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のちにわかったことは、事故をしたワゴン車の運転手は、乗車前に飲酒をしていたということだ。度の強いウイスキーやスコッチを散々飲んで、車を運転したのだという。だから誰も通らない道を使って帰ったらしい。それが逆に、この惨事を引き起こしてしまった。
勿論春一達にも非はあり、その分相手の罪は軽くなるだろうということだった。春一にもそれ相応の罰が下る。
春一も和仁を亡くしたショックと自分の犯した重大な罪に、ひどく沈痛な思いでいた。和仁の葬式の時、彼の両親は春一のことを許してくれた。それが逆に春一の心を痛ませた。
山の上にある葬儀場から出て、眼下に広がる山々を見た時、春一は己の拳をぐっと握りしめた。
「ハル……」
丈と琉妃香も来ていたが、彼にかける言葉など見つけられず、ただ後ろに控えるだけだった。
「あ~あ」
そんな時、春一達の後ろで男の声がした。少し離れたところで、ワゴン車を運転していた男が黒いネクタイを緩めながらほっと息を吐き出していた。春一達は眼中に入っていないようだ。
「ったく、何だってこんなことに……。無免の中坊さえいなけりゃ俺の飲酒運転がばれなかったのによ。くそっ」
唾を地面に吐き捨てた男は、苦いものでも噛んだような顔をしてそのまま去ろうとした。
「テメェッ!」
その時、春一が男に殴り掛かった。その声に振り向いたところを春一に殴られ、そのまま地面に倒れる。しかし倒れた後も、春一は男に馬乗りになって拳を振り下ろした。鼻が砕けても、歯が折れても、拳は留まるところを知らない。
「ふざけんじゃねぇ!この野郎っ!」
「ハルッ!」
やっと丈が止めに入った頃には、男の顔は見るも無残な姿になっていた。丈に取り押さえられて、荒い息を吐き出した春一は、ようやく拳を開いた。
「結局ハルは無免運転とその暴力沙汰で停学を食らった。勿論それからはバイクも処分したし、事件も起こしてない。だから俺、ハルがもう一度バイクに跨った時は嬉しかったヨ。アイツは和仁の分も乗るって言ってた。まぁ、ナッちゃん助けに行った時のノーヘルは勘弁ナ」
悪戯っぽく笑う丈につられて、夏輝も笑った。
「そんなことがあったんですね」
「ハルも中学ん時は突っ張ってたかんナ。さぁ、ナッちゃん、帰ろうゼ。家でハルを待とウ」
「そうですね」
春一は三人と別れた後、和仁が事故をした現場に来ていた。道路の隅に缶ジュースを置く。
「和仁、俺のドラスタいいだろ?こいつもいい音するんだ」
そして春一はアクセルを捻った。
「じゃあな、また来るよ」
それだけ言い残して、春一はしばしの間友に別れを告げた。
春一が家に帰ると、丈と琉妃香が騒いでいた。
「夏兄ー、ご飯おかわりー!」
「お前、ダイエット中じゃねーのかヨ?」
「夏兄のご飯なら太らないもん」
「どんな理屈だヨ。おーハル、おかえり」
「ただいま」
「夏兄ー」
「今よそってきますね」
春一は小さく笑って、その団欒の中に加わった。