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LAST TAKE 心から、ありがとう

 えー、なんか予想できているとは思いますが、最終回です。

 長い間放置していましたが、納得のいく終わりにできなかったので、何回か違う結末を書いてみてました。けっして、忘れていた訳ではありません(※ここ重要)。

 そのくせ、文章がブレまくりのグチャグチャなのはご勘弁を。

 それでは、本編行ってみましょう!

「二人とも、遅いよ~っ!」


 僕と天井先輩の間に流れていた沈黙を破り、風花先輩が屋上に飛び出してきた。


「ふ、風花先輩!? なんで?」


「ふっふっふ。ヒロインは遅れてやってくるのだよ」


「なんですか、それ」


 風花先輩は、僕の言葉を華麗にスルーもとい無視して言った。


「ほら、二人とも。時間がないから早くいくよ」


 そして、僕と天井先輩の手を引っ張った。


 ――『で!?』――


 階段を降り、廊下を走り、放送室の前に到着する。


「それじゃ、成輝くん。クラブ紹介よろしく」


「先輩、頑張ってください」


 風花先輩と僕がそれぞれ言うと、


「もちろん」


 天井先輩は微笑んだ。


「それから……、ありがとう。二人とも。僕、放送委員になれてよかった」


 それから、天井先輩は放送室のドアノブに手をかける。


「あ、そうだ」


 天井先輩は思い出したように上半身を捻ってこちらを向いた。


「天津くん、後は頼んだよ」


 そして、ニコッと笑って言った。


「……はい!」


「それじゃ」


 バタンと放送室の扉が閉まる。


 放送室の中からは、天井先輩にリンと隼が話しかけているのが少し聞こえてきた。


 後は頼んだよ。


 天井先輩の言葉が耳に繰り返される。


 先輩がいた、この放送委員……。絶対に無駄にはしない。


 天井成輝という一人の生徒がいたことを、僕たちは忘れないだろう。


「いや~、これで一件落着だね。翔くん」


「まだですよ」


「へ?」


 風花先輩が拍子抜けした声で聞き返した。


「まだ、今日が残っています。最後の最後まで、僕たちは天井先輩と楽しくやるんです」


 僕は言った。たぶん、笑ってる。


「えへへ、そうだね」


 風花先輩も笑って返す。


「それじゃあ、行きますか」


「はい」


 風花先輩と僕は、体育館へと走り出した。


 ――『で!?』――


「えー。それでは僭越ながら、私、泉川風花が乾杯の音頭をとらせていただきます!」


 スゥー。と、風花先輩が息を深く吸い込む。


「成輝くんを送る会。向こうへ行っても頑張ってね! かんぱーい!!」


『かんぱーい!!』


「みんな、ありがとう」


 天井先輩は言った。


「いや、今日の天井先輩はかっこよかったですよ。特にあのクラブ紹介の締め」


「やめてくれよ、レンくん。あの言葉は僕の黒歴史級の発言なんだから」


 天井先輩が照れながらレンに言った。


 レンは、クラブ紹介が終わってから直ぐに放送室にやって来たそうだ。


 本人曰く、とりあえず、放送委員会には元から入るつもりだったらしい。


「いえいえ、かっこよかったですよ。ああいう、アツいノリは大好きなんです。あんなクラブ紹介されたら、私は絶対に放送委員に入っちゃいますもん」


 レンが鼻息荒く天井先輩に言う。


「あはは、ありがとう。僕も、あの発言に後悔はないよ。これも皆のお陰だよ」


「そんなことはない。私たちは、先輩と一緒にいただけだ」


「そうっすよ、あれは天井先輩の力ですって」


 リンと隼が口々に天井先輩を褒める。


「うん、そうだね。最後くらい、謙遜はやめておこうかな……」


 天井先輩が微笑みながら言った。


 ……最後。


 天井先輩の何気なく言った言葉で、僕たちは今日が先輩に会える最後の時間なのだと再認識した。


 できれば、こんな時間がもっと長く、永く、続いてくれればいいと思った。


 それでも、時間は流れていく。


 それでも、終わりが近づいてくる。


 ――そして、辺りはすっかり暗くなり……


「それでは、名残惜しいですが、本日の成輝くんを送る会は終了とさせていただきます」


 パチパチ、パチパチと放送室の中で拍手の音が聞こえる。


 僕の心の中では、未だにこの状況を現実として受け止められていない。――だが、


「翔ちゃん、翔ちゃん」


 ちぃちゃんが、僕のブレザーの袖を引っ張る。


「昨日、電話で言われたとおりにポラロイドカメラを持ってきましたよ」


 


