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日本の四季を異世界へ! ~オノマトペ魔法をもらってスローライフを送ろうとしたら、辺境の村が独立自治区として観光地化した件について~  作者: いとう縁凛
春の章

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第016語 将来設計


 狩猟祭の翌日。

 我が家にルベルがやってきた。今日は狩猟祭の次の日だから、塩獣狩りのみんなはお休みらしい。

 話があるというから、奥に案内する。


「それで、どうしたの?」

「その……アンネ。昨日、助けにいけなくて悪かった」

「なんでルベルが謝るの?」

「いや……その、さ。村長の息子に絡まれてただろ? おれだったらすぐに助けられたかもしれないと思って」

「別に、気にしてないよ。ルベルは狩猟祭を楽しんでいたじゃない」

「うっ……。そ、それはそうんだんだが」


 お祭りを楽しむことに、なんでそんな抵抗感があるんだろう。

 疑問に思ったけど、ルベルはみんなの『お母さん』みたいなものだから、揉め事があったら気になっちゃうんだと解釈した。

 みんなを気にかける姿が良いなと思って、わたしも手が届く範囲で真似してる。


「話って、それ? ルベルは真面目だなぁ」

「真面目とか、そんなんじゃなくて……」

「じゃぁ、なんぞ?」


 ルベルはわたしに何か言いたそうな顔をする。首を傾げて促してみたけど、内容が難しいのか色々と考えているみたい。顎に手を当ててわたしには聞こえない小声で何か言ってる。

 あまりにも長く考えこんでいるから、ルベルの中では今言うタイミングじゃないのかもしれない。


「ねぇ、ルベル。前にさ、ルベルの夢を教えてくれたじゃん? わたしの夢も聞いてくれる?」

「お、おう。聞くぞ」

「ありがとう。言葉の意味はわからないけど、スローライフをしたいって言ったじゃん? それでスローライフには何が必要かって考えたんだ」


 ルベルに伝える。わたしの理想とするスローライフを。

 辺境の田舎だとバカにされないような、村のみんなが笑顔になれるような場所に。

 村独自の文化みたいなものがあって、むしろそれを目的として人が集まるような場所に。

 自然を近くに感じられる村だから、その環境を活かして都市生活の喧噪から解放されるような場所に。


「抽象的なことばっかりなんだけど……どう思う?」

「良いんじゃないか! アンネが掲げた内容は、どれもこの村に合っている気がする」

「本当? 良かった……。それでさ、ルベルも将来はみんなを笑顔にしたいって言ってたじゃん? わたしと考えていることが近いと思うんだけど、具体的には何か考えてる?」

「具体的に……」


 ルベルは、なぜかわたしをじっと見る。

 首を傾げると、ルベルは少し顔を赤らめて視線をそらした。


「……おれは、一人の男としての未来も考えているんだ」

「うんうん。それで、その内容は?」

「おれの理想を傍で応援してくれる嫁と、家に帰りたくなるような可愛い子供が二人」

「良いねぇ、具体的だ! ルベルの理想を叶えるなら、それなりに力がある立場の方が良いよね。ルベルが、村長をやっちゃうとか!」


 ルベルが、視線を戻した。

 思わず目が合っちゃってびっくりする。


「……ルベルは、村長にはなりたくない?」

「あ、いや……。そうなった方が理想を追求できるなら、それはその方が良いと思ってる」

「そっか。わたしは抽象的なことしか考えられていなかったけど、ルベルの理想を叶えるためにはどんな村が良いかな」

「子供が誇りに思えるような、仮に村の外に出たとしても戻りたくなるような、逆に外で村の宣伝をしたくなるような……そんな、村が良いと思っている」

「良いねぇ、良いねぇ! ルベルの未来の子供ちゃんに自慢してもらうためには、どうすれば良いだろう?」


 自慢できる村。帰りたくなる村。

 それはどんな村かと考えていると、ルベルが前のめりになって机に手を置いていた。


「アンネ!! そ、その……理想の村はどんなものか考えるために、一緒に村を回らないか!!」

「い、良いけど……ルベル。なんか、勢いがすごいね?」

「あっ、わ、悪い」

「いや、良いよ。それだけ理想の村作りに力を入れたいってことだよね。そうと決まったら、今から行こうか」


 ルベルと一緒に、わたしの家を出る。

 そして理想の村のため、わたしはスローライフを叶えるため、今の村を知ることにした。







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