第10話:若手社員のコンサルティング(服選び)
デート前日の金曜日の夜。
俺は自室の万年床の上に、持っている限りの「休日の私服」を並べ、深い絶望の淵で腕を組んでいた。
(……終わった)
そこにあるのは、休日のゴルフコンペ用のくたびれたポロシャツか、すっかりヨレヨレになった謎のチェックシャツしか存在していなかった。
ダサいと思われたくない。いや、それ以前に「犯罪者」に見えてはならないのだ。
散々悩んだ末、俺は泣きながらスマホの画面をタップし、部署で一番モテる20代の若手社員(男)にLINEで通話をつないだ。
「……頼む! 助けてくれ!」
「ぶ、部長!? 夜分にどうしたんですか!?」
「明日、絶対に犯罪者に見えない、かつ清潔感のある服を教えてくれ! 俺にはチェックシャツしかないんだ!」
必死の形相で哀願する俺に対し、電話越しの若手社員は、まるで神託を下すかのように冷徹で的確なコンサルティングを開始した。
「部長、落ち着いてください。とりあえず、その手元にあるヨレヨレのチェックシャツは、今すぐ燃やしましょう」
「も、燃やす……!?」
「はい。そして明日、朝イチで駅前のユニクロに飛び込み、マネキンが着ている服を上から下まで『一式全部』買って、そのままトイレで着替えてください」
「ま、マネキン一式を……!」
「そうです。絶対に、ご自身のセンスを一つも混ぜてはいけません。無地です! 無地に限ります! 大人の男はね、変に若柄を狙わず、安心感と清潔感があればそれで100点なんです!」
若手社員――いや、若手コンサルタントの力強い説得に押され、俺は渋々ながら、己の敗北とチェックシャツの処分を受け入れたのだった。




