冒険者リール
「お爺ぃ!スイーツ持ってきたよぉ!王道のショートケーキ!」
おじいさん教会では長いし、なんかお爺さんを崇める教会っぽくなっちゃうので、お爺と呼ぶことにした。レベル騒動の翌日、私達は教会へまた来ていた。
「おぉ!はぁ、久しぶりの生クリーム…。」
お爺の目が潤んでいて面白い。ジェリーはショートケーキを持って出かける私たちから、何かあると感じたようだが、あえて突っ込まないでくれた。ちなみにここでは私はお嬢様言葉を使わない。使わなくても怒られない、唯一のリラックスできる場所だ。
「ジュロンは?彼、公爵に寝返ったの悟られないように同じ家に住み続けるからここで集合にしたんだけど」
ってあれ?祭壇に供えたショートケーキがなくなっている。
「はっひひへ、ひょっほはっへへほひっへひはほ」
本当にお爺、ケーキ食べられるんだ…。
ごくん
「うまい!」
「よかった…。で、さっきなんて言ってたの?」
「うん?『さっき来て、ちょっと待っててと言っていたぞ』と言ったんじゃよ」
いや、なぜわからないの?みたいな顔するな!わかるわけないだろ!!
「レイティーン様、お待たせ致しました。」
ギルド員の制服に身を包んだジュロンが入ってきた。
「それじゃあ、冒険者登録の続きしますか!」
「しましょう!」
リリの目が輝いている。やっぱリリが戦闘大好きマンに見えてきてしまった…。
「また来るね!お爺」
「うむ、楽しみに待っておるぞ」
スイーツを、という最後の言葉は聞かなかったことにしよう!
ジュロンは念話ができないから、こうしてギルドに入って私たちが話せなくなってしまうと、意思の疎通ができないのが辛い。まあ、今回は冒険者登録だけだからいいか。
「こちらが冒険者カードです。」
Fランクと書かれたカード。
Fランク冒険者
リール
Fランク冒険者
ルル
リリは身バレの可能性が高いので、ルルとした。猫にはいらない。契約が済んだことには満足したが…
(F…ランク)最低ランクだ。
(このお嬢様に向かってFランクだと認定するとは、ジュロンもまだまだ懲らしめなくては…)
(ちょっ!)
私達のそんな念話に参加はできなくても空気を読んだようで、
「すみません、最初は全員Fで…。これは私だけで変えられず。リール様のご身分を明かせば正統にレベル付されるでしょうが、秘密ですし…」
そう、小さい声で話して泣きながら平謝りしてくる。
いくら色々チートだと言っても身長はそのままなので、外から見たらフードをかぶったなんかちっこいやつと、それに平謝りしている大人、という変な構図が出来上がってしまう。
慌てて受付のところにおいてあった紙に、魔力をインク状にして
【もういいから!周りに変な目で見られてるから!やめて!それよりクエスト案内して!】
そう崩した字で書く。紙は日本と同じ金銭感覚で出回っているのがいいところだ。
「はい!」
元気いっぱいに宣言して顔をあげた彼は涙の跡など一切つけておらず、今までのはきっとおそらく演技だ。
な、なんてしたたかな!!
きっと私達にこれ以上文句を言わせないための演技だったのだ…。
顔を少しだけ上げて唇を一瞬ニヤリと歪めたあと、またしおらしそうに案内し始めた。く、悔しいぃ!
「こちらがクエストです」
冒険者ギルドにはクエストと呼ばれる、冒険者への依頼がまとめられている一画が大きく作られている。もちろん自分で魔物を討伐してもその魔物にあった報酬が得られるが、クエストだと今求められている討伐内容がわかりやすい上普通の討伐より報酬があがり、保証までつく。
クエストにはランクが振られており、そのランクと同じかそれ以上なら特に大きな武具へのダメージや命の危険なく達成できるという目安。同じクエストに挑戦して、そのように防具が壊れたり命を失ったりしたパーティーが3組以上でた場合には、ランク付をギルドが間違えていたというギルドの過失としてその3組のパーティーには必要に応じたお金が払われる。自分のランクより上にも挑戦はできるが、その場合そのような保証はない。
そのようにジュロンが長々と説明してくれた。
「それでどうしますか?」
Fランクは薬草採取、街の雑用などが主だ。
雑用は身バレの危険があるから…。
薬草をここから結構遠い高原にまでとりに行くクエストを手始めに選んでみる。
「だいぶ遠いところですが…」
う〜ん。いいんだけど、話せないから伝わらないなぁ。
仕方ないので親指を立ててみる。前世のグッドサインはココでも通じるのか!?
「お、親指から火でもだそうとしていらっしゃるのですね!?おやめください!建物の中です!はい、受理しましたから!」
結果良かったけど、通じませんでした…。




