図的に転落して妖怪の仕業に仕立て上げたんだ。そうやってこの神社の評判を落とそうってな」

「え!?」

「嘘みてーだけど、本当だ」


 春一がやってきたのはとある事務所。地元の有志の事務所だ。ノックをすると、中から入ってもいいと声が聞こえた。

「こんちはー」

 黒いジャージ姿の春一が姿を現す。事務所の主である男は、怪訝そうに春一を見た。本来ならば秘書に追い返してもらうところだが、あいにく今外出中で自分しかいない。

「オッチャンさー、ちょっと悪いことしちゃったんだって?」

「は?」

 いきなり応接用のソファにどっかりと腰かけ、笑いながら話す少年。違和感がありすぎる。

「マンション建設に邪魔な神社に嫌がらせして、潰そうって?全く、罰当たりだね~」

「……どこでそれを知った?」

 男の顔が急に険しくなる。何故目の前の少年はその話を知っているのか。

「情報ってのはどこからか漏れるもんだからね。秘密ってのはないんだよ。覚えといたほうがいいよ」

「何が目的だ?金か?」

 このまま話を続けるのは得策ではないと考えた男は、相手の要求を呑もうとした。しかし、相手から提示された要求は予想と全く違うものだった。

「マンション建設から手を引けとは言わない。でも、神社の買収は諦めるんだね。あそこにある立派な桂の木を知ってるか?あれも切るんだろ?それは個人的に許さない。それとまぁ、こっちにも色々と事情があってね」

「そ、そんなんで引けるか!お前が何者だろうと、私は諦めんぞ!あんなオンボロ神社、さっさと取り壊してやる!こっちのバックを知ってるか?」

「知らねーよ……」

 春一は急に顔から笑顔を消して、ソファから立ち上がった。そのまま男が座っている机の正面に行くと、その机に飛び乗った。机の上で例の如くヤンキー座りをした春一の顔が男の眼前に迫る。

「テメーのバックなんざ知ったこっちゃねー。だがよ、あんまオイタしてっと、俺も黙ってねーぞ……?」

 そして春一は男の胸倉をつかんで、こちらにぐいっと引き寄せた。

「脱税やら暴力団への献金やらをばらされたくなかったら、おとなしくこの件から手を引け。いいな?」

「は……はい」

 春一に気圧された男は、そのまま急いで頷いた。春一はそれを聞き届けると男から手を離し、事務所から去った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