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TAKE14 これが、僕の出した答えだ!!

 どうも、超お久しぶりです。

 風車です。

 更新を一ヶ月近く放置してしまいすみませんでした。

 それでは本編です、どうぞ。

「リン……」


 隣で隼が呟く声が聞こえる。


 しかし、隼は心配そうな顔色以外の表情は見せない。おそらく無意識のうちに呟いてしまったのだろう。


「アイツ、どこ行ったんだ……」


 廊下を耳に空気を切る音が聞こえるくらいのスピードで疾走する。


 僕たちは今、放送室を出て左手――まだ新しい二号館の三階を走っている。


 入学式の学校には人影は見えない。というよりかは、一年生の教室に人間が入っているからなのだが。それによって、普通に走っていても注意されることはない。


「おい、翔。二手に別れるぞ」


「うん、分かった」


 隼の提案に僕は頷いた。


「お前は上行け」


 隼は階段を指差して言った。


「了解」


 僕は言われたままに階段を上る。そして、隼はそのまま前へと走っていった。


 ――『で?』――


「おう、天津じゃないか」


 リンがいました。


「あ、リン。どこ行ってたんだよ。皆、心配してたんだぞ。特に隼とか」


「そ、そうか……。それは、すまなかった」


 えー、かなりの急展開に驚いているかもしれない、事実、僕も驚いている。


 先程、僕は階段を上ってすぐに屋上へと向かおうとするリンに出会ったのだ。


 リン曰く、既に四階は探した。だそうだ。


 すなわち、残りは屋上だけということになる。


 そうと決まれば、屋上へダッシュ!


 ということで、僕たちは今、屋上に出ることができる扉の前にいる。


 この先に天井先輩が……。


 直感でそう思った。


 ギリリとドアを軋ませながら開く。


「天井先輩ッ!」


 僕は声を張り上げて屋上にいた人物に向かって走った。


「……あ」


 天井先輩は僕たちを見て言葉を漏らす。


 僕が天井先輩の前で立ち止まると、遅れてリンも立ち止まった。

「ごめん、もしかして、僕のことを捜してたかな?」


「そうですよ」


「あぁ、そうか、なんだか迷惑かけたね」


 天井先輩は頭を掻きながら笑って言った。


「天井先輩」


 僕の隣でリンが言った。


「ん? なんだい?」


「先輩は色々と独りで抱え込みすぎているのではないか?」


 え!? リン、それはいきなりすぎじゃ……。


 僕が驚いていると、


「うーん、そうかな?」


 天井先輩は不思議そうにそう言った。


「ああ、そうだ。先輩は色々なものを独りで抱えすぎている。今だってそうだ。何でもかんでも自分を悪者だと決めつけて先に謝る」


「それは、僕が皆たちに迷惑をかけたと思ったから……」


「それがいけないのだ!」


 リンは天井先輩を指差して言った。


「無意識のうちかもしれないが、天井先輩は自分の優先順位を低く見すぎている」


「そんなこと言われても……」


「とにかくだ。人間は生きている間に沢山の人間に迷惑をかけて生きるのだ。一つ一つに毎回謝っていたらきりがない」


「でも……」


「でもも何もない。天井先輩は、……もっと、まわりに頼っていいんだぞ」


 リンはニッコリと微笑み、天井先輩の頭を撫でた。


 天井先輩は頬を薄赤く染め、どうしたらいいか分からないような顔をしていた。


 さて、見ていると微笑ましい光景だが、僕は一つ言っておきたいことがある。


 僕の出番は?


