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TAKE7 生徒は友達、敵じゃない

 どうも! 風車です。

 いや~、センター試験ですね……。試験の方は是非、頑張って欲しいものです。私も同日模試というものを受けるのですよ。凄く心配です……。

 さぁ、そんな鬱な気分を吹っ飛ばすためには、好きなことや好きなものに夢中になることです!

 いや、私が振ったんですけどね……。


 さて、前回は、

 見た目小学生の美鳥ちゃんが、実は先生だった!?

 という感じで終わりました。しかし、カコバナはまだ終わりませんよ~。

 それでは、続きをどうぞ!


――『ちょっと休憩』――


「はぁ。確かにそれは驚きますね」


 レンが半笑いでそう言った。


「まぁ、そうだな。あれだけでも十分驚いた」


「あれだけでも、って? まだ何かあるんですか?」


 レンは首を傾げて問いかけてきた。


「まだ、歳言ってないだろ?」


「あぁ、そうでした」


「ちなみに聞くけど」


「はい? 何ですか?」


「レンは、ちぃちゃんはいくつだと思う?」


 僕の問いに、レンはしばらく考え込みながらこう答えた。


「25歳くらいが妥当ではないでしょうか? いくらなんでも、30代であの容姿は無いと思いますし……」


「ふふっ」


 僕はレンが予想通りの答えをしてきたので、思わず笑ってしまった。


「え? あの、私。何か変なこと言いました?」


 レンは、僕が突然笑ってしまったからか、心配そうにそう言ってきた。


「いや、そんなことないよ。ただ、あまりにも考え方が僕と似てたから」


「それって、どういう意味ですか?」


「いや、そのまんまだよ。それじゃあ、続き行ってみよう!」


「う~ん。気になります」


――『カコバナ!?』――


『え~~~~っっっっ!?』


 先生? 美鳥ちゃんが?


「なんだ。小山先生は青雲学園のある意味での名物教師だから、皆は知っていると思ったのだが」


 赤堀先輩が意外そうな顔で放送室内を見渡す。


 すると、隣に座っていた隼が何かを思い出したようで、赤堀先輩にこう言った。


「あっ。それってもしかして、『ちぃちゃん』のことですか?」


 ……ちぃちゃん?


 そういえば聞いたことがある。


 青雲学園には小学生のような姿の先生がいて、男子生徒のある特定層と可愛いものが大好きな女子生徒の間では絶大な人気を誇っている。


 その先生の苗字の頭文字である『小』と、その先生がちっちゃいこと、そして見た目が小学生だということ。


 この三つを踏まえて、生徒はその先生をこう呼ぶ、


『ちぃちゃん』


 と。


 つまり、僕たちの前にいるのは美鳥ちゃんだけど、実はちぃちゃんで、小学生でも誰かの親戚でもなく、先生であって、僕たちよりも歳上な訳で、さっきまでの態度は非常に失礼だったということだ……。


