第087語 純粋な疑問
3000字超です。
ゆったりと読める時間に読んでいただければ幸いです。
ルベルを助けるためにはどうすれば良いか。
それを話し合おうと思ったとき、気づく。
ずっと村長さんを黒幕だと思って動いているけど、そうだという確証は一切ないということに。
色々な状況から、村長さんが黒幕である可能性が高いというだけ。
せめて証言の一つでも取れれば。
そう思っていると、二人の魔法師が近づいてきた。その二人は、残っている村長さんの協力者とされる二人。
ルベルの水のレーザーを、受けそうになっていた地と風の魔法師。
二人は、ローズライトさんの前で両手を合わせて前に突き出した。
「俺達が知っていることは話すので、どうか命だけは助けてください」
水魔法師最強の、ルベルからの攻撃。あのときはわたしの水流で防げたけど、もしかしたら死んでいたかもしれない。命の危機を感じ、自首してきた。
その二人を皮切りに、一人また一人と、村に残っていた残りの容疑者全員が集まってくる。その様子から、もしかしてごっそりと容疑者がいなくなったのは、圧倒的な力を前にして畏れをなしたからかもと思う。
わたしが、月桜と小湖を出したから。そんなわたしに攻撃されたら、と考えたのかもしれない。
「……アンネ殿。地の魔法師と協力して、取り調べるための建物を作ってはもらえないか」
「わかりました。どの辺に作りましょうか」
「村の中央から少し離れた場所……比較的家の数が少ない、北西部に」
ローズライトさんからの指示を受け、ディリィと一緒に場所を移動する。ディリィは地の魔法師だから、これまでも村の復興を手伝っていた。
これから建てる建物は、村の雰囲気を壊さない見た目にしたい。
……新しく建てた建物は、全て壊されちゃったけど。
今も残っているのは、南西部だけ。その建物と雰囲気を合わせて建築していく。
ディリィに建物を建てる基礎を作ってもらって、わたしが「かちかち」を。
上の建物を造ってもらったら、わたしは「がちっ」を。
そうやってディリィと協力して、入口……というか受付のようなものの先にいくつも部屋があるような二階建ての建物を完成させた。
窓がないのは仕方ない。換気口はあるけど、木の扉を閉めちゃうと壁と一体化するように見える。
庁舎が完成して、ローズライトさんの先導のもと容疑者の人達や幼なじみ達、ローズライトさんの部下のコナーさん達も一緒に入った。
ローズライトさん、コナーさん、ザドルさんがそれぞれ一部屋に入り、それぞれ話を聞く。
幼なじみの三人は別室で待機と指示された。わたしは何も言われなかったから、三部屋に各人を案内する係を廷吏の二人と請け負った。
そして。
コナーさんやザドルさんからも話を聞き、内容をまとめたローズライトさんと一緒に幼なじみ達が待つ別室へ行った。
村の復興を手伝うのと、自首してきた人達を監視するように部下の人達に指示を出したみたい。
ローズライトさんが、部屋に残った。
「さて。十人から話を聞いた。その結果、村長が首謀者だということがわかった」
「あの、ローズライトさん。わたしが見た、あの取引の相手は……」
「それは伝達済みだ。陛下が主導で動いてくださっている」
「おぉ……それは、安心ですね」
わたし達が話していると、幼なじみの三人は寝耳に水というような感じだった。
まぁ、村長さんが村を壊そうとしたなんて考えもしないよね。
「ローズライトさん。思ったんですけど、村長さんってどうして村を壊そうとしたんでしょう?」
わたしが質問をするのと同時くらいに、換気口からするっと薄緑の鳥が入ってきた。ピッと真っ直ぐに伸びた一房の毛があるその鳥は、ローズライトさんの肩に止まると、口をパクパクと開閉させる。
伝令鳥だと思うけど、色が薄いのは送った人の風の力が弱いからかな。
疑問に思いながらローズライトさんを見ていると、伝令鳥に何か伝え、また換気口から放った。
