第048語 廷臣法官長の裁き①
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計画のために、水属性の魔法師が必要だった。若ければ若いほど、その力は大きい。
ある日。村一番の魔法師が自らその身を差し出した。その村人はとてもわかりやすく、暗示もかけやすかったのだが。
欲望には忠実に。ただし……。
村人の欲望が、強すぎた。まさか、廷臣法官長を連れてくるとは。
(何か……何か、この場を打開する策は……)
袖の中に入れた右手で、左の手首を強く掴む。それは力強く、袖の下に指の形がはっきりとわかるほどの痣を作った。
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わたしに名前の呼び方を注意したローズライトさんは、くるりと身体の向きを正面に戻した。
「私は首都より派遣された廷臣法官長のローズライトだ。今この瞬間より、密告のあった内容を捜査する!」
ローズライトさんの低いけどよく通る声は、広場に集まった人全員を萎縮させる。
もちろん、わたしも。
ローズライトさんの部下と思われる人達が、わらわらと広場に集まってきた。魔力切れを起こしていた村のみんなも、一時拘束されていく。
ローズライトさんとの実力差を感じたのか、スマザさんは彼が目の前まで来て腰を抜かした。牢屋の鍵を出すように言われ、すぐに差し出している。
牢屋の鍵が開けられた。ローズライトさんはすぐにわたしの元へ来てくれたけど、動きが止まる。何をしているんだろうと思っていたら、部下の二人に指示を出した。その二人は他の部下の人とは違って、筋骨隆々の人達で、ローブを着ていない。
ローズライトさんの指示を受けた部下の人達が、わたしを磔台から解放する。その後は、魔封じの首輪なるものを着けられ、両手も拘束された。
縄を引かれ、牢屋の外へ出る。
「これより、井戸を涸らした犯人を特定する。村長及びその息子、その他関係者は私と一緒に現場へ来るように」
わたしは縄を引かれ、南東部の井戸へ連れて行かれる。
ギールさんは、と思って捜すと、ルベルに肩を掴まれていた。友好的なように見えるけど、目は笑っていない。今のルベルは、虚ろな目ではなかった。
村長さんやスマザさん、その他関係者。
ローズライトさんの呼びかけは、結果としてその場に集まった全員が移動することになった。ローズライトさんの部下の人達もいるから、なかなかの大人数の移動だ。
公開処刑の場にはいなかった村の人達も、なんだなんだと集まってくる。
村に娯楽はない。だからたぶん、村にいて急を要さない仕事をしている人も集まってきていると思う。
わたしやルベル、ギールさんや村長さん達は人だかりの中心にいる。
今も十分な水量があるとわかる井戸の前に、検証のための人員が集合した。
「では、現場検証を始める。まず、密告の内容としてはこうだ。突然井戸が涸れ、それがこちらの女性を犯人だと証言する者がいた。証人、前へ」
「おう、俺だ。ギールだ」
ギールさんは自信満々に出てきて、腕を組んで胸を張る。
「ではギール殿。当時のことをもう一度証言するように。また、発言には嘘偽りがないと、宣誓を求める」
「おう。俺ことギールは、嘘偽りを言わないと宣言する! 俺は見たんだぜ。アンネが通った後の井戸……つまり、この井戸から白い煙が出ていたのを!」
意気揚々と発言するギールさんの言葉を受けたローズライトさんは、ギールさんを睨む。
「ひっ」
「私は伝えた。当時のことをもう一度証言するようにと」
「だ、だから、アンネが……」
「報告された内容は、犯人は女性だけではないと聞いた。虚偽報告は罪となる。偽証罪は重い。捜査する上で偽証が明らかとなった場合、三ヶ月以上十年以下の懲役を」
「あ、ああ! えっと、そう、言い間違いだ! アンネとルベルが通った後、井戸から白い煙が出たんだ!」
証言を力強く主張するように、ギールさんは拳を握って両腕を引き、前のめりになるように叫んだ。
ローズライトさんは、さらに眼光を鋭くする。
「言い間違い? それは、自分で間違いを認めるということ。それすなわち偽証」
「き、記憶違いだ!!」
「……。では、他に証人がいれば前に出るように」
ローズライトさんが促しても、誰も出てこない。
それもそうだと思う。わたしの家に押しかけて来たときも、明確な言葉を言っていたのはギールさんだけだったから。
「証人だったギール殿の証言が曖昧のため、次の段階へ移行する」




