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その夜、春一と和仁は学校の裏山で待ち合わせた。遠くから春一の直管(消音器を無くしたマフラー。爆音)の音が聞こえてくると、和仁もそれに呼応してアクセルを開いた。
「よう、イカスなそのFX」
「お前のバブⅡもな」
「ここってケッコーワインディングきついよな?」
「ああ。こいつらで走るには持って来いだぜ」
「んじゃ、行くか」
「おう」
そして春一達は走り出した。先を春一が走り、その後を和仁が追う。二人は車体を倒しながら様々なテクニックを使って走った。
「はーっ!いやー、春一君と走ると楽しいな」
山の頂上で二人は一旦エンジンを切った。辺りを包む静寂が二人の揺れ続けた鼓膜を休める。
「俺も、二人で走るの初めてだから楽しいよ。幼馴染で丈ってやつがいるんだけどさ、そいつは免許取るまで乗らねーって言ってっから」
「そっかー。オレら、悪い子だな」
「ああ。和仁、下り行こうぜ」
「よし来た」
二人はそのまま下りも走り、集合したところで別れた。
そんな日々が一ヶ月ほど続き、春一と和仁はますます仲良くなっていた。和仁は持ち前の人懐っこさで丈達ともすぐに仲良くなり、バイク話に花を咲かせた。
「なぁ、ハル、今日も行こうぜ」
「おう」
「ハル、カズ、事故にだけは気ぃ付けろヨ」
「わかってるって。ジョーは心配性だな。オレらなら大丈夫。事故らねーって」
そしてその夜、春一達は例の場所で待ち合わせた。
「よし、んじゃ行くぜ。FXの調子どーよ?」
「ゴキゲンに決まってんだろ。よし、行くぜ!」
この日は勝負をしようということになって、二人は一緒にスタートした。抜きつつ抜かれつつ、二人は爆音を鳴らして猛スピードで走っていた。
そして、カーブに差し掛かった時だった。和仁が後ろからアウトサイドで抜こうと膨れた時、春一の目の前が急に明るくなった。
「!!」
ゴシャッという嫌な音が後ろでして、春一は急いでバイクを停めた。振り返ると、大きなワゴン車がガードレールにぶつかり止まっていた。その横には、前輪が外れ、クシャグシャの鉄屑となった和仁のホークⅡ。
「和仁っ!」
ホークⅡから少し離れたところには、血まみれの和仁が倒れていた。ヘルメットも被っていなかったため、頭からの出血が多量にあった。頭の周辺には血だまりができていて、手足も変な方向に曲がっている。
「和仁!」
春一が呼びかけるが、返事はない。
「ゲホッ!が……」
最後に一回だけ血を吐いて、和仁はそのまま動かなくなった。念のために春一が胸に耳を当てても、呼応するものはなかった。手首の脈を取っても同じことだ。
春一の声にならない叫びが、山に木霊した。