表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/96

第069語 愚者の確信


 わたし達三人は、火事の被害がなかった南西部にある村長さんの家に向かった。

 村長さんの家の周りにある植物達ですら、火事の被害が出ていない。本当に、南西部だけ火事から免れたみたいだ。

 普通に考えたら残った地域にいる人が、火事を引き起こしたんじゃないかって思う。でも村長さんは水属性だし、あれだけ燃えたんだ。もし放火だとしたら、火だけでなく風の魔法師もいないとダメなんじゃないかな。


 背筋が、ゾクッとした。

 まさか、そんなことある? 村の人達がみんな、村長さんの指示に従ったなんて。

 いや、さすがに考えすぎだ。どうやってそんな人数の人を動かすっていうの。魔法で従わせるには、数が多すぎる。


 でも……。

 あまりにも、タイミングが良すぎる。確かに停滞していた村での問題を動かすため、ローズライトさんと村を出た。でも、例え村長さんが動いたとしても規模が大きすぎる。村長さんに協力する人達が、絶対にいるはずだ。

 村のみんなを、疑いたくない。でも、そう考えないとおかしな話。


「アンネ殿。中から応答がない。あの規模の火事があった後だ。風向きから考えると可能性は低いが、村長が煙を吸って倒れているかもしれない。救護案件として踏み込む」

「は、はい」


 ローズライトさんから言われ、正面玄関から中へ入っていく。でもすぐに、ローズライトさんが足を止めた。

 それもそのはず。村長さんの家は特殊で、一階には複数の扉がある。階段がある場所でさえ、扉の奥だ。


「前にスマザさんの世話係をしたことがあるので、中の構造は少しわかります。見たところ一階に村長さんは倒れていないようなので、二階の寝室へ行きましょう」

「あ、ああ。助かる」


 スマザさんも無事だったかを確認した方が良いと思ったけど、先に村長さんを確認する。

 スマザさんの部屋から近い扉を開け、階段で二階へ上がる。そして右奥の部屋へ向かおうとした。

 階段から離れた途端に、その目的とした部屋から村長さんが出てくる。肩掛けで隠しているけど、寝間着のように見えた。

 ローズライトさんは、すぐに村長さんに背を向ける。


「っ、すまない。倒れていると思い、中へ入った」

「いいえ。申し訳ありません。ここ数日、体調が悪くて……」

「それなら、村で起きた火事のことは知らないか」

「えぇっ!? まさか、そんな……あたくしの村が?」

「風向きが悪かったのだろう。村の南西部以外は被害が甚大だ」

「それは困りましたね。村人は? みなさん、無事でしたか」


 肩掛けで口元も隠しているけど、目元は見えている。ローズライトさんからの質問に応える村長さんが、自信に満ちあふれているように見えるのは気のせいかな。


「村長に窺いたい。私が村を出る前と比べると、人数が大幅に少ないように思う。火事で村人に被害者はいなかった。村人達がどこに行ったのか、心当たりはないか」

「心当たり……あぁ、そうです。もしかしたら、リヴィエリ山にある塩獣の巣穴かもしれませんね」

「塩獣の?」

「村人達が生業にしている、塩獣狩りの洞窟です。もしかしたらそこに避難したのかもしれません」


 村長さんの話を聞き、ローズライトさんがわたしに場所を確認する。でもわたしは一度も狩りに参加していないから、首を振った。


「もし洞窟に行くのでしたら、村の男衆に聞けば良いです。狩りに行っていた者がおりますので」

「わかった。協力、感謝する」


 ローズライトさんに促され、その場を離れる。

 階段を降りる手前で村長さんを見たら、目が合った瞬間鼻で笑われたような気がした。


 まさか……!?


 体調が悪いというわりに、ローズライトさんと話すときは淀みなくすらすらと。

 ローズライトさんの考え方を知っていて、あえて寝間着で登場した。姿を観察されないように。

 引き返しても、わたしじゃ何も聞き出せないと思う。ローズライトさんのことすら調べて対応したのだとしたら、よほど考えている。

 何もできないと思われたから、あんな風に笑われたんだ。


 ……悔しい。あんなに、あからさまな態度なのに。わたしは、何もできない。


 絶対に村長さんが一枚噛んでいる。いや、黒幕だ。それなのに、わたしは何もできない。

 大好きな村のために。スローライフを送りたいと思っていたのに。

 わたしは、何もできないじゃないか。せっかく、オノマトペ魔法っていう珍しいスキルを授かれたのに。

 失っている記憶の部分で、もしかしたら打開策があるかもしれない。早く思い出したいと思うけど、その方法がわからない。


 わたしは悔しく思いながら、ローズライトさん達と村長さんの家を離れた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