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第052語 正式な依頼

3000字超です。

ゆったりと読める時間に読んでいただければ幸いです。


 今後の方針が決まり、ローズライトさんが先行する形でルベルの家へ戻った。

 ルベルも操られる可能性がある。だからこそ、ルベルも監視できるようにと、道中の短い時間で言われた。


 ……ルベルも、ということは、わたしも監視対象ということだよね。


 わたしが魔女ではないということは、これから示していけば良い。

 ルベルの家に戻ると、おばさんが気まずそうな顔をしていた。


「アンネちゃん、その……」

「ローズライトさんから聞きましたか? しばらく、お世話になりますね」

「え、えぇ、わかったわ。アンネちゃんは、私の部屋を使ってね」

「え、でも……そうすると、おばさんが寝られなくなっちゃいません?」

「私は、久しぶりに旦那の元へ行こうかと思うわ。クホイにいるから」

「そうなんですね」


 おばさんは前に、わたしとルベルが一緒になれば、というようなことを言っていた。

 わたしを疑ったことの罪悪感か、他の理由か。前みたいにお義母さんと呼んでとは言われなかった。


 部屋の位置をわたしに教えると、おばさんは家を出る。村の外に出ることは、ローズライトさんからも許可を得ているみたい。


 おばさんを見送って戻ると、ローズライトさんがルベルにしばらく塩獣狩りは控えるように言っていた。


「何で」

「村の中の問題がもう少し落ち着くまで、だ」

「塩獣狩りは村を維持する要の事業だ。止めれば、必要なものを揃えられない」

「私も、廷臣法官達も滞在する。食糧はこちらで準備しよう」

「それにしたってよ……」


 わたしに名前を呼ぶことを許可していないと言っていたローズライトさんが、ルベルからは名前を呼ばれている。それぐらい親しいと思っていたけど、何となく二人の間にピリついた空気がある。

 本当は仲が悪かったのか、と思っていると、ルベルがちらりとわたしを見た。


「っ!」


 わたしと目が合うと、ルベルはさっと顔をそらした。顔が赤いような気がするのは、ローズライトさんが言っていたようなこと?


「ローズライトさん。やっぱり、いくら護衛のためとはいえ、同じ屋根の下にわたしもいたらダメなんじゃないですか」

「アンネ殿は命を狙われている。そんな危険な状態で、一人でいさせるわけにはいかない」

「ちょっと待てアンネ。聞いてないぞ。え、命を狙われているって言ったか」

「あー……」


 水の魔法師に攻撃されたとき、ルベルは一晩戦った後。だから伝えていなかったし、心配かけたくなかったから、伝えなくても良いかなと思ってた。


「アンネを狙ったのはどこのどいつだ!? おれがとっ捕まえてやる!」

「いや……誰だかは、わからないの。水の魔法師ってだけで」

「なるほどな。容疑者は水の魔法師か。……人数が多くて搾りきれないな」

「そうそう。それに、村のみんなを疑いたくないじゃん?」

「それもそうか」


 男二人と女が一人。奇妙な同居生活を始めるため、ルベルの家がローズライトさんの滞在場所として部下の人達に通達された。




 部下の人とローズライトさんが話し終えてから、意外と思える人物からの接触があった。

 ラタムの妹さん。名前は、スズラさんと言うらしい。

 スズラさんからは、前に会いに行ったときの態度を謝られた。


「私に何か用か」

「あの……廷臣法官長様に、人捜しをしていただくことは可能でしょうか」

「村での調査の合間にということになるが、可能だ」


 ローズライトさんの言葉を聞き、スズラさんはぱぁっと顔色が明るくなった。


「あ、あの、でしたら、兄を捜してくれませんか!!」

「スズラ殿の、お兄さん」

「はい! 兄は、ラタムと言います」


 わたしは思わず、ローズライトさんを見てしまった。

 ラタムさんの妹であるスズラさんからの依頼なら、ラタムさんを捜すために村長宅を調べられるんじゃないかって。

 期待をこめてローズライトさんを見たけど、表情は変わっていなかった。




 スズラさん曰く、両親はすでに亡くなっているらしい。そのため、残された家族は兄のラタムさんだけ。

 スズラさんは薬師として働いているが、繁盛しているわけではない。そのため、たびたび税金が払えなくなるときがあった。支払いを遅くしてもらおうと、ラタムさんが村長さんに交渉していたみたい。


「どんなときも、兄は家に戻って来ました。でも春の狩猟祭の翌日から、帰って来ないんです」

「狩猟祭の翌日って……もう、一ヶ月以上も!? どうしてもっと早くに言わないんだ」


 ルベルが、語気を荒げてスズラさんを責める。スズラさんも村人らしく身体を鍛えている方だとは思うけど、ルベルとは体格差がありすぎた。

 完全に萎縮してしまっている。

 わたしは、スズラさんに近づいて肩を叩く。


「スズラさん、今まで一人で不安だったと思います。食事はきちんと取れていますか」

「あ、いいえ……一日に、一食ぐらいしか」

「そんなんじゃ、ラタムさんを見つける前にスズラさんが参っちゃいますよ。元気な姿で迎えるために、きちんと食べないと」

「それは、わかっているんですけど」


 スズラさんが、申し訳なさそうに笑う。

 両親が亡くなり、唯一の家族が戻って来ない。心配で食べ物も喉を通らないと思う。

 でも、相談するにしても誰にもできなかったのもわかる。みんなが、疑わしいと思っちゃったんじゃないかな。

 そんなとき、ローズライトさんがやって来た。


 これは本格的に村長さんを調べる口実になるんじゃないか。

 そう思って、ローズライトさんを見た。


「あの……?」

「ああ、すまない。不躾だった」


 目が合い、その後もじっと見られていたことに首を傾げた。


「廷臣法官は今、男所帯だ。雑務や囚人管理を担当する廷吏も、体格自慢の男だけ。犯罪を扱う荒事だから女性はどうかと思っていたが、女性の廷臣法官も必要だと感じた」

「制度のことはともかく、ラタムさんを捜すということを理由に、すぐに捜索を!!」

「いや、そういうわけにもいかない。アンネ殿から聞いた話だけでは、家宅捜索までは無理だ。もう少し情報を集めよう」


 ローズライトさんは一度ルベルをじっと見ると、すぐに戻ると行ってこの場を離れた。

 わたしも、ルベルを見る。恐らくローズライトさんは、ルベルが操られているかどうか見たんだと思う。

 今のルベルは、通常運転。虚ろな目はしていない。


 ローズライトさんがすぐに戻るということなら、この場から動かない方が良いんだと思う。

 では何をするか。

 そう考えたときに、可能性を潰しておくことにした。


「スズラさん。聞きたいことがあるんですけど、良いですか」

「何でしょう?」

「亡くなられたご両親は、何の魔法師だったか教えてもらえませんか」

「別に構いませんが……父は土、母が水です」

「っ! 差し支えなければ、お母さんが亡くなった年を伺っても!?」

「母は三年前に亡くなりました」

「三年前……」

「あの、母の死が何か?」

「あ、いえ、ごめんなさい。教えてくれてありがとうございます」


 スズラさんの反応からするに、スズラさんのお母さんの死を認識しているだけという感じ。もしくは、死因が強烈で記憶に蓋がされてしまった状態か。

 スズラさんの記憶の仕方は気になるけど、それよりもまた被害者かもしれない人を発見した。

 三年前の、水の魔法師の被害者だ。







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