表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUMPⅡ  作者: 四季 華
16/43

4-2

4-2


 その夜、春一と和仁は学校の裏山で待ち合わせた。遠くから春一の直管(消音器を無くしたマフラー。爆音)の音が聞こえてくると、和仁もそれに呼応してアクセルを開いた。

「よう、イカスなそのFX」

「お前のバブⅡもな」

「ここってケッコーワインディングきついよな?」

「ああ。こいつらで走るには持って来いだぜ」

「んじゃ、行くか」

「おう」

 そして春一達は走り出した。先を春一が走り、その後を和仁が追う。二人は車体を倒しながら様々なテクニックを使って走った。

「はーっ!いやー、春一君と走ると楽しいな」

 山の頂上で二人は一旦エンジンを切った。辺りを包む静寂が二人の揺れ続けた鼓膜を休める。

「俺も、二人で走るの初めてだから楽しいよ。幼馴染で丈ってやつがいるんだけどさ、そいつは免許取るまで乗らねーって言ってっから」

「そっかー。オレら、悪い子だな」

「ああ。和仁、下り行こうぜ」

「よし来た」

 二人はそのまま下りも走り、集合したところで別れた。


 そんな日々が一ヶ月ほど続き、春一と和仁はますます仲良くなっていた。和仁は持ち前の人懐っこさで丈達ともすぐに仲良くなり、バイク話に花を咲かせた。

「なぁ、ハル、今日も行こうぜ」

「おう」

「ハル、カズ、事故にだけは気ぃ付けろヨ」

「わかってるって。ジョーは心配性だな。オレらなら大丈夫。事故らねーって」

 そしてその夜、春一達は例の場所で待ち合わせた。

「よし、んじゃ行くぜ。FXの調子どーよ?」

「ゴキゲンに決まってんだろ。よし、行くぜ!」

 この日は勝負をしようということになって、二人は一緒にスタートした。抜きつつ抜かれつつ、二人は爆音を鳴らして猛スピードで走っていた。

 そして、カーブに差し掛かった時だった。和仁が後ろからアウトサイドで抜こうと膨れた時、春一の目の前が急に明るくなった。

「!!」

 ゴシャッという嫌な音が後ろでして、春一は急いでバイクを停めた。振り返ると、大きなワゴン車がガードレールにぶつかり止まっていた。その横には、前輪が外れ、クシャグシャの鉄屑となった和仁のホークⅡ。

「和仁っ!」

 ホークⅡから少し離れたところには、血まみれの和仁が倒れていた。ヘルメットも被っていなかったため、頭からの出血が多量にあった。頭の周辺には血だまりができていて、手足も変な方向に曲がっている。

「和仁!」

 春一が呼びかけるが、返事はない。

「ゲホッ!が……」

 最後に一回だけ血を吐いて、和仁はそのまま動かなくなった。念のために春一が胸に耳を当てても、呼応するものはなかった。手首の脈を取っても同じことだ。

 春一の声にならない叫びが、山に木霊した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