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TAKE9 うん、この塩味サイコーだね

 はい、どうもです。風車です。

 いや~。受験シーズンですね。


 ウチの学校も入試の準備のために明日は午前授業になっています。

 一度受験を経験した者としては是非とも頑張って欲しいものです。


 えー、前回は風花先輩が泣いてしまった。――と思ったら、いきなり「わーい、勝った!」なんて言い出しました。いったい、何があったのか……。


 それではどうぞ!

「わーい。勝った!」


「ま、負けた……」


 そういうことだったのか……。


「さすがの君も女の子の涙には弱いのね」


 か、完敗だ……。


「って、なんでですかッ!」


 唐突過ぎてのってしまった。


「いや、だって涙は女の武器っていうじゃない」


 いや、言いますけど……。


「ということで、翔くん。いや、下僕! …………う~ん、違うなぁ。

 やっぱ、翔くんでいいや」


 あ、結局戻るんだ……。


 僕が安心していると、風花先輩がこう言った。


「ということで翔くん」


「なんですか?」


 僕がそう聞き返すと、風花先輩が笑いながら


「あとでポテトおごって」


 と言ってきた。


 なんか、すごくいい笑顔だな……。


 ちなみに、なぜポテトなのかと言うと、もちろん風花先輩の大好物だからである。理由は知らない。


 風花先輩曰く、ケンタッキーのホクホク感のあるポテトもいいけど、量と味ではやっぱりマックが一番ね! ということらしい。


 まぁ、そんなことはどうでもいい。当然、僕は奢るなんて嫌だと言おうとするが


「女の子を泣かせたんだから、あたりまえでしょ」


 先手を打たれてしまった。


「でも、さっき僕も泣いた気が……」


「しない、しない!」


「いや、そう言われると――。

 ……もういいです。先に進みましょう」


 この流れだと、もう一度同じことになりそうなのでやめた。


「(にしても、お前といいんちょラブラブだな)」


 席に戻ろうとした僕に隼が声を潜めながらニヤニヤ顔で話しかける。


「(そ、そんなんじゃねぇよ)」


「(ほら、顔が赤くなってるぞ)」


「(なってないって)」


「(自分じゃ分からないだろ?)」


「(そうだけど違う)」


「(ふーん)」


 隼が疑わしそうな目をこちらに向けてきた。


「違うって言ってるだろ!」


 僕は隼の頭をチョップ。


「うげっ!」


 さすがにムカついた。ちょっとしつこい。


「ど、どうしたの翔くん?」


「なんでもないです」


 風花先輩が驚いたように聞いてきたが、僕は先輩の顔を見ないようにしてそう言った。


 僕が風花先輩を好きになるなんて、そんなはずないのに……。


 くそ、隼のせいで意識しちゃうじゃねぇか!


「ふぎゃ!」


 僕は腹いせに隼を踏んづけた。


――『会議中』――


 僕たちはさっきから寄り道が多いと思ったので会議をしっかりやることにした。


 ――しかし。


 その前にグラブ発表会の説明をしようと思う。


 まず、青雲学園では何かしらの部活か委員会に所属していないといけないという決まりがある。


 その為、4月から5月までの一ヶ月間、体験入部期間が設けられている。


 しかし、野球部に入る、サッカー部に入るなどとハッキリと入りたい部活があるならいいが、実際はそんな生徒は少ないと考えられる。大多数の生徒は入りたい部活もやりたい委員会も存在しない場合が多い。


