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契約

目が覚めた時の状況を軽く示しておこうと思う。

手:リールに二つとも後ろで縛られている。

足:これでもかというほど厳重にロープで巻かれている。

ギーシュ:相変わらず草の中で眠っている。

いや、これどう言う状況なんですか!?

ちなみに、周りにはおそらく光魔法製だと見受けられるナイフをちらつかせた彼女の仲間たちがいる。そして、下には同じような剣が折れて転がっている。

「おはようギーシャ。やっと目覚めた」 

「その…私の捕縛をといていただけますか?」

力関係をとっさに悟って敬語を使う。

「ええ」

といってもほどかれたのは手だけ。そして、目の前に書類が突きつけられる。

「これにサインして」

内容は…

ギーシュとギーシャは冒険者リールに従え

そう書いてあるだけだ。

「内容はシンプルだけれど、血判を押すから正式な書類よ。」

確かに紙の端に一つ押されている。血判…だよな?

血が少なすぎてわからない。

「痛かったんですか?」

「いや…。私の皮膚が頑丈すぎて…その血でも頑張ってだした」

周りに折れた光魔法制の剣が転がっていることの理由がわかった。

「試していいですか?」

主に刃を向けることは、契約後ならできない。今のうちに荒唐無稽ともとれる話を理解したい。

「はぁっ!」 

パリン

一応剣技もできるはずなのに。あれ?あれれれ?

切れたのは剣の方だった。っ!?

「かたっ!ボロっ!」

「リール様の作られた剣をボロいとは失礼な!試し切りします?」

「あ、ああ…。」

先ほどよりも弱く、残った歯をスーッと自分の手に走らせる。

激しい痛みが走り、朱色の線が手に浮かび上がる。

「いった!!」

「『馬鹿だねえ。リールの作った剣なんだから痛くて当然だよ。下手したら手なくなるよ。』だ、そうです」

いや、なぜ猫語を理解して伝えられる!?というか痛いっ!冷静キャラなはずなのに、痛くて痛いっ!

「うわぁ!」

「うるさいですねえ。『我、七柱の神の一柱、光の女神に助力を請う。我にたぎる力を癒しと創生へ変化させ、我が望みを叶えたまえ。』」

痛みが和らぎ、みるみるうちに傷が塞がっていく。あのリールとか言う少女だけでなく、こちらの…確か、ルルだったか?ルルも相当魔法に長けている。と言うか、光魔法を持っているだなんて、どこまで希少なんだ。

そして、この剣が相当有能であることと、リールの皮膚が硬すぎることがわかった。

「まあ、そんな感じで、部下になれ」

部下になれ、のところだけ表現し難い威圧感を感じた。怖い、本能的にそう感じた時だった。

「今のやつを見ていて、あなた達には歯向かうべきではないとわかった。書類と刃をくれ。」

見ると、書類にはさっきのが垂れて私の分の血判はすでに押されている。あぁ。これから大変そうだ。





「新しい部下の誕生を祝って!かんぱーい!」

ちょっと脅迫になっちゃった気もするが、新しい有能な魔法使いと剣使いをゲットした。あれから帰ってきた私たちは、ギーシュとギーシャに用があるときは呼び出すからその時に働いてくれればいい旨をつたえ、彼らと別れた。邸で部下、などと極秘自公のお祝いはできないので、今はお爺のもとで遅めの昼ごはん兼乾杯中だ。長時間の抜け出しに、ジェリーは見て見ぬフリをいつもしてくれている。

「ミルクレープ、美味しいのぉ。」

「やっと使える手駒が増えてきましたか…。早くお嬢様の素晴らしさを伝えなければ!」

「あの二人は有能そうねえ」

「リリが後半変なこと呟いているけれど、大事に使おう。そうだ、昨日ギーシュとギーシャについて調べるようにジュロンに頼んで、っていうのやってくれたかしら?リリ」

「はい、場所も決めて伝えていたので、そろそろ来るかと」

噂をすれば、だ。

「拝啓、親愛なる主君様」

んん?なんの真似かな?

「とにかくへりくだれとリリ様に言われたのでござり候」

あ…うん。へりくだり方絶対間違ってるよ。これ

「普段通りで」

満足そうに頷いているリリには悪いが、私は普通の部下がほしい。こんな濃いメンツいらんっ!

「ええと、はい。ギーシュとギーシャの情報ですね。」 

ギーシュ

炎の魔力をもつ。魔法適性は低い。男爵家の末っ子、八男だったが、実家は対して実力や金があるわけではないことと魔道士適性のなさより成人してからは平民へ下り、今は一流冒険者として名をはせる。陽気さと豪快さが特徴。

「これらの情報は、居酒屋で彼が泥酔しているときに女装して油断させて取り出したものです。しかし、どの男爵家かわからず…。炎なのでおそらくウラン男爵家かと…」

「ちょっとまって!?ジュロンの女装!?なにそれ?見てみたい!!!」

「ま、また後日…」

めっちゃ楽しみな用事ができた。

「対してギーシャは…」

ギーシャ

土の魔力をもつ。どこかの貴族の庶子。

「すみません、これしかわからなくて…」

「十分。これはどこで?」

「彼は油断も隙もない人だったので、彼に関するデータをギルドの書類から探したところ…」

「いや、ちょっとまって!それ、職権濫用罪とか…」

「大丈夫ですよ。いざとなったら公爵令嬢レイティーンとしてなにか寛大なご処置を。そうすればなんの罪もなくなりますよ」

貴族社会こっわ!

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