表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUMPⅡ  作者: 四季 華
36/43

8-2

8-2


 春一がまず向かったのは窃盗事件があったという数珠市の美術館。バイクで十分程度のところにある美術館は、現在黄色いテープが張り巡らされており、一般人の立ち入りを禁止していた。

「中に入らないで下さーい」

 春一は正面から入るのを諦め、事件があった部屋の裏手に回った。

「ったく、これじゃ俺が犯人扱いされるぜ」

 木に登って裏手の天窓から中をのぞくと、事件現場が見えた。ちょうど壁にぽっかり空いたスペースがあり、絵があったであろうその下には作品の説明書きが淋しく残っていた。

「盗んだのは普通の絵だな。有名な作品じゃない。……お、あれか」

 春一は双眼鏡を目に当てて、その横にクレヨンで書いてある文字と図形を見た。図形の方は夢亜からのメールで見ているが、文字は見ていない。改めてみると、黒いクレヨンで13と書かれていた。1と3の間は狭く、パソコンで言ったら半角で書かれているのかもしれない。

「ふぅん?なかなか手の込んだことするじゃねーかよ。しっかし、気になるな。あの文字と図形、どっかで見たことある気がすんだよなー?」

 その後も頭を捻ってみたが、思い出せることはなく、春一はそのまま木から降りて次なる事件現場へと向かった。


 廃病院も、同じく立ち入り禁止になっていた。春一は野次馬たちとは別の方向に向かって、病院の裏手に回った。そして小さな裏門の鍵が閉まっていることを確かめると、門の前で一人唸った。

「う~ん、これ蹴り壊して事件の手がかりにされても困るし……仕方ねぇ」

 そういうと春一は、そこから数十歩先にある壁の前で立ち止まった。壁の向こうには廃れた病棟がそびえており、廃墟になって尚、重厚感を醸し出している。壁には穴が開いるが、そこには板が打ちつけられていて、ちょっとやそっとじゃ動かないように見えた。

「あのころと変わってなけりゃ……」

 春一は板をそっと手前に引いた。がこっと音がして、錆びた釘が一斉に抜けて、板が外れた。

「懐かしいな」

 彼がまだ中学生の頃、この廃病院で肝試しをするためにこの板の釘をひとつひとつバールで抜いて板を外したことがある。その時、それがばれてはいけないと、来るとき抜いた穴に釘を差しこんで、あたかも一目見ただけでは何も変わりがないように見せかけたのだ。その時の名残が、いまだに残っていた。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったが。

 春一がその穴を潜り抜けて病院の中に入ると、カビ臭いにおいがむっとした。この病院が廃棄されたのは春一がまだ小さい時で、小学校に上がるか上がらないかわからない、そんな時である。この病院の院長が着服をしていたのがばれ、元々大きくもない病院だったし、近くに大病院もあることから、廃院が決定された。だがその後も取り壊す予定などが様々な原因から延期され、結局見捨てられて存在として今も残っている。

 足音を忍ばせて階段を上っていくと、にわかに騒がしい場所があった。現場がある階だ。春一はそこからさらに一階上り、通風孔に身を忍ばせた。

「俺マジで泥棒みてぇ」

 若干笑いながら通風孔の中を進んでいく。音がしないように進んでいくと、現場の部屋のすぐ上まで行くことができた。

 現場は生々しいにおいで満ちていた。遺体は既に運び出され、床や壁には体から噴出したであろう血液が飛散していた。鑑識官が足跡や指紋を調べており、刑事が難しい顔をして立っていた。

 その近くの壁には、飛散した血に混じって美術館にあったのと同じ図形と文字が描かれていた。

 春一は心の中で警察の捜査にエールを送ってから、静かにその場を後にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