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第091語 赤黒い化け物②

3000字超です。

ゆったりと読める時間に読んでいただければ幸いです。


 わたし達は赤黒い化け物からの距離を保ちながら、作戦を練る。


「まず、水の攻撃は吸収されちゃいます」

「そうなると、私の風と……アンネ殿は、何ができそうだ?」

「わたしは色んな属性があるので、オノマトペを思いつければどうとでもなるんですが……」

「焦ることはない。落ち着けば、自ずと答えは見えてくる」


 ローズライトさんは、冷静なように見える。でも鞘を持つ手は硬く握られていた。

 それもそのはず。新たに取り込まれてしまったコナーさんは大切な部下だろうし、ルベルもいる。それに直接的な関係はなくても、ラタムさんと村長さんもいるんだ。

 このまま時間が長引けば、その全員の命が失われるかもしれない。


 そう考えて、勝手にヒートアップしていた。

 今のわたしに必要なのは、冷静な判断力。そして何をすべきかという決断。

 考えろ。考えるんだ。

 さっき聞いた詠唱の感じだと、ローズライトさんが魔法を放つには少し時間がかかりそう。わたしなら、もっと時間を短くして何かできるはず。


「……まずは、取り込まれた時間の短いコナーさんを救出します」

「何か手立てが?」

「ローズライトさんの剣の腕を見込んでお願いします。コナーさんが取り込まれている、あいつの右足部分。コナーさんが一瞬でも外に出られるようにしてもらえますか」

「承った」

「では、お願いします」


 作戦を実行するため、わたし達は動き出す。まずわたしは、借りたばかりのローブを脱ぎながら、効果が早く出るようになるべく化け物との距離を縮めた。

 化け物からの攻撃を躱しながら素早く近づくローズライトさんに抜かされる。化け物の左足部分から、触手のような物が彼に伸びていく。

 ローズライトさんが化け物の攻撃を避けながら右足下にたどり着き、何度も斬りかかった。わたしが望む通りに化け物の身体が再生される中、段々コナーさんが外に出てくる。

 そして、コナーさんが化け物に包まれていない瞬間が訪れた。


 わたしは借りたローブを投げる。


「【ばさりばさり】と絡め取れ! コナーさんを助け出せ!!」


 詠唱が終わるや否や、投げたローブがまっすぐにコナーさんへ飛んでいった。そして彼の身体を包みこむと、まるでローブに意思があるかのようにコナーさんを化け物から離す。

 安全な距離まで来ると、ぶっ飛んでいたローブがコナーさんごと降りてきた。

 呼吸があるかどうか確認する。

 どうやら、眠っているだけみたい。コナーさんがこの感じだと、残りの三人も、もしかしたら化け物の中で眠らされているのかも。それなら、まだ救出可能だ。


「コナー!!」

「ローズライトさん。ご協力、ありがとうございました。でも、あいつはまだ諦めていないようです。次はローズライトさんが狙われるかもしれません」


 ローズライトさんが戻ってくる。すぐにコナーさんの呼吸を確認した。


 赤黒い化け物は、一定の距離を開けると近づいて来ない。だからこうして話していられる。

 でも、思う。

 あんなにもりもりと南西地区から中央へ来たのに、動けなくなるものなのかと。


 なんにせよ、今は次の作戦を立てないといけない。


「ローズライトさんがあいつに近づいていたとき、触手みたいなものを伸ばしていました。ローズライトさんも、狙われています」

「そうか……アンネ殿は? あの時、近くまで来ていただろう? アンネ殿に攻撃は?」

「なかったです。そのことから推測するに、あいつは取り込むべき相手を選んでいるんじゃないかと」

「選ぶ? どうやって?」

「わたしの水流の壁を吸収された後、あいつが笑ったような気がしたんです。もしかしたら、どこに目があるかわからないですけどこちらの様子がわかるのかもしれません」


 わたしの話を聞き、ローズライトさんが化け物を見る。


「なるほど。それはもしかしたら、村長がその役割を担っているのかもしれない。そう考えると、あの時の攻撃の嵐の中一種類足りなかった」

「村長さんが目だとしたら、次は村長さんの救出でしょうか」

「可能なら、三人同時に救出してあの化け物の力を削ぎたい」


