4-1
4-1
春一が中学校二年生に上がった時、一人の転校生がやってきた。
「可惜和仁です、よろしくお願いします」
初日に彼が挨拶をした時、春一はバイク雑誌を読みふけっていてそんなもの聞いていなかった。
中学校に入った時、クラス分けの紙を見て春一は喜んだ。丈も琉妃香も同じクラスだったからだ。三人で一緒のクラスになるのは小学校四年生以来だった。三人で一年三組を名乗り、彼らに目を付けた上級生は片っ端から返り討ちに遭った。
そんな楽しい一年が終わり、新しいクラス分けが発表された。今度は三人バラバラで、春一は四組になった。仲の良い人間はいず、不良として位置づけられていた春一は早速クラスの中でも浮いた存在になった。誰も春一の周りに近寄らず、春一も却ってそれを良しとしていた。こういう時は一人の方が楽だ。
「えと、四季、くん?」
「あ?」
突然かけられた声に、春一は顔を上げた。見慣れない顔がある。真っ黒い髪の毛は校則に則った短髪で、人のよさそうな顔はいかにも真面目な優等生という感じだった。対する春一は既に髪を染めて、ピアスを開けている。学ランのボタンを二つも開けて、腰にはウォレットチェーンを付けている。
「お前、誰?」
「あの、今挨拶したばっかりなんだけど。転校してきたんだ」
「ああ、転校生ね」
和仁は春一の前の席に鞄を降ろした。彼が与えられた席は春一の前らしい。
「和仁っていうんだ、よろしく」
「ああ」
仲良くするつもりもない春一は、敢えて「よろしく」と言わず、目をバイク雑誌に戻した。
休み時間、他のクラスメートたちが春一を避けて談笑に花を咲かせている時、春一はやはりバイク雑誌に目を通していた。すると、和仁が後ろを向いて春一に話しかけた。
「それ、『クラブ・ハーレー』だよね。バイク、好きなの?」
「うん、まぁ」
春一は雑誌から目を離さず、形ばかりの答えを返した。
「そうなんだ!オレもバイク好きなんだよ!」
その言葉に春一の垂れ下がった目が少しだけ上を向く。
「ふぅん?何が好きなんだよ?」
「やっぱアメリカンだよな。ゆくゆくはハーレー乗りたいよ」
「わかってんじゃん」
同じ趣味に少しだけ気を良くした春一は、口角を上げて話に応じた。
「ここだけの話」
和仁が声を潜めて周りを見回す。そして誰も注目していないことを確認すると、更に声を潜めて言った。
「オレ、バイク乗ってるんだ」
「マジかよ!?」
その言葉に春一がすかさず反応する。
「何乗ってんだよ?」
「バブⅡ」
「シブいな」
バブⅡとはホンダのホークⅡのことで、暴走族にはバブⅡの愛称で親しまれているネイキッドバイクだ。そして春一も周りを見回して声を潜める。
「実はな、俺も乗ってんだ」
「マジで!?え、単車何よ?」
「FXの直管」
「やべぇ!な、な、今日この後走ろうぜ!裏山でさ。あそこって今もう使ってない道なんだろ?」
「おう、行こうぜ」
「改めてよろしく、シュンイチくん!」
「……はるいち」