「さっきは、すみませんでしたっ!」


 僕は気がついたら謝っていた。


「いやいやいや、いきなりどうしたのさ? ……翔くん?」


 風花先輩が、突然の僕の謝罪にぎょっとしながらもなんとか突っ込んでくれた。


「あれ? 翔ちゃん? 何を謝っているのですか?」


 ちぃちゃんは不思議そうに僕を見て言った。


「だって……僕は先生のことを」


 僕がバツの悪そうに答えようとしたら、ちぃちゃんは笑いながらこう言った。


「あぁ。あんなの全然気にしてませんよ。むしろ、あんな感じでどんどん気軽に接して欲しいくらいです」


「……? いいんですか?」


 僕は、少し躊躇いながらも聞いてみた。


 しかし、ちぃちゃんの答えは、僕の躊躇いなんて馬鹿馬鹿しくなるほど簡単で、気持ちのいいほどスッキリとしていた。


「えぇ。なんたって、私の教育モットーは『生徒は友達』ですから! 生徒と先生のより良い関係を築くには絆が一番手っ取り早いんですよ」


 ちぃちゃんがそう言うと、天井先輩が頷きながらこう言った。


「うん。確かに絆っていうのは、人と人の関わりの中で最も強いものだよね。僕は、小山先生の意見には大賛成だよ」


 天井先輩は放送室を見渡して、更にこう続けた。


「僕はね、勝手かもしれないけどこの放送委員のみんなとは、強い絆で結ばれていると思うんだ。

 この放送室は僕の居場所。みんなと関わることのできる大切な場所なんだ。

 こんなにも最高の仲間と、ずっと一緒にいられればいいのにね……」


 そう、ずっと……。と最後に呟いた声はとても小さかった。小さすぎて、静かだった放送室だからなんとか聞こえたくらいだった。


 天井先輩のずっと一緒にという発言が僕の中にひっかかったまま、リンが口を開いた。


「そうだな。確かにあたし達はずっと一緒にはいられない」


 俯きながらそう言っていたリンは、「でも」と続けた。


「まだ半年以上もこのメンバーでいられる。なら、いいんじゃないか?」


 リンは天井先輩の目を真っ直ぐに見つめた。


「あたし達が離ればなれになるのは、今日明日の話ではない。だったら、今から楽しい思い出を作るだけだ」


 リンは優しく天井先輩に微笑みかけた。


「リ――」


「すばらしいですよ!」


 天井先輩がなにか言おうとしていたが、突然のちぃちゃんの声で遮られてしまった。


「私、安心しました。もし、君達と仲良くできなかったらどうしようかと思ってましたですよ」


 ニコニコと笑いながら、ちぃちゃんがそう言った。


「だから言ったじゃないですか。そんなこと考えるだけ無駄だって」


 赤堀先輩もそんなことを言っていた。


 もしかしたら、僕以外は天井先輩が何かを言おうとしていたのに気づいてなかったのかもしれない。


 気になったので、隣の隼の方を見てみたが、何も不思議に思っていないようだ。


 風花先輩もちぃちゃんの方を向いていて、気づいていたのかは分からなかった。


 当の天井先輩は気にしていないかのようだった。ただ、僕が天井先輩のことを見ていたら、チラッとこちらを向いて、目があったと思ったらニコッと笑った。


 それだけはすごく覚えている。


 そしたら、ちぃちゃんがこんな発言をした。


「いや~。私、この放送委員会の顧問の先生として、なんとかやっていけそうですよ」


「えっ?」


 顧問? あれ? そういえば、放送委員会に顧問なんていなかったような……。


「あぁ、そういえばお前たちには言っていなかったな」


 赤堀先輩が一歩脇に退いて、ちぃちゃんを真ん中に立たせた。


「我々、放送委員会の前顧問、飯浜(いいはま)先生の代わりに、本日、6月2日より新しく顧問になった小山先生だ」


 ちぃちゃんは、赤堀先輩に紹介されると、コホンと咳払いをして自己紹介を始めた。


「どうも、はじめましてです。小山美鳥です。ちぃちゃんと呼んでくれると嬉しいです。

 さっき言ったように、私の教育モットーは『生徒は友達』ですから、仲良くしてくださいです!」


 ちぃちゃんはペコリと一礼の後、放送室をぐるりと見渡してこう言った。


「それではよろしくお願いします。え~と、左から順に翔ちゃん、隼ちゃん、風花ちゃん、成輝ちゃん、リンちゃん、でいいですか?」


「はい、大丈夫です」


 赤堀先輩が僕たちを代表して答える。


「よかったですよ。昨日、一生懸命覚えた甲斐がありました」


 ちぃちゃんがホッとしたようにそう言った。


「それでは、質問タイムにうつるぞ。ちぃちゃんに何か聞きたいことがあったら遠慮なく質問するように」


 いや、そこは先輩が言うことなのか?


「はいはい!」


「よし、泉川」


「ちぃちゃんっていくつですか?」


 いやいやいや!? 風花先輩? いきなりその質問って!?


 いや、確かに、遠慮なく質問するように、って言ってたけどさ。……赤堀先輩が。


「あ~、それは教えられないですね。でも、ヒントならあげるですよ」


 あ、ヒントくれるんだ……。


「君達のご両親が40代なら、ご両親は私の後輩です」


 40代なら後輩……。


 …………………………?


「あれ?」


『えぇ~~~~~~~~~~っっっっっ!?』


 本日二度目の絶叫が、放送室内に響き渡った。

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