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「成程ねぇ~。学校も大変だねぇ」
まるで他人事のように言うのは、四季文房具店副店主であり、妖万屋店主の四季春一。彼は二階の居住スペースで、おやつであるカップ麺を啜りながら夏輝の話を聞いていた。
短く立った茶髪は明るめで、その左サイドには銀色のメッシュが三本入っている。顔立ちは標準的だが、その目は緩くだらけていて、やる気が感じられない。左耳にはピアスの穴が開いていて、ループ状のピアスが行儀よく並んでいた。外見だけで判断するなら、不良である。
「ハル、一応自分の担当なんですから、もうちょっと責任感を持ってください」
注意する夏輝は彼に対しいつも敬語だ。それは夏輝が春一の弟子のようなものだから、という理由であり、そして夏輝の元々の性格上、敬語が癖なのだ。
「そう言われてもねぇ。はぁーあ、俺明日大学一限からなのに。今日は夜更かし決定だなぁ」
だるそうにソファにふんぞり返る春一に、夏輝はこぼれそうになっているカップ麺を取り上げて注意した。
「まぁ、暇潰しにやるか」
にやっと笑った春一に、夏輝は思った。何か企んでいる。この人には、敵わない。
夜が更けたころ、東小学校の旧校舎の外には春一達の姿があった。
「どこに行ってたんです?」
少しの間席を外していた春一に、夏輝が問いかける。彼の顔はどこか嬉しそうで、不吉なことこの上ない。
「ちょっと、学校の中にね。俺の母校だからさ、懐かしくなっちゃって」
「そうですか」
「さて、犯人を検挙しますか」
春一は楽しそうに笑って、旧校舎の中へと足を踏み出した。