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第050語 廷臣法官長の逗留


 冤罪事件の解決後。

 井戸の水が復活した後に吹っ飛んでいった滑車が、不運にもわたしの家に直撃していた。

 幸いにも寝室は無事だったから一晩過ごせたけど、台所は壊滅状態。オノマトペ魔法を使えるけど、鍋を置く竈が壊れていたら料理もできない。

 一晩空腹に耐えながら明かした、翌日。また騒動が起きた。


 ギールさんの自殺。それは、わたしの冤罪事件以上に村内を騒がせた。

 ギールさんは一度も虚ろな目をしていなかったと思う。でももし、昨日の騒動が誰かに操られていたとしたら。

 そもそも、どうしてギールさんだけ操られていないと思える? 普通に考えて、ギールさんだって操られているはずだ。

 じゃなきゃ、あんなに明確にわたしを狙い撃ちなんてしないと思うんだ。


 ……わたしは余所者だけど、村に住んで長いし。


 勝手に考えて勝手に落ちこんだわたしは、外に出てルベルの家へ行く。


「ルベル、おはよう」

「ああ、アンネ。来たか」


 ルベルの家を訪ねると、さっと素早く中へ入れられた。奥にいたおばさんも、心配そうな顔でわたしを見ている。


「どうしたの?」

「いや……」


 ルベルが言い淀んでる。よっぽど、悪い内容なのかな。

 首を傾げていると、おばさんが近くに来た。


「ねぇ、アンネちゃん。その……」


 おばさんが何かを言おうとしたとき、玄関の扉が叩かれた。おばさんが対応する。訪問者は、ローズライトさんみたいだ。

 おばさんに呼ばれ、玄関へ行く。


「アンネ殿。正直に答えていただきたい。昨夜はどこに?」

「どこにって……普通に、自分の家ですけど」

「それを証明する人間は」

「いません。一人暮らしですから」


 ローズライトさんは、眼光鋭くわたしを見る。

 さっきの質問内容といい、睨まれていることといい、もしかしてわたし、疑われてる?


 ……はっ。もしかして、ルベルやおばさんにも? 二人の反応から、村のみんなにも?? それは、悲しいな。


「……ギールさんは、自殺だと噂ですけど」

「死因は、自殺だ。それは疑い用のない事実」

「なら、どうしてわたしが疑われているんですか」

「舌を噛み切るというのは、生半可な覚悟ではできない。それならば、そうさせられたのではないかと考えている」

「わたしが、何か仕掛けたと?」


 昨日の騒動を考えると、疑われるのはわからなくはない。

 冤罪なのに処刑されそうになった。ギールさんを恨んだわたしが、って考えたんだと思う。


「アンネ殿は魔女だと噂がある」

「……首都から来たテイシンホウカン長様ともあろう方が、根も葉もない噂を信じると?」

「害をなす魔女であれば、私は廷臣法官長として裁かなければいけない。朝廷に仕える、司法を司る役人の長だ。裁定権も与えられている」


 一瞬、なぜそんなことを言われたのかわからなかった。でもすぐに、わたしがローズライトさんの職業を理解していないと判断されたのだと気づいた。


 ……嫌味に、真っ向から正論を叩きこんでくるなんて。むしろ、逆に嫌味かな。


 ローズライトさんはきっと、自分の仕事に信念を持って取り組んでいるんだと思う。わたしの嫌味に対して、目をそらさず真っ直ぐに見てきたから。

 わたしは、不法侵入をした。だから負い目があって、真っ直ぐに返されたローズライトさんの目を見れない。


「目をそらしたな。何か、思い当たることがある証拠だ」

「……」


 わたしとローズライトさんが話していると、おばさんが心配そうな顔をしていた。

 確かに、わたしには負い目がある。でもこうして真正面からぶつかってくるようなローズライトさんなら、村の問題を解決してくれるかもしれない。


「……ローズライトさん。お話したいことがあるので、わたしの家に来てもらえますか」

「断る。例え容疑者といえど、淑女の一人住まいの家に訪問はしない」


 堅物。


 思わず、口に出しそうになった。

 きっぱりと言ってのける様は、いっそ清々しい。隠し立てすることなく、容疑者って言ったし。


「……廷臣法官長ともあろう人が、そんな対応で良いんですか?」

「どういうことだ」

「わたしが村の異変に関する重要な証拠を持っていたらどうするんです? 女性の一人暮らしだからって行かないのは、職務怠慢じゃないですか」

「なるほど、一理ある。だがしかし、淑女の一人住まいに男が大勢で押しかけるのも」


 ローズライトさんの中で、わたしの家に来ることは決まったらしい。

 こんな話をしていたらルベルが一緒に行くと言いそうなものだけど、何も言ってこなかった。ちらっと確認したら、虚ろな目をしてぼーっと床を見つめている。

 ルベルのためにも、早く村の問題を解決しないと。


「家の中に入らなければ、問題ないですか」

「どういうことだ」

「まぁ、ローズライトさんの意見を伺いたいのは本当なんです。でも、それは家に入らなくても確認してもらえます」


 家の裏側に来てもらえれば。そう伝えると、ローズライトさんも納得してくれた。

 部下の人達は、現在村の中でギールさんの情報を収集中。さっと見て確認すれば問題ないと判断したのか、わたしからの情報提供をローズライトさんだけで受けるらしい。







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