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「ハル、お知り合いで?」
「ちょっとね。今さっき」
「・・・・・・あのぉ、怒ってます?」
「いいえ。僕はいたって平静ですが。僕があなたに対して憤りを覚えるお心当たりがおありで?」
「いや、その・・・・・・やっぱ怒ってますよねぇ・・・・・・」
「ですから、そのような事実は一切ございません」
笑顔で言ってのける春一は、誰の目から見ても不機嫌だった。夏輝はこの空気の打開策を考えている。目の前の女子高生はただでさえ小さい椅子の上でそれよりも身を小さくしている。
「夏、今度椅子を買おう。お客様が窮屈そうだ」
「・・・・・・そうですね」
「いや、そんな、大丈夫です」
あははと手を振る沙耶に、夏輝が助け舟を出した。
「どうやら顔見知りのようですね。それはさておき、依頼の方なんですが」
「ああ、教えてくれ」
要点をまとめた紙を夏輝から受け取ると、春一はそれに目を通し、一つ頷いた。
「神社に取り憑いた妖怪の退治ですか・・・・・・」
「そうなんです。私、家が神社なんです。けど、境内で悪いことが立て続けに起こって・・・・・・。最初は誰かが怪我をする程度でした。けれど、それが骨折になり、転落事故になり、入院沙汰も・・・・・・。大きな木があって、昔からその木の上に神様が宿るとされていました。だから参拝客の方もなるべく神様に願い事を近づけようと、よく木に登られるんです。幹も枝も太くてしっかりとした木ですから、折れる心配はないんですが、転落がとても多いのです。怪我をされた方に聞くと、妖怪が襲ってきた、と言うのです。それで落ちた、と。そんな噂が広まるので、神社にもすっかり人が寄り付かなくなって・・・・・・。お願いします、どうか妖怪を退治してください!」
彼女の切願の間も春一は資料から目を離さず、思慮深げに見ていた。
「とりあえず、行ってみますか」
春一が言って、車の鍵を夏輝に投げ渡す。
「件の神社を調べてみますので、案内していただけますか?」
春一とは違う夏輝の優しい声で言われると、なんだか安心する。
「あ、はい。お願いします」