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第072語 調査は地道に堅実に

3000字超、です。

ブックマーク登録をしていただき、時間があるときに読んでいただければ幸いです。


 今村に残っている人達全員から話を聞く前に、ローズライトさんから言われた。離れていると何かあったときに守れないから、傍に控えていてくれと。

 そういえば、わたしは前に命を狙われたかもしれないんだったと思い出す。あのときの攻撃は、水。洞窟に閉じこめられていた中に水の魔法師も何人かいるけど、あの中の誰かに狙われたのかな。


 南西部の住人も、今は広場にいる。ここにいないのは村長さんとスマザさんくらい。

 あの火災後に残っている村人は、それでもまだ数は多かった。火の魔法師はごっそりといなくなったけど、閉じこめられていた中に数人いる。


 ローズライトさんはまず、いなくなった村人が誰かを調査するみたい。

 一人一人に話を聞いていく。


「あ? いなくなった奴……そうだな、俺がわかるのはジザレだ。あいつはいつも底抜けに明るくて、人が集まりゃ騒ぐ奴だ。なるほどな、あいつがいないからいつもの宴会みたいな盛り上がりがないのか」


「私は、ゾーイさんがいないと思います。物静かな人でしたけど、火属性なのに力持ちで。色々と手伝ってもらいました」


「そういえば、タチアナとテッドがいないな」

「でも、あの二人は恋人同士でしょ。どこかに行っただけじゃない?」


 ローズライトさんと一緒に村の人達を回っていると、みんな反応がわかりやすかった。女の人はローズライトさんを見て、男の人はわたしを見る。話ながらもちらちらと視線を向けていた。

 モテるとかモテないとか、正直わからない。前から、なんとなく見られているかなとは思っていたけど、わたしの顔が整っているなんて考えたこともなかった。


 でも、見た目というのは案外使えるらしい。

 ローズライトさんと一緒にいたら、ほぼ全ての人達がそれぞれいなくなった村人について話してくれた。

 ……もしかしたら、ローズライトさんが常に眉間にシワを寄せているから、それが原因かもしれないけど。


 聞き取り調査の結果、いなくなった村人は全部で三十人。ほとんどが火属性の魔法師だけど、数人違う属性の人もいた。

 そして、亡くなってしまった四人の魔法師。

 合わせて、三十四人の人があの火災後に亡くなったり姿を消したりした人ということみたい。


 地道な調査は大事だと思うけど、この結果で何がわかるんだろう。

 ローズライトさんに聞いてみた。すると、広場から離れるように動くから、これはと思って、「ひそひそ」をかける。

「ひそひそ」の効果を伝えると、驚いたように目を見ひらいた。


「アンネ殿のスキルは、便利だな」

「そうですねぇ。でも、たぶんまだまだできますよ。七歳よりも前の記憶を思い出せたら、たぶんもっと」

「その件に関しては、忘れることでアンネ殿を守っていると推測できる。無闇に思い出そうとしなくても良いのかもしれない」


 やっぱり、ローズライトさんは優しい人だ。わたしは、魔女だと言われていたのに。


「アンネ殿のスキルのおかげで、堂々と話している風に装える。質問したいのだが、以前アンネ殿を魔女だと言っていたのは誰か覚えているだろうか」

「具体的に言葉にしていたのは、亡くなったギールさんですけど……ローズライトさんが来たあの日、口にしていたのは……」


 広場にいる村の人を見て、属性と服装の特徴を伝える。最初は無意識に指を差そうとしちゃったけど、ローズライトさんが断りを入れてからわたしの手を下ろした。

 ローズライトさんは何か考えるように顎に手を当てると、次の質問を投げてくる。


「アンネ殿の記憶にある者だけで良い。あの村人達の中で、知っている者は?」

「何人もいますけど……わたしよりも、ルベルの方がずっと村の人に詳しいですよ?」

「村の復興は急務だ。あの段階で確実に外へ出せるのは、部下のザドルとルベルだけだった」

「でも、ルベルは……」


 操られているのではないか。

 そう言おうとしたことを察したのか、ローズライトさんはルベルが来たときのことを話してくれる。


「アンネ殿が投獄されている時、ルベルは星渡で首都まで来た。同乗者の命を脅かすほど落ち着きがなかったようで、星渡安全義務違反を犯したとして私の所へ連行されて来たんだ」

