第092語 月桜の桜吹雪
ひらひら、ひらひら。
月桜の花びらが、日の光を集めて光る。青、赤、緑に茶色。四色の花びらが、キラキラと空を舞う。
わたしが作り出した、月桜。小湖の水は天高くに飛ばしてしまった。
残っていた月桜も、強制的に桜吹雪になるようにしたから残されたのは幹だけ。枝からぶら下がっている蜂の巣も、寂しそうに見える。
戦いは終わった。これで村の平和は守られる。
……村は、残っていた南西地区も全て壊滅してしまったけど。
村の人達は、クホイに避難している。
人はいるのだから、これから本格的に復興をしていけば良いと思う。
これから村を元通りにして、移住者にも対応できるようにしてと考えていると、奇跡が起きた。
いや、奇跡とかそんな言葉で片付けられないかもしれない。
ひらひらと舞っていた月桜の桜吹雪が、一箇所に吸い込まれるようにして集まっていく。
その場所は、作ったばかりだった庁舎があった場所。そこに渦巻くように集まる月桜の花びらが、くるくると回って建物を生やしていく。
それだけでなく、元々村にあった建物に合わせて作っていた見た目が、和風建築のようになった。
月桜の幹から見て北西方向の庁舎は、五重塔に変化する。
「……そんなことって、ある?」
今は花びらがなくなってしまった、月桜。五重塔。そしてそのさらに奥にはリヴィエリ山。
思わず手で画角を作りたくなるその光景は、前世のどこかで見たような景色。リヴィエリ山の山頂にも、まだ雪が残っているし。
突如として生まれた景色に驚いていると、月桜の花びら達はまだまだ仕事を続ける。
北西部には、宿屋が一定間隔で並ぶ。
北東部には何やら農場のような、広い土地のようなものが生まれた。
南東部は、以前よりも少し範囲が狭まったような気がする。範囲が狭まった分は、村の中に丘のような場所ができたみたい。
南西部は、村長さんの家があった場所に小さなお城ができていた。和風の。お城というよりかは、個人の趣味で外装がお城に見える感じって方が近いかも。
村の復興は大変だと思っていたのに、月桜の花びらたちがその役割を少し担ってくれた。
各方面のさらなる復興、活用の方法に関しては、クホイに避難した人達が戻ってきてからかな。
「……アンネ殿の力は、とても綺麗だ」
「あ、ありがとうございます……。っは、そうだ。月桜はわたしが出して、その花びらが作ったから、村……といって良いのか怪しい感じになっちゃいましたが、この村にある施設とかはもう壊されないってことでしょうか」
「そうかもしれない。星渡門を壊そうとする人間がいないから、検証はできないが」
隣に来たローズライトさんが、ピクリと反応した。その目線の先には、身体を起こしたコナーさんがいる。どうやら目を覚ましたみたいだ。
巻きつけられていたローブを見て、不思議そうな顔をしている。
ローズライトさんと一緒にコナーさんの所へ行く。
「コナー。身体に異常はないか」
「はい……いいえ。これは、異常と言えるかと」
「どこが悪い?」
「いえ……悪いのではなく、異常な魔力の高まりを感じます。それに、慢性的な身体のだるさがなくなっています……」
コナーさんは、とても不思議そうに肩を回す。
廷臣法官だから、書類仕事もするのかな。それで蓄積された身体の疲労もなくなったのは、どうしてだろう。
「ローズライトさんは、何か身体に変化はありますか」
「いや、私は特に感じない」
「法官長は、二属性持ちで魔力も高いから感じないのでは」
「なるほど。それならば納得だ。私は身体に不調もなかったから、コナーのように変化を感じづらい」
ローズライトさんは、自分の体調管理も厳しそう。
無理して仕事をするような感じもするけど、たぶんそれは効率が悪いと言って仕事を切り替えているのかもしれない。
コナーさんが目を覚ましたことをきっかけに、あの赤黒い化け物に捕らわれていた三人を捜すことにした。
今は建物や施設が新しくできていたけど、その三人はすぐに発見。
北東部の農場のような場所に驚くルベル。
南東部の丘の上で周囲を窺っていたラタムさん。
村長さんは、南西部のお城の前にいた。様変わりした光景に驚いたかどうかはわからないけど、その隣には読書中のスマザさんもいる。
お城の前で、村長さんとスマザさんを村にいる全員で囲んだ。




