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第065語 届かない知らせ


 ローズライトさんのご厚意で一晩泊めてもらった。

 朝になってからローズライトさんとその部下の皆さんと、首都の星渡殿に向かう。


 ……貴族様は、お屋敷も豪華だ。


 建物の外観にも、緑のアクセントがあった。白い壁の模様だったり、窓の近くに設置されているランタンだったり。

 品のある雰囲気で、その屋敷の主人もそんな人であると想像しやすい。


「アンネ殿。昨日夜にクホイに行ってケビンから何も連絡がないことを確認しているが、一晩経って何か動いたかもしれない。アンネ殿の体調の確認も含めて、早く行こう」

「はい。今行きます」


 ローズライトさんに呼ばれ、首都へ来た面子と変わらない顔ぶれで星渡殿へ行った。

 首都の星渡殿は、というより、首都は、全体的に白い印象がある。星渡殿以外の建物も、白いものが多い。

 ローズライトさんの家のように色をアクセントにしているところもあった。でも屋根は真っ白ではない。白を混ぜたような淡い色合いの屋根が多く見えた。


 クホイから首都へ行くのに、目印になっていたのは白い線。そこから想像するに、星渡殿がある街はそれぞれが目印となる色になっているんだと思う。

 クホイは青い屋根が目立っていたから、青い線が引かれているはず。


 推測を立てながら、星渡殿での大行列を進む。

 さすが首都。無料だし、星渡を利用する人があふれているみたい。

 でも、そんな中でもクホイは人気がないように見える。青い線の上にいる人は、他と比べて人数が少ない。

 クホイは……というか、北の地域は、冬を越せば観光先にも良いと思うんだけど。もう少ししたら、もっと人が増えるかな。


 分岐するまでの待機時間は長かったけど、青い線の上を進むようになってからは比較的早く進んだ。

 何組かクホイに行く人達がいて、すぐにわたし達の番になった。


「アンネ殿。検証のため、星渡の最中は目を閉じていてほしい。何かあった時に対処するため、アンネ殿の手を持つことの許可を求める」

「あ、はい。わたしも不安だったので、そうしてもらえると助かります」


 安全ベルトを装着し、いよいよとなってローズライトさんと話した。

 ローズライトさんからは、魔女の疑いをかけられている。でも命を狙われたことを話したり、体調が悪いところを見られたりして、当たりが柔らかくなっている気がした。

 ルベルの家でも感じたけど、基本的にはローズライトさんは優しい人。厳しさが前に出るのは、職業病みたいなものかな。


 六人座った平たい乗り物が、ふわっと浮く。そのタイミングで、わたしは目を閉じた。

 そっと、気遣うようにローズライトさんが左手を握ってくれる。

 目を閉じていてもわかる、移動している感覚。ローズライトさんのおかげで不安はない。このまま、星渡が終わるまで目を閉じて検証しよう。


「今星渡門に入った」

「順調に進んでいる」

「もう少しで、クホイの星渡殿に着く」


 ローズライトさんが定期的に声をかけてくれて、行きよりも移動時間が短く感じた。

 細やかな配慮をしてくれるローズライトさんだから、恋愛をしたらきっと、その相手の人をものすごく気遣うんだろうな。

 いや、もしかしたら恋愛には不器用で、失敗するかもしれない。朝が弱い以外は完璧に思えるローズライトさんが、失敗してしょげる姿を見てみたいかも。


「っ」

「どうした、アンネ殿」


 可愛らしいような姿を想像して癒やされたけど、唐突にあの頭痛に襲われた。ぎゅむっと目に力を入れて閉じる。突然前のめりになったわたしを見て、ローズライトさんが声をかけてくれた。

 検証中でそもそも目を開けないけど、今は目を開けようとも思えない。頭が割れるような頭痛の、原因を考えないと。また、ローズライトさんに迷惑だと言われてしまう。


「もう少しだ。ほら、もう星渡が終了するぞ」


 ローズライトさんは、絶えずわたしに声をかけてくれる。そのおかげで、わたしは頭痛だけに集中しないでいられた。

 何の解決にもならないし突発的な方法で、一人じゃ何もできないけど。

 この頭が割れるような頭痛がしたときは、痛みが過ぎ去るのを待つよりも誰かと話していた方が気が紛れるかもしれない。


 ふわっと、着地したような気がした。

 目を開けると、そこはクホイの星渡殿。どうにか、意識も失わないでたどり着けたらしい。


「失礼する」


 ローズライトさんがわたしの手を引き、乗降場から離れる。

 わたしは気づかなかったけど、星渡殿には休憩できるベンチも設置されているみたい。確かに、星渡を利用して体調が悪くなったら、すぐに休みたいよね。

 わたしはベンチに座らせてもらい、背中を丸める。何となくした行動だったけど、これも頭痛を緩和してくれるみたい。


「アンネ殿。やはり駄目だったか」

「いいえ……その、理由は違います」

「ということは、また新たな理由が?」


 理由を話すように促されていると思った。でも、わたしも正直なところ具体的に説明ができない。想定外の頭痛で、思い出せないんだけど……。

 あのときわたしは、何を考えていた?


「……えぇと、すみません。まだ言葉にするにはちょっと時間が足りなくて」

「アンネ殿の中で理由として明確になったら教えてくれれば良い。その時私がいれば、対策を立てられる」

「はい。そのときは、よろしくお願いします」


 ベンチで休んでいると、段々痛みが引いてきた。あともう一息という感じがしたから、「すっきり」を自分にかける。


「その言葉は?」

「あぁ、えぇと、これがわたしの魔法なんです。成人の儀で授かりました」

「それは、どんなスキル名か教えてもらっても?」

「はい。オノマトペ魔法と言います」

「なるほど……新しく発見されたスキルが出たと聞いたが、まさかアンネ殿がその持ち主とは」


 聞いたって、ルベルから? そう思ったけど、それとは少し意味合いが違うような気がした。

 そういえば祭司様が持っていた本。あれは申請したら誰でも読めるものなのかな。もし読めるなら、他にどんなスキルがあるのか見てみたい。


「すっきり」のおかげで、もう一息だった頭痛もようやく収まった。

「すっきり」は万能じゃないみたい。あと少しってときにしか効かないのかも。


 頭が割れるような頭痛から快復したわたしは、ベンチから立ち上がった。


「お待たせしました。もう大丈夫です」

「無理は良くない」

「大丈夫ですって。今回は意識を失うようなものでもなかったですし」

「それは、確かに。だが無理は禁物だ。ケビンからの連絡がないかどうか確かめるため外へ行くが、体調が悪いと感じたらすぐに申し出るように」

「わかりました」


 六人で星渡殿から出る。

 ローズライトさんが周囲を窺う。どうやらケビンさんからの伝令鳥は来ていないらしい。


「……おかしい。細かすぎる報告はいらないと伝えたが、二日も連絡がないのはあり得ない」

「何か、あったとか」

「緊急の連絡であれば、昨晩クホイに戻った際に伝えるはずだ」

「クホイで一晩。首都で一晩。もし、クホイで一晩明かす前に何かあったとしたら……」

「! 馬屋に急ごう」







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