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日本の四季を異世界へ! ~オノマトペ魔法をもらってスローライフを送ろうとしたら、辺境の村が独立自治区として観光地化した件について~  作者: いとう縁凛
春の章

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第012語 スキルを知る②


 意気揚々とわたしができることを宣伝した。

 最初は村のみんなも喜んでくれたんだけど……。結果からすれば、需要がなかった。


 わたしのスキルは、効果時間がものすごく短いみたい。せっかく潤しても、せいぜい一時間程度。わたし以外の人には、あまり持続しないみたい。

 基本的に村では塩獣狩りで生計を立てているけど、一時間潤ったところで意味ないし。せめて半日とか、八時間とか持つんだったら、まだもう少し需要があると思うんだけど。


 何度も魔法を使っていて自覚したんだけど、わたしはオノマトペ魔法を使うときに鼻がむずむずするんだ。まるで、くしゃみをする前兆のような。それでいて、くしゃみが出ないみたいな。

 このむずむすがどうにかなったら、わたしのスキルは大きく成長するのかもしれない。いや、そうであってほしいと願う。


 むずむずする感覚は、今はどうにもならない。

 それなら、スキルの持続時間じゃなくて、スキルを使うことによって得られる結果の時間が長くなるようなことを捜そうと思った。


 村の中を歩き、みんなが魔法を使う様子を探る。

 その結果、次に挑戦してみるのは火魔法が良いんじゃないかと思った。

 火だったら、一度着火してしまえば消すまではついているはず。


 そんなわたしの考えを後押しするように、広場ではちょうど今日の夕食分の肉が焼かれ始めていた。

 野外の宴会はお肉がたくさん取れたとき、且つ、村の外へ出荷する分の余りが出たときに開かれてる。

 参加は自由で、参加する各人がそれぞれ得意とする魔法を使い、宴会を盛り上げるんだ。


 今までは、何もできないのに野外の宴会時に外出しちゃってお肉だけもらっていた。

 でも、今日からは。野外の宴会で一番重要な、焼き係を担当できるかもしれない。


 わたしは今度こそ成功させようと、気合を入れて焼き場に近づく。


「アンネ? どうした」

「ルベル。今日からわたしは、ただ与えられたお肉を食べるだけのお荷物じゃなくなるよ!」

「どういうことだ?」

「まぁ、見てて。たぶんできるから」


 焼き場の近くで飲料水を提供していたルベルに声をかけたのは、万が一何かあったときに対処してくれると思ったから。

 いや、推測だけど、たぶん大丈夫なんだけど。


 ルベルに声をかけたからか、他のみんなもわたしに注目してる。

 わたしはその視線を嬉しく感じながら、手作りされた鶏の丸焼き器の前に行く。そうして鶏の下にある薪に両手を向ける。


「【めらめら】!」


 わたしが発声するや否や、薪が物凄い勢いで燃え上がった。

 そう。火は出せた。だけど、その火力が強すぎる。


「肉が焦げる! 消化消化!!」


 燃え上がった火の手は丸焼き器を呑み込んで、わたしの身長を優に超えるほどの高さに。

 わたしがしたことなのに呆然とその火を見ていたら、ルベルに手を引かれた。


「アンネ! 下がってろ!!」

「ご、ごめ……」


 わたしの謝罪よりも先に、ルベルが消化に動いた。

 迅速に動いてくれたおかげで、被害は手作りされた丸焼き器と、鶏一羽分のお肉だけ。もしかしたら表面だけ焦げただけかもしれないと希望を持ったけど、残念ながら中まで火が通り過ぎて、とても食べられたものじゃなかった。


「ごめんなさい……」

「アンネは、火傷していないか?」

「うん。わたしは問題ない」

「そうか。それなら良かった。スキルを得て魔法が使えるようになっても、アンネは前みたいに、おれらが焼いた肉を美味しそうに食べてくれればそれで良いんだ」

「そうそう。アンネの笑顔は明日の活力剤だからな」


 ルベル他、みんなの優しい笑顔が、返ってつらい。気遣うような言葉が、わたしの無力感を増幅させる。


 でも、これ以上みんなに迷惑はかけられない。

 わたしは、笑顔を作った。


「ありがとう! それなら、そうさせてもらおうかな」

「焼けた肉を切って、持っていくから待っててくれ」

「うん……」


 せめてみんなの邪魔にならないように、焼き場から離れた。

 そうして渡されたお肉を、いつものように食べる。そしてさらに、お土産用のゴサイバの葉に包まれたお肉ももらってしまった。




 送ると言ってくれたルベルの申し出を断って、一人で家に帰る。

 今度こそ、わたしも村に貢献できると思ったのに。


 両手だったから、火力が強くなっちゃったのかな。

 それとも、そもそも『めらめら』はあの火力なのかな。

 検証したいけど、さっき見た燃え上がり方を見ると怖くてできない。


 水を出せるようになった。

 でも、自分が意図しない燃え方をした炎を見たら、冷静に行動できないかもしれない。

 そう、思うだけで、挑戦する意欲が消える。


 ……また、わたしだけ何もできなかった。


 七歳のとき、突然来たわたしを受け入れてくれたこの村で、何か恩を返したいと思うのに。

 村のみんなが喜んでくれるような何かをしたいのに。

 せっかく、何かできそうなスキルを得たのに、未熟なわたしは上手く使えない。


「……いや、ダメだダメだ。こんなんじゃ、いつまで経っても何もできないままだ。わたしに与えられた、新発見のスキル。絶対に、何かできるはずだ」


 ぱしぱしっと、軽く頬を叩いた。

 自分に気合を入れ直し、家路につく一歩一歩に力を入れて進む。


 帰宅して寝る支度をする。ベッドに入りながら、わたしは何ができるのかと考えながら就寝した。







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