「報告が入った。アンネ殿から得た有益な情報により、村長の後援者を突き止めることに成功。無力化させたため、今後村に関わることはないそうだ」
ローズライトさんからの報告に、ほっと胸をなで下ろす。
直接言われたわけじゃないけど、国の存続に関わる危機なんじゃないかって思っていた。その危険がなくなったのは、良いことだ。
「ただ、後援者が手を切ったと村長が知った場合、村はまた危険に晒されるかもしれない」
「えっ!? それは困ります! 村を守らないと!!」
「そこで、提案だ。民がいれば復興はできる。事態が解決するまで、村人達はクホイに避難してもらうのはどうだろうか。馴染みの宿で対応してもらえる」
ローズライトさんからの話を受け、幼なじみの三人はそれぞれが避難誘導役を請け負った。
ルベルが、敵対しているかもしれない。ルベルは水属性最強。あの力に対抗できると自信がないなら、三人の行動にも頷ける。というより、相対することになったときにルベルに魔法を放てないと、残る意味はない。
ローズライトさんから指示を受け、三人が散っていく。そしてローズライトさんも三人と一緒に部屋の外へ出ていった。
残されたわたしは、ある疑問が浮かぶ。
……たぶん、ローズライトさんは貴族よりも上の立場の人。国全体を、考える人だと思う。
ローズライトさんの発想は、国を治めるような立場だからだと思う。
民がいれば。その発想は、規模が小さくなっても村長という立場でも考えるんじゃないかって。
村長さんが仕掛けた、村の火災。あのときに亡くなってしまったのは、廷臣法官の人達。つまりは、村長さんにとっては村人ではない余所者。
もしかしたら、あのとき村人を殺しても構わないと指示を出したかもしれない。でも実際は、住人は塩獣の洞窟へ追いやられただけ。洞窟の前で死んでしまった人達も、恐らくは協力者だったんじゃないかな。
村を壊滅させようとしている人が、そんなことする? わざわざ避難させるって、面倒だよね。
人さえいれば、どんなこともできる。
そんな考えを村長さんが持っているとしたら。村がある場所を更地にするだけで、村人を傷つけないようにしているとしたら。
……村には、まだ秘密がある。
星渡人のわたしが出したから、元広場は月桜と小湖が出たまま。でもその前は炊き場が消えてしまったし、牢屋もいつの間にかなくなっていた。
国境の、辺境の村。ここに村があるのは、何もつい最近というわけじゃないはずだ。ずっと昔から、この場所にあったと思う。
そして、その村を村として維持するためには、村民が必要。その村民を纏める、長が必要。
例えば村長さんの家が代々、この村の秘密を守ってきたとしたら。
なぜ今、村長さんはそれを壊そうとしているんだろう。
維持できていた、村の存続。それなのに、村長さんは何人も被害者を出している。……いや、火災の首謀者が村長さんってだけだ。まだ、村で起きた殺人の証拠は出ていない。
村で亡くなったとされる人達の中で、確実にそれがわかっているのはリダロさんのお姉さんだけ。死体を、リダロさんが見たから。
それなら、他の人の亡骸はどこにあるんだろう。もしそれが出てきたら、確実に村長さんを追いつめることができるんじゃないかな。
村長さんは今、ルベルという最強の矛を持っている。ルベルを助けなきゃいけないし、今も行方不明とされているラタムさんもまだ生きているなら、助けなきゃ。
村長さんの動きを把握するためにも、村長宅の不思議な間取りを理解しておくべきかもしれない。
わたしは、庁舎に残っていたコナーさんと廷吏の人と話すローズライトさんを見る。きっと、避難指示と容疑者達も移動させることを話しているんじゃないかな。
前にわたしを襲ったと思われる人も、今はローズライトさんの前か、もしくは村を出ている。
今自由に動けるのは、わたし一人。それなら、わたしが行くしかないでしょ。
オノマトペ大国、日本の知識を持つわたしが。




