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命名

外に出た二人。

男は女の手を引いて車がある駐車場までいくと迷わず車を見つけた。

人差し指を上に向ける仕草をすると、車のロックが解除される音がする。

女は驚いて車と男の顔を交互に見る。


「…何?私まだ鍵開けてないだけど?勝手に開いた?」


「俺が開けた。乗って」


 男は自分の車を扱うように助手席を開けて女に乗るように促す。

 男は運転席側に回って乗り込み、エンジンボタンを押してエンジンをかけた。

 

 女からしてみれば何が何だかわからない状況のまま車が発進する。


「ちょっと、シートベルト」


「気にするとこそこなんだ?」


 女の指摘に男は笑ってハンドルを握る。

 男はシートベルトをかけるそぶりはない。

 女は急いでシートベルトをかけて、男に問う。


「ていうか、運転できたんだね」


「僕にできないことはない」


 傲慢というか大層な自信というのだろうか。

 男の揺るぎない自分への信頼に、普通なら“ナルシストな男“と不快に思うだろう。

 だが、女は不思議と男への嫌悪感は湧かなかった。

 そして、“この人ならなんでもできそう“と、女は自然と思ってしまった。


 男は先ほどと同じようにオーディオのパネルをいじって選曲をしている。

 脇見運転も甚だしい。

 見かねて女はお願いする。


「頼むから、運転するなら前見て。またDJしたいなら私が運転代わるから」


「大丈夫、どっちもできる」


 男は女の忠告を気にもとめずに楽しそうに曲を選んでいる。

 女はヒヤヒヤしつつも窓の外へと視線を外すと、いつも通る道の景色が見えた。

 次の信号を左に曲がると女の家がある。

 もうすぐだから道案内の準備をしようと女が思っていると、車は減速して左折した後、そのままノロノロと進む。


 驚く女をよそに、男は女の顔を見ながら運転している。


「ちょっと、何?」


「ここら辺でしょ?君の家」


「そうだけど、なんでわかるの?」


「君の顔に書いてある。ここかな?」


 男は家の前の駐車場に車を停めた。

 いつもの家の前の風景が目に飛び込み、女は驚いて固まる。


「あなたサイキック?魔法使い?」


「違うけどそんな感じ。降りるよ」


 男は先に車を降りて玄関へ向かう。

 女は慌てて車の鍵を閉めて男の後をを追った。


 男は女を待つ前に、先ほど車の鍵を開けた時のように家の鍵も開けた。


 その瞬間をしっかりと見た女は、先ほどの件も自分の見間違いではないことに気づいた。


「なんで、鍵開けられるの?さっきの車も、家も」


「簡単だよ。ヒョイってやれば」


 男は驚く女を気にすることなく家の中へと入っていくと、家の中から野太い悲鳴が上がった。

 まずい。女は忘れていた。

 家にはルームシェアをしている友人がいることを。


 女も慌てて家の中に入るとカオスな光景が広がっていた。


 リビングでパンイチで胸元を隠して立っている友人と、ソファに座って足を組んで笑っている男がいた。

 友人は女の姿を見て野太い声で叫ぶ。


「ちょっと(あきら)!どういうことよ!?誰なのこの男!?」


「なんだ、君、男と同棲してたのか?しかもオカマ。愉快な暮らしをしてるんだな」


 驚いているオカマをよそに男はケタケタと笑って楽しんでいる。

 晶は頭がついていかず、呆然とした。


「僕は喉が渇いた。何か飲み物を出してくれないか?」


 男に声をかけられて我に帰った晶は、三人分の飲み物を出してみんなでリビングのソファに腰掛けることにした。


 男は出された飲み物を口にする。


「おいしいね、なんて紅茶?カモミール?」

 

「そうだけど…そんなことより、あなたは何者?」

 

「ちょっと晶!誰かも知らない人を連れてきたの!?」

 

「大丈夫、君と僕はもう友達。あなたもね」


 男は慌てるどころか当然のように“友達“宣言をした。

 それが気に入らないオカマは取り乱す。


「誰なのよ!?アンタ!晶ちゃんのストーカー?!」

 

「ストーカーじゃないさ。僕はただの、」

 

「ただの?」

 

「なんだろうね?」

 

「ちょっと!ふざけないでよ!」


 オカマを揶揄う男。

 晶は盛大なため息をついて場を取り仕切る。


「ちょっともう夜だよ!?静かにして!情報を整理しよう。私は紫水晶(しすいあきら)。彼は四戸凛太郎(しのへりんたろう)。私たちはここでルームシェアしてるの。あなたは?」


「僕は神様。月の神様だよ?」


「アナタ私たちを馬鹿にしてるの?神様なんているわけないでしょ?!」


 凛太郎と呼ばれたオカマはプンスカ湯気が出そうなほどにご立腹だ。

 だが、神様だと名乗った男は至極真面目な顔で凛太郎を見つめる。


「嘘じゃない。だって君」


 自称神様が何か言おうとした時だった。

 凛太郎は神様の口を塞いだ。


「真面目にしなさい!どうせ晶がまた可哀想な人がいたって拾ってきたんでしょ!?神様には恩義というものがないわけ!?いいわ、アナタがそのつもりなら私が勝手にアナタの名前を決めるわよ?」


 (一番ふざけてるの誰よ)

 晶はそんなことを思いながら凛太郎が何を言い出すのか見守る。


「アナタは今日から“ルナ“よ!」


「ルナか、いいな。素敵な名前をつけてくれてありがとう」


 神様は名付けられた名前が気に入ったらしい。

 ルナは凛太郎とカモミールティーで乾杯した。

 

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