 作戦会議中、わたしは月桜と小湖を見ていた。ローズライトさんは、それらに背を向けている状態。

 そんな体勢の中、わたしが奥を見たまま言葉を失っている姿を見たローズライトさんも振り返る。


「……もしかしてですけど、あの化け物、小湖の水を吸収していませんか」

「ああ、残念ながら、私にもそう見える。水位が下がっているのは、気のせいじゃない」


 星渡人のわたしが出したから、消えない小湖。それをあの化け物が吸収している。

 あの小湖は不思議な湖で、一日の終わりに噴水のように水が吹き出ていた。それに青、赤、緑、茶色の小さな波が出ていたような気がする。

 つまりは、あの小湖には四属性分の力が加えられているのだ。でも、あいつは水属性のはず。そう思って目を凝らしてみると、小湖の表面に出ている波が、青以外の色を示していた。

 あの化け物は、器用に水属性の部分だけを吸収しているみたい。


「っ、阻止しないと!!」

「アンネ殿! 焦りは禁物だ。行くならば、確実に方法を得てからでないと」


 よく見ると、尻尾のような細い何かが小湖の中に入っているような気がする。あれを切れば。


「思いつきました! 風魔法で援護をお願いします」

「承った」


 ローズライトさんが詠唱を始める。その間に、わたしは化け物へ近づいていく。

 また動けなくなるかもしれないけど、今やらなくていつやるんだ。


 パパンパパンと、両太ももを叩いた。


「だーっと地上を走り抜け! 素早い動きで駆け抜けろ!!」


 わたしの足が回転数を上げる。化け物との距離は一瞬で詰めた。止まる方法はわからない。タイミングを合わせて、もう一つのオノマトペを放つだけ。


 両腕を、ハサミのようにばちばちと動かす。


「【じょきじょき】全てを切り分けろ! 上下左右に切り分けろ!!」


 一回目は、通り過ぎちゃって失敗。

 二回目、三回目は惜しいところまで近づけた。

 四回目。わたしはようやく「だーっ」のことがわかってきたような気がする。


「だーっ」で出る、速度。「じょきじょき」する、腕の広がり方。

 それらを考慮して、且つ、ローズライトさんが放った竜巻のタイミングががっちりと合った。


「ここっ!!」


 ジョキーンと、効果音をつけたいくらい。これ以上ないってくらいのベストタイミングで、小湖に入っていた化け物の尻尾みたいな触手を切ってやった。

 すぐに「だーっ」の効果を止める。

 化け物は小湖に入れていた触手でバランスを取っていたみたいで、ぐらりと傾いていく。

 やった、と思った瞬間。化け物はぐりんと素早く身体を捻った。そして、右手と左手と、頭を小湖に突っ込んだ。各場所に捕らわれている三人が、苦しそうに顔を歪めているように見える。


「――っ。今、助けるから!!」


 考えろ考えろ考えろ!

 三人を救えるのは、わたししかいないんだから!!


 目の前には、力を得ようとする化け物がいる。その化け物は、小湖に頭と右手と左手を入れている。

 化け物の思惑を削ぎ、三人を救出するためには。


 トントントン。トントントン。ドン、ドン、ドン。

 右手、左手、両手と小湖の近くで拳を地面に叩きつけた。そして、詠唱の内容と身体の動きを合わせる。


「【ドーンと高く天を突け! ザーッと広がれ月桜!!】」


 拳を高く突き上げ、その後に両腕を広げた。

 化け物が考えるよりも早く小湖の水が引いたみたいで、焦って尻尾のような触手を小湖へ伸ばす。

 でもそのせいで、違う属性も体内に取り込んでしまったみたい。シュワァァァと身体の一部が蒸発した。

 追い打ちをかけるように、天空へ打ち上がった小湖の水と月桜の桜吹雪が化け物を襲う。


 ぐねんぐねんと苦しそうな化け物は、身体をくねらせたときに取り込んでいた人達をポーンポーンと外へ飛ばしていく。

 三方向に飛んでいく被害者達の全てを、視界に収める。そして、風でできているような大きな籠を表すように両腕を広げた。


「ふわりふわりと緩和する!着地の衝撃緩和する!!」


 詠唱が終わるや否や、目視できる何かがぱぁっと広がっていく。それは化け物に飛ばされた三人の落下地点へ滑っていき、考えた通りの効果を発揮してくれた。







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