 そこで考案されたのがこのグラブ紹介だ。


 どんな部活や委員会があって、どんなことをしているのか、それをアピールをすることができる機会。それがグラブ紹介。


 どこにでもある行事だが、青雲学園のグラブ紹介は少し特殊だ。その特殊な例として挙げられるものが二つある。


 まず一つ目にグラブ紹介の開催日。先程から言っているように入学式と同日に行われる。


 これは、別々の日にするよりもまとめた方が準備が楽だからという理由でこうなったらしい。


 そしてもう一つ。入学式とグラブ紹介が連続して行われるため、一年生は当然疲れてしまう。その為、インパクトのある紹介を行わなくては部員を確保できないのだ。


 そういうこともあって、グラブ紹介は毎年ハイテンションで行われる。


 以上でクラス紹介の大まかな説明は終わりだ。


 この後はじっくりしっかりと会議を進めることができると思う。


――『と思いきや……』――


 何気に会議の内容が大体終わっていたので、ダイジェストでお送りします。


 ってなわけで、台詞のみをお楽しみにください。


風花「はい、それじゃあ。決めることはもう少ないけどしっかり会議やるよ!」


リン「いわき~!」


隼 「ふぼべっ!」


風花「な、なに!?」


翔 「隼がレンにチョッカイをだそうとして、リンがキレました」


風花「ふぅん、ならいつも通りだね」


レン「いつも通りなんですか!?」


翔 「レン。これが放送委員なんだ……」


レン「なんか……楽しそうですね!」


翔 「!?」


風花「ほら、今は会議中だよ~!」


リン「泉川先輩。すまなかった」


翔 「と言いつつも、しっかりと隼は戦闘不能に……」


リン「気にするな、天津」


翔 「ら、ラジャー」


風花「え~と、結局決めることはグラブ紹介についてだね。この前の集合で決まったのは、私と翔くんが進行係なのと」


天井「僕と隼君とリン君が紹介係になったことだよ。

 そして、紹介係のリーダーが僕。っていうところまで決まっているね」


風花「そっか~。じゃあ後は紹介の内容だね。ということで、後は任せた成輝くん!」


天井「うん、任せて。

 えーと、今日で実際に決めようと思うのは紹介の配役だね。シナリオは僕が考えておいたから」


風花「さっすが、成輝くん。じゃあ、私達はお先に」


翔 「えっ? いいんですか?」


風花「うん、いいのいいの!」


天井「大丈夫だよ。天津君」


風花「ほら、翔くん。先行くよ~」


天井「あ、泉川君。あれ、よろしくね」


風花「うん、わかってるよ! じゃ」


 ガチャッ! …………バタン!


翔 「あっ、待ってください。

 ……えっと、じゃあ。後はよろしくお願いします」


隼 「翔。……しっかりやれよ!」←(気持ち悪くウィンク)


翔 「……リン。コイツは任せた」←(ものすごい笑顔で)


リン「あぁ、わかった」←(こちらもものすごい笑顔)


隼 「え? リンさん? なんで満面の笑みを浮かべながらこっちに歩いて来るんですか――って、あああぁっ!!」


――『会議終了。というか離脱』――


 隼の断末魔を背に、僕は放送室を出た。


 ドアを出てすぐの所に風花先輩がこっちを見ながら立っていた。


「もう、遅いよ翔くん」


「すみません、遅れました」


 僕がそう言うと、風花先輩はニシシと悪戯っぽく笑って


「ポテトの奢りけってーい!」


 と言った。


――『風花先輩と僕INマック』――


「ポテト~♪ ポテト~♪」


 風花先輩が子供みたいに足をぶらぶらとさせながら椅子に座っていた。


 なんか、ちょこんっていう擬音がピッタリな光景だな。


「はい、買ってきましたよ」


 そして結局、僕はポテトとハンバーガーを奢らされた。あぁ、僕のお小遣いが……。


 只今の時間は午後の一時過ぎ。少し遅めの昼食と言ったところだろう。


 僕は自分と風花先輩のトレーをテーブルの上に置き、風花先輩と向き合うように椅子に座った。


「いっただきまーす!」


 風花先輩は真っ先にポテトを手に取り、一口ですべてを食べた。


「うん、この塩味。やっぱりサイコーだね」


 ポテトをモグモグと食べながらそんなことを言っている風花先輩は、まるでこの世の最高の幸せを味わっているかのような笑顔でほっぺたを押さえていた。


 その時、僕は自分が風花先輩を可愛いと思っていることに気がついた。


 あれ? ……僕は何を考えているんだ。


 そう思って顔をブンブンと左右に振ってみたが、思い浮かぶのは先程隼に言われた言葉……。


『にしても、お前といいんちょラブラブだな』


 違う、断じて違う。そりゃ、風花先輩のことは嫌いじゃないけど……そういう風には考えられない。


「どうしたの? 元気ないね。もしかして、熱でもある?」


「いや……そんなことないですよ」


 僕は、意識して自分の手元にあるハンバーガーを見ながらそう言った。


「ならいいんだけど……」


 風花先輩はしょんぼりとしてそう言った。


 それから、風花先輩はオレンジジュースを少し飲んだ後、意を決したように僕のことを見てきた。


「あのね、翔くん。

 私ね、翔くんに言わなくちゃいけないことがあるの」


 そして、風花先輩はゆっくりとこう告げた。


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