 まぁ、居てもあまり目立たない人とかいるもんな。今回はたまたま僕がそういう役回りになってしまっただけだ。


 うん、そういうことにしておこう。


 ――ザザァ


 僕が、自己完結というお粗末な結論に達した丁度そのとき。インカムに通信が入った。


『おい、翔』


「あ、隼。どうしたの?」


『どうしたのって、――ま、いいか。それで、リンと天井先輩はどうなった?』


『あ、うーん。そうだね』


 そこで言葉を切り、僕は天井先輩たちの方を見る。


 そこには、まだ、微笑ましい光景が広がっていた。


「いいかんじ?」


『いいかんじ――って、なんだよ!? 俺も今すぐそっち行くからな! 翔、そこどこだ』


「第二校舎の屋上」


 ――ブツッ


 隼との通信が切れた。


 隼も面白いな。あの直球な感じは、リンと天井先輩とは逆ベクトルで微笑ましい。


 バタンっ!


 通信を切ってから1分も経たないうちに隼が屋上に侵入してきた。


「リン! 天井先輩! ――って、うわぁーっ!? なんかいいかんじな光景が広がっている」


 隼の突入に天井先輩とリンは驚いて目を丸くしていた。


「い、岩城!? こ、これは、なんと言うか……違うんだ」


 ――ザザァ


 僕がリンと隼の会話を見ていたら、誰かから通信が入った。


『ヤッホー、翔くん?』


 と言っても、消去法で誰かは分かっているが。


「風花先輩ですか?」


『フッフッフ、よくぞ見破ったな』


「で、なんですか?」


『いや~、実にいい空気のところ悪いんだけど』


「よくないですよ。むしろ、ドロドロです」


 僕は先程の三角関係状態を思い出しながら言った。


『そうかな? 私にはすごくいい雰囲気にしか見えないけど』


 風花先輩の言葉を不思議に思った僕は、隼たちの方を見てみる。


 すると、そこでは天井先輩の頭をメチャクチャに撫でるリンと隼がいた。


 どうやら、いつの間にか三角関係が解消していたらしい。


 一方、天井先輩は髪はグチャグチャ、眼鏡はずり落ち、なんか散々な様子だった。でも、凄くいい笑顔を浮かべている。


 見てるコッチも自然に笑みが溢れてしまう。


『ね?』


「……そうですね」


『でね、翔くん』


「なんですか?」


『もう時間なのよ』


「…………あ」


 僕は急いで腕時計で時間を確認する。


 時刻は後2、3分で一時半というところだった。


「うわ、ヤバッ! すいません。すぐ行きます」


 僕は焦りながら、いいかんじの三人に声をかけた。

「みんな、もう時間がない」


 僕の言葉に一瞬フリーズした三人は直後、各々の時計を見て時間を確認する。


『あ~っ!?』


「早く行くよ」


 僕は屋上の扉を押さえながら言う。


「おっ、サンキュ」


「すまない」


 隼とリンが校舎内へと入った。

「あ、天井先輩」


 僕は、続いて校舎内へ入ろうとしていた天井を引き留めた。


「え? どうかしたの?」


 天井先輩が不思議そうに僕を見た。


 僕はそんな天井先輩の頭を――


「えいっ」


 メチャクチャに撫でた。


「うわ、何?」


 意表をつかれて仰天しながら天井先輩は言った。


「え、いや。僕もやるべきかなと」


 僕は軽く笑いながら応えた。


「……それに、先輩と一番長い付き合いなのは僕なんですから」


「え……?」


 天井先輩はポカンと口を開けたまま唖然とした表情を浮かべている。


「僕は先輩が転校すること、もっと早く聞きたかったです。そうすれば、もっと一日一日を大切に過ごせたのに」


 僕は昨日のマックでの風花先輩との会話を思い出しながら言った。


「天津くん……」


 そして、


「でも、今はこう思うんです


 これが僕の出した答え。


「先輩と一緒に過ごした時間こそが大切なものだっだ。大切に過ごそうと思っていようがいまいが、先輩のいた時間は無条件で僕の宝物なんだって」


 そこで一旦言葉を切り、僕は言った。


「だから、先輩のこと……忘れるなんてできません」


 沈黙。


 そして、この沈黙を先に破ったのは、天井先輩でも僕でもなく――


「二人とも、遅いよ~っ!」


 勢いよく飛び出してきた、風花先輩だった。

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