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TAKE12 これって放送事故ですよね?

 ほんっとにごめんなさい。更新が一日遅れました。

 別の話を書いてたら、いつの間にか土曜日になってしまいまして……。

 えーと、それでは本編です。

 前回は入学式がついに始まった。というところで終わりました。

 それでは、どうぞ

 入学式が、風花先輩の司会によりスムーズに進行していく中、僕は違うことを考えていた。


 内容はもちろん、天井先輩の昨日の話についてだ。


『僕は、怖いんだ……』


『一人になるのが怖い……。君たちに忘れられるのが怖い……。自分が自分で居られなくなるのが怖い……』


『でもね、僕が本当に怖いのは、新しい環境に慣れた僕が、君たちのことを忘れてしまうかもしれないことなんだ……。それが……一番怖い……』


 皆と離れることが怖かった天井先輩。独りになってしまう自分を怖れ、僕らに忘れられてしまう自分を怖れ、そして、僕らを忘れてしまう自分を怖れた。


 難しいことなんてどうでもいい。本当に大事なのは天井先輩の素直な気持ちだ。


『だから、ごめん。君たちに迷惑しかかけることのできない先輩のことなんか、忘れてほしい。僕の存在なんか無かったことにしてほしい』


 本心でそんなことを言える人間なんているわけない。天井先輩はきっと、まだ何かを隠している。


「あー、君?」


 そんなとき、突然後ろから声をかけられた。


「は、はい。なんでしょうか」


 僕が言いながら振り返ると、そこには一人の男性教師が立っていた。高西先生だ。ちなみに、下の名前は知らない。覚えていない。


「式の進行に変更があるんだ」


 そう言って、高西先生は僕にメモの切れ端を渡してきた。


 どうも、彼は放送委員への伝達係の先生らしい。過去にも式の変更を伝えに来たのは高西先生だった。


「あ、はい。えーと、理事長式辞とクラス担任紹介の順番を交換するんですね。分かりました」


「そうそう、それでお願い。いや~、君たちもだいぶ放送の仕事に馴れてきたみたいだね。じゃあ、頼んだよ」


 僕の確認に満足したのか高西先生はそう言った。そして、そのまま教師の席へと戻っていった。


 放送の仕事に馴れてきた、か。


 確かにそうかもしれない。この一年で僕は風花先輩や天井先輩から色んなことを教わった。


 そういえば、昨日の朝に天井先輩も同じようなことを言っていた。


『君たちの入部したての頃のおどおどした感じも無くなって、一人の立派な部員として頑張っているのかと思うと、ボクがこれまでしてきたことは無駄じゃなかったんだと思ってね』


 ……無駄なわけ、無いのに。


 こう言っていたときの天井先輩は既に自分を責めていたのだろうか?


 やっぱり、天井先輩を忘れることなんてできない。僕は決めた。


 天井先輩を笑顔で送り出す。そして、天井先輩の怖れた出来事が絶対に起きないよう、僕たちでどうにかする。


「風花先輩」


 僕は式の進行の変更を伝えるため、風花先輩にこっそりと話しかけた。


「うん、何?」


 風花先輩は舞台の裏を軽く覗き込み、僕と目があってから小声で言った。


 司会である風花先輩は、舞台の端に立っている。普通は話しかけることはできない。しかし、今は校長先生の式辞なので、小声でなら司会と会話をすることができるのだ。あくまでも、仕事上の話だけだが。


「式の進行に変更がありました」


 僕は、あまり音をてないようにゆっくりとメモの切れ端を手渡した。


「えーと、学校長式辞の後の理事長式辞をクラス担任紹介とチェンジするんだね?」


 風花先輩は持っていた入学式のしおりを確認しながら言った。


「はい、そうです」


「理由は?」


「特に言われなかったので、諸事情に寄り、でいいと思います」


「うん、分かった」


「それでは、お願いします」


 僕は校長先生が「これをもって、私からの御入学の式辞とさせていただきます」と言ったのを聞いて、舞台裏の定位置へと引っ込んだ。


 校長先生の式辞が終わり、風花先輩が進行をしようとしたときだった。


「校長先生。――あれ?」


 マイクが音を拾わなかった。


 通常、誰かが舞台の上で話しているとき、司会のマイクはスイッチを切らずに、音量をゼロにしている。マイクが音を拾わないようにするためだ。


 なぜそのような面倒なことをしているのかというと、マイク本体が、スイッチを入れたり切ったりするときに発生してしまう音までもを拾ってしまうからだ。同じように、舞台上のマイクも音量調節で使っていない間に他の関係ない音を拾わないようにしてある。


 つまり、マイクが音を拾わなかったということは、音量を調節している舞台裏の端子に何かあったということ。もしくはその端子を管理している人間に……。



 舞台裏の端子の管理者は…………天井先輩だった。

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