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日本の四季を異世界へ! ~オノマトペ魔法をもらってスローライフを送ろうとしたら、辺境の村が独立自治区として観光地化した件について~  作者: いとう縁凛
春の章

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第022語 それぞれの主張


 村の人口は三百人程度。とはいえ、そこそこ数は多いため、広場を中心にざっくりと分けられている四区画にそれぞれ代表者を決めた。

 今日聞くのは、広場から見て南東部の若者代表のリダロさん。風魔法師だ。


「やっぱ、時代は常に新しい風を求めてるっしょ。何もないが村の売りとは違うっしょ」

「確かに。自然があることは良いことだと思いますけど、それだけじゃ物足りないかもしれないですね」

「そうっしょ? おれっち考えたんよ。村興しの内容を!」

「それは、どんなものです?」


 問いかけると、リダロさんは広場に落ちていた小石を使って、地面に壮大な計画を描き始めた。その設計図によると、どうやら村の中に観光場所を作っていくみたい。

 巨大な風車、何かの像。風の魔法みたいなものが描いてある所は、魔法師闘技場みたいな感じかな?


「魔法師の村だから、他にはない強みかもしれないですね」

「でも、どれを作るにしても予算がすごいことになりそうだな」

「ほらっ。そこは未来の村長ルベルの力でちょちょいっと」

「いやいや。案として覚えておくが、まだなってもいない権力を求められてもな」


 リダロさんがルベルと盛り上がってる。

 ルベルの言う通り、予算のことは考えてなかった。今の村は、成人の儀を五年に一度行うくらい、財政難だ。

 村の開拓よりも先に、人が来てもらえるようにした方が良いのかな。


 ……ん? この村は塩獣狩りをしているよね。余所から来た祭司様だって知ってたんだ。塩獣って、そんなにお金にならないのかな。


 リダロさんと話し終えたルベルに、塩獣のことを聞いてみた。

 曰く、村で賄えるものは少ない。塩獣のお肉や素材を売ったとしても、代わりに色々と買う。結果として、村は裕福にならないみたい。


 村を目的として観光客を呼ぶ。

 それよりも先に、もっと村独自の自給率を上げないといけないのかもしれない。

 人が来たとして、その人達に提供できなかったら悪い噂が立っちゃうもんね。


 スローライフのため、理想的な村作りのため。やるべきことはたくさんある。

 今、目の前にも。


 わたしの行動を監視しているのか、スマザさんが堂々とわたし達を見ている。

 将来、スマザさんが村長になったら村の未来はないんじゃないかなって思う。正確な年齢はわからないけど、四十代中頃で村長さんの威を借りてばかりの後継者。

 別に、親の力を借りること事態は、悪いことでもない。ただ、自分の力で何もしようとしないことが悪いと思う。


 ……本当に、ルベルが村長になったら良いのに。


 ルベルは顔が広いし、何より若い。健康的な身体を保っているし、時間を無駄にしない。


 どうなんだろうなぁ。わたしが傍にいることでスマザさんが変わるなら、世話役を引き受ける??


 現実問題、村長さんがいる限りルベルが村長になることはないんだと思う。

 もしかして今年になってよく姿を見せるようになったのは、村長さん的に今後のことを考えての行動なんだろうか。いずれ村長となるスマザさんを村のみんなに披露する、みたいな。


 ルベルと次の場所への移動中、スマザさんはずっとわたしのことを見ていた。

 そんなスマザさんを見て、やっぱり次期村長にはなってもらいたくないなぁと思う。




 村の未来を悲観しながら向かったのは、北西部の中高年以上代表のオガックさんとカトコさんご夫婦。


「なんだ、また来たのか」

「オガックさん。以前聞いた通り、村の開拓には反対ですか」

「ああ、反対だね。私達は、リヴィエリ山の雪解け水やそれが染み出た土を使っている。変に手を入れて、それらが変質したらどう責任を取るんだ」

「そうよ。仮に変質しないとしても、道を整備するために家を出ろですって? 長く村に住んでいる私達に死ねと言うのかしら」


 オガックさんとカトコさんは、ご夫婦で陶芸をされている。村の外で食器を販売しているみたい。

 そんなご夫婦の家がある場所は、ざっくり区分けされた部分の上辺り。道を作るとしたら気になる位置だ。


「お家に関しては、新しくする予定です」

「ふざけるなっ。この場所は、私達の歴史が刻まれている。壊したらそれが全てなくなるだろうがっ」

「オガックさん。お怒りはわかりますが、その手を下げてください」

「ふんっ。私達の半分も生きていない若造に、私達の世代の苦労はわからないだろうね」


 怒りで手を上げたオガックさんを、ルベルが止める。オガックさんも身体を鍛えているように見えるけど、ルベルの方が若い。

 純粋な力では叶わないと思ったのか、すぐに引いてくれた。


「さぁさ、帰っておくれよ。私達は忙しいんだ」


 カトコさんにせっつかれて、ご夫婦の家を追い出されてしまった。


「……まだまだ、難しいね」

「そうだな。この世代の人達は、家がなくなることを酷く嫌う。新しくなくていい。今のままで十分だと考えている人が多いから」


 若者側の主張も、リダロさんみたいなものが多い。どうせやるなら派手に。そんな方向性の話ばかりだ。

 中高年以上は、そもそも変わらない。変わりたくない。変わらなくても、今までやってきた。そんな主張がある。


「どうにか、できると良いんだけど……」


 ルベルと話していると、いつの間にかスマザさんがいなくなってた。

 ただ単に帰っただけなら良い。


 でも、何でだろう。

 何かが起きそうな気がする。







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