第049語 廷臣法官長の裁き②
ローズライトさんは、その辺に転がっていた小石を拾う。そして、その小石に何か唱えた。
ただの小石が、緑色に変化する。小石の周囲に、極小の竜巻が見えた。
「このように、魔石は作り出すことができる。市販もされているが、このような魔石を見たことは?」
ローズライトさんが、この場にいる全員に問う。わたしを含め、ほとんどの人が首を振ったり傾げたりした。
ギールさんだけ、唇を噛んで目を見開いている。
「ギール殿。どうやら見たことがあるようだな」
「な、ない! そ、そんな便利なものがあったら、もっと楽な生活ができる」
「では、ギール殿は魔石を見たことも、触ったこともないと?」
「そ、そうだ!!」
ギールさんの対応を見たローズライトさんは、何かを唱えて自身の周囲に風を纏った。
そして突然、井戸の中へ飛びこむ。水飛沫も上がらないその所作は、この場にいる全員の目を奪った。
少しして井戸から浮上したローズライトさんは、全く濡れていない状態で赤い石を持って周囲に見せる。
赤い石は、手の中に入るぐらいの大きさ。
「これは火の魔石だ。用途は竈に火をつけること。ただし、水の中に入れると一時的に蒸発させることも可能だ」
ローズライトさんの発言を聞き、周囲がどよめく。
そのどよめきの中、ローズライトさんはまた何かを唱えた。
すると、緑と青のふわふわとした線が、ギールさんに伸びていく。そしてギールさんの周囲をぐるぐると回った。
全員の視線が、ギールさんに集まる。
「魔石は、使用者の痕跡を刻む。この火の魔石は、ギール殿が使用者と示した」
「なっ……そ、そんなわけは!? 痕跡なんて、水に浸かれば……っは!」
発言した後で口を塞いでも、もう遅い。
「廷臣法官長が命じる。ギールを捕らえろ」
「違う! 俺は、俺は……」
ギールさんが、どこかへ視線を向けた気がした。それが村長さんだったかどうか確認する前に、ローズライトさんの部下の手によってギールさんは捕らえられた。
「偽証されていたことが判明した。よって、この場、この時より井戸涸れ事件の犯人をギールとする」
わたしは、これで無罪放免。
わたしを罵っていたり攻撃していたりした人達は、別途相応の罪に問われるみたい。
筋骨隆々の二人はわたしを解放し、魔封じの首輪も外してくれた。代わりに、ギールさんに首輪がつけられる。
「これにて一件落着! 解散!!」
号令がかかり、集まった人達はビクリと一度身体を震わせて井戸の周りから散っていった。
ローズライトさんが、村長さんの所へ行く。
「冤罪者の命を救うため、先んじてやってきた。護送馬車が到着するまで、犯人拘留の必要性がある。よって、広場の牢を使用するための許可を」
「えぇと……広場では、犯人が暴れたときに村に被害が出るでしょう。あたくしの家の地下に、牢がございます。そちらではどうでしょうか」
「了解した」
ローズライトさんが、村長さん達と一緒にギールさんを連れて行く。
そして残されたのは、わたしとルベルの二人。
「ルベル。ローズライトさんを連れてきてくれたんだね。ありがとう」
「いや……おれには、それぐらいしかできなかったから」
「そんなことないよ。テイシンホウカン長だなんて、そんなすごい人と知り合いってだけですごいよ」
村を出ていた三年間のときに、出会っていたんだと思う。
ルベルは勉強をするために外へ出ていたみたいだけど、こうして助けてもらえたから、人と人との繋がりは大事だなと思った。
村長宅の地下牢へ入れられたギールさん。その日の夜の内に、舌を噛み切って自殺しちゃったらしい。




