第096語 一件落着
ローズライトさんが、村から出て行った。部下の人達はまだ事後処理で残るみたいだけど、廷臣法官長として村長さんの罪を裁かないといけないのかな。
何だか、少し寂しい気もする。最初は堅物なだけの人だと思ったけど、人となりを知ればそうではないとわかった。
クホイに避難した人達が戻る前に、ルベルと話をしよう。
ルベルを捜すと、ディリィと話しているみたいだった。近づくと、ディリィがわたしに気づいてその場を離れる。
「どうした、アンネ」
何気ない、言葉。でもそれが、今までと何も変わらない言葉だと感じた。
ディリィが離れていったってことは、わたしに告白したことは伝えていないのかもしれない。それなら、今まで通り過ごした方が良いよね。
面と向かってお礼を言うのは、ルベルの心遣いに反すると思った。だから自分の心の中でお礼を言って、ルベルに一歩近づく。
「ねぇ、ルベル。新しい村長さんって誰だかわかる? 村の今後について相談したいことがあるんだけど」
「それなら、聞くぞ? おれが臨時の村長で、副村長はディリィだ。レオンに任命された」
「あ、そうなんだね」
「……村には、悪いことをしたと思っている。おれが勝手に動かなければ、もっと被害は最小限に食い止められたかもしれないのに」
「それは、まぁ……でも、ルベル以上に村のことを考えている人もいないと思う。適性じゃない?」
「そう言ってもらえるなら、これからもっと村を良くしよう」
「ルベルなら安心だね」
ルベルが、わたしの計画を話すように聞く姿勢を取ってくれる。
「あのね、ちょっとした計画があるんだ。この世界の故郷のここで、前世の世界を再現できないかなって」
「再現?」
「魔法がある世界だから、完全に一致ってわけにはいかないと思うの。でも、わたしがいた世界には四季があって、各季節で趣のある景色を見られるんだ」
「へえ。それは良いな」
「ルベルが臨時の村長ってことなら、今後も相談していくことになるんだけど……良い、かな?」
「当たり前だろ。それ以外にも相談してこい」
「ありがとう、ルベル」
早速なんだけど、と月桜と小湖を復活させたいと話す。ルベルは、笑顔でわたしの要請を受けてくれた。
クホイに避難していた村の人達が戻り、ルベルが簡単に村の現状を説明する。驚く人がほとんどで、中には村の一大事に何もできなかったことを悔やむ人もいた。
村長さんに協力していた人達も村に戻らなかったみたいで、今の村の人口は二百人強。三分の一くらいはいなくなっちゃったけど、村の問題は解決した。
廷臣法官の人達も今日の調査を終えてちらほらと集まってきている。
ラタムさんはスズラさんと合流できたみたいで、目が合うと兄妹二人から会釈された。
記憶を思い出す前は、その場の空気に合わせて自己紹介踊りをしていたけど。
今日は、自らの意思で動く。
両腕は後ろに反らし、翅を表すかのように。
胸を張り、笑顔で。
リズムを取るように足踏みをし、タタンッとスキップの準備を調えた。
「ぶんぶんぶん、はちがとぶ」
最初よりも、大きな月桜を咲かせよう。小湖も、前より深く。
「おいけのまわりに、桜がさいたよ」
蜂のように腕を動かし、スキップで周囲を回る。
「ぶんぶんぶん。はちがとぶ!」
村の中央へ両手を向けると、まるで温泉を掘り当てたかのように、地下からドーンと水があふれ出た。小湖の水位は瞬く間に戻り、水飛沫を浴びた月桜は一回り大きく成長する。
元々あった蜂の巣も、少しだけ大きくなった。
一回目と同じように、月桜は月の光を受けて光っている。ひらひらと舞う桜吹雪は、また無限に舞い踊った。
ルベルの横へ行く。
「これが、桜。夜に映えるから月桜ってわたしは呼んでいるんだ。桜はね、日本の春の代名詞なの」
「サクラか。風情のある花だな」
「そうでしょ? 日本にはね、まだまだたくさん良いところがあるんだ!」
「そうか。それは楽しみだ」
復活した月桜と小湖を見て、村の人達は各々宴会を始める。
村に、幸せが戻ってきた。
四季スロ、これにて完結です。完結にしてしまいます。
春の章、ということで四季の章を考えていましたが、ちょっと違うなぁと思いまして……。
やりたいことと内容が乖離しているかなと思い、ここで終わります。
名前や設定などを使って、違う方向性のお話を考えています。
もしよろしければ、そちらも読んでみてください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また違うお話でお会いできれば幸いです。