「星渡安全義務違反……そんなものがあるんですね」

「離れた場所と場所を繋ぐから、どうしても空間が捻れる。そこで何かあったら何も対処できない。貴重な国民が事故で失われるのは、あってはならないことだ」


 国民、という言い方が少し気になった。

 まるで、ローズライトさんがただの貴族様ではなくものすごい貴族様のような感じがする。

 いや、まさかね? そんなことないよね?


「ルベルとは魔法師学校で同級だったから、話を聞いた。その内容とアンネ殿のことを案じる様子からは、悪の気配は感じなかった。だから、ルベルは問題ないと判断した」

「なるほど……」

「アンネ殿が納得できたところで、先程の質問だ。アンネ殿が知っている村人を教えてほしい」


 問われ、答える。

 幼なじみのディリィ、カペリ、ポアル。その家族。そしてスズラさんとリダロさんと、オガックさんとカトコさんご夫婦。あとは、いつもルベルとじゃれ合っているイクスさん。

 さらに何人も、とりあえず顔を見たことがある人達の特徴を伝えた。

 ローズライトさんは、顎に手を当てて何かを考えているみたい。


「これまで廷臣法官長として何人もの容疑者を見てきた経験則で、確実なものではないが」


 そう前置きして言われたのは、わたしが名前を覚えている人以外。つまりは、顔だけしか知らない村の人達。その人達全員が容疑者だと。

 その数、実に五十人。例えば亡くなった人といなくなった人の三十四人を足すと、八十四人。村の人口の、三分の一くらいになる。


「話を聞いて回っている際、容疑者達と思われる村人達は皆私を警戒していた」

「えっ、そうなんですか? そんな感じはしなかったです。てっきり、ローズライトさんとかわたしの見た目とかで話してくれたのかと……」

「それも何人か見受けられた。だが下心が見えるほどの者は若く、年を重ねたものは警戒心が見て取れた」


 わたしは表面しか見えていなかったけど、ローズライトさんは面談中に色んなことを考えていたんだ。


「……表情、ということですか」

「それだけじゃない。向き合って話をしているのに、足先を少しそらすのはその場から早く立ち去りたい合図だ。腕を組んで私との間に壁を作るのは不快感を示す。逆に背後で手を隠すように両腕を組むのは、話したくないから近づくなという意味になる」

「ほぁ……そんなことがわかるんですね。でも、そんなにわかりやすく気持ちを出してくれるものですか」

「もちろん、間違っている可能性もある。あくまでも、私の経験則だ。何人もの容疑者と話し、類型化した」


 経験は何よりも宝だと思う。

 廷臣法官長として容疑者に向き合ってきたローズライトさんが言うんだから、たぶん人には無意識に行う動作みたいなものがあるんじゃないかな。


「しかし、五十人か。容疑者はいつから村に潜入していたのか不明だ。それなりの年月を共にしたのだろう。容疑者と疑って見なければ、親交のある村人にしか見えん」

「そうですよねぇ……。容疑者とされる人達は、特に話を聞いた方が良いと思いますが……ああやって、仲が良いところを見てしまうと難しそうです」


 はた目から見れば、容疑者と思われる人達は、村によく馴染んでいると思う。

 肩を組んでお酒を飲んだり、突然広い場所を確保していつものじゃれ合いが始まったり。そのまま、何も知らなかったときに戻れればどれだけ良いか。


「情は捨てなければいけない。村に潜入するにあたり、馴染みやすく振る舞った可能性がある」

「そうか……そういう、やり方で」


 容疑者とされている人達が、どこまでのことを隠しているのかわからない。でも、今までのような情を捨てることから村の復興が始まるのかもしれない。


 村の復興のため。復興した後の村でのスローライフのため。

 わたしは、自分には何ができるかと考えた。






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