 昨夜のこと。


 僕は、ある人物に電話をかけた。


 そして、呼び出しの電子音がなってから、数秒後。


『はーい、もしもし。どうしたんですか、翔ちゃん?』


「あ、先生。実は、お願いしたいことがあって……」




「しかし、どうしてポラロイドカメラなのですか? 普通のカメラでも、後で成輝ちゃんのお宅に郵送するという手もありますよ」


「天井先輩に言われたんです。『いつか、君たちと過ごした日々を忘れてしまうのが怖い』って。それで、一番、そのときの気持ちが伝わるようなシチュエーションで渡したいなと思って」


「なるほど。だから、その場で形になるポラロイドカメラを使うのですか」


「はい、先生がカメラを持っていて助かりました」


「生徒のためなら。というやつです」


 ちぃちゃんが天井先輩を囲む放送委員の皆を見て呟く。


 その後、僕の方に振り向いて、


「それじゃあ、そろそろ」


「はい。わかってます」


 僕も、天井先輩たちを見ながら言った。


 そう。わかってる。


 これで最後だから……。


「みんなっ!」


 僕の声に、皆が反応する。


「最後に、記念撮影しましょう」


 今日、このときのために。このときを皆の心に留めておけるように。


 天井先輩が、僕たちと一緒にいた時間を忘れないように。


「うん、そうだね。やろう」


 天井先輩が言った。


「それじゃあ、皆さん。放送機具をバックにしてください。ほら、はやくはやく」


 ちぃちゃんに促されるまま、僕たちは一列に並ぶ。


「はーい。笑って、笑って」


 ちぃちゃんから見て左から、隼、リン、レン、天井先輩、僕、そして風花先輩という順番に並び、カメラを見る。


 最後、これで最後。


 現実が確かな質量を持って押し寄せてくる。


 胸の奥に、何かが詰まるような感覚がした。


 まだ、ダメだ。


 泣いちゃいけない。


 先輩の思い出に、涙は要らない。


 せめて、写真を撮る間だけは……。


「グスッ」


 そのとき、鼻をすする音がした。


 最初は、自分から発された音かと思い、急いで目頭の辺りを押さえてみたが、そこに液体の存在は確認できなかった。


 じゃあ、いったい誰が?


 その答えを知るのに、時間はいらなかった。


「成輝ちゃん……泣いてるのですか?」


 ちぃちゃんの言葉に、僕たちは天井先輩の方を向いた。


「……え? あれ? 本当だ。嫌だな……僕は先輩なんだからしっかりしなくちゃいけないのに」


 天井先輩が自嘲気味に言った。


「いいんじゃないですか?」


 そんな、天井先輩に僕は努めて楽観的に聞こえるように言った。


 そうだ、いいじゃないか。


「別に、泣いたって構いません。僕だって、――皆だって、先輩が居なくなるのが悲しいんですから」


 別れが悲しいのは、寂しいのは、辛いのは、当たり前のことなんだ。


 僕は、天井先輩の瞳にうっすらと涙がうかんでいるのに気がついた。


「天津君……」


「先輩。写真、撮りましょう」


 気がつけば、僕の頬には涙が伝っていた。


「うん、そうだね」


 そう言って笑った天井先輩の頬にも一筋の涙が流れていた。



「それじゃあ、撮りますよ! ハイ、チーズ」


 カシャッ。と、乾いたシャッター音を放送室に響かせて、カメラは僕たちの最後の時間を切り取った。


 ――『…………』――


「最後に、皆さんに言いたいことがあります」


 放送委員のクラブ紹介が終わる寸前のことだった。


 天井先輩がクラブ紹介を聞いている新一年生に向けてこう言った。


「放送という仕事は、ミスが許されない堅苦しいイメージがあると思います。ですが、そんなことはありません。確かに、失敗しないことは大事です。しかし、それ以上に、その失敗をどれだけ自分の成長に活かせるかが大切なんです。社会に出たら、僕たちは軽いミスを犯しただけで職を失うことを恐れなくてはならないような肩身の狭い立場に立たなくてはなりません。つまりは、失敗できるのは今しかないということです。そして、この放送委員では、自分の失敗を成長に変える手伝いをしてくれる先輩達がいます。先輩達皆が、君たちに手を差し伸べてくれるでしょう。どんな失敗も優しく包み込んでくれる温かさが、この放送委員にはあります。だから、僕は胸を張って、心の底から、



 この放送委員に入れてよかった。僕は放送委員が大好きです。



 そう言えます。そう思えます。

 どの部活や委員会に入るかは、君達の自由です。ですが、後悔はしないでください。未来に希望を持ってください。皆さんが、心から楽しいと思える道を歩めることを願っています……」


 ――『fin』――

 私――風車からも、読者の皆様に心からのありがとうを贈ります。

 今まで、読んでいただきありがとうございました。今後も執筆活動をがんばっていきたいと思っております。


 それでは、また会う日まで……。

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