想像以上にお父様に嫌われてる…
「っと、つまり私はお父様に常に刺客を向けられた状態だったりする?」
「そういうことだ」
「ぴぎゃう!!」
「えっと…?」
「あぁお嬢様!」
どうやら想像以上にお父様に嫌われてたショックで気を失ってしまったようだ…。
さっきまでジュロンを看病してた、近くの宿屋のベッドでねてた。
「で、なぜ?」
「そんなのわかってるんだろ?」
「はあ、魔法が使えない私が憎いのね。」
その人が、片手で成人男性を運んだのだからジュロンだって泡を吹いて倒れるか…。
「そう、加えてこうも言ってた。『レイティーンの存在はリキャリニス家に末代まで遺る恥だ。彼女に不名誉な名の残し方をさせるのがかわいそうだと思うなら、幼いうちに殺すべき』と…」
「ちょっと、そんなの本人に言わなくてもいいじゃないですか!」
「いいのよ、リリ。知ってたから」
知らなかったけれど、似たようなエピソードがゲームでのレイティーンにもあった気がする。油断してたな…。まさか実の父が最初の敵だなんて…。 魔法が使えるようになったことを話せば父は私を狙わなくなるだろうけど、それだと脅威だとして国から狙われるかも…。私の周りに『普通』な魔道士いないから加減が分からないし、ここは隠しておこう。
「そうね、私は魔法を使えない」
「では、なぜ片手で成人男性を運んだり、冒険者登録をしに来たりできるんだ!?」
「え、ええと…気合い?」
「それだけでできるわけあるかぁ!」
盛大に突っ込まれてしまった。解せぬ。
「手荒な真似はしたくなかったのだけれど…」
できるだけ目を伏せて悲劇のヒロイン風に言ってみる。
「こうなってること、ちょっと楽しんでません?」
「ぎくっ」
「なんっか残念なんだよな…。そういう『ぎくっ』とかをいちいち言わなければいいのに」
「あ、よく言われます」
「直そう?」
「直りません」
「直そう」
「直りませんってば!」
全く、強情なやつも世の中には居るものだ。
自分のことを棚に上げて心のなかでつぶやくレイティーンだった。
「で、手荒な真似をしたくないんじゃ…?」
今の状態
・レイティーンは、青い炎をちらつかせて、真顔でジュロンに迫っている
・ジュロンはガタガタブルブル
・リリは「お嬢様をがいそうとしたんだ。覚悟の上ですよね?」鬼のような形相でそう言って大きな剣を構えている。
「こうなる可能性を少しでも危惧して、大剣の練習しといてよかったです」ともつぶやいている。怖い。
・カラメロは毛づくろい
「さあ、選べ。このまま公爵令嬢を襲った刺客として正統に処分されるか、私の秘密を知って部下になるか。部下になるなら従属の契約は必須だが…。2択のみだぞ」
私は元々日本の一般家庭の生まれなのだ。加えてこういうアニメを見漁ったオタク。こんなセリフを考えるなんてわけなかった。だがジュロンからしたら豹変具合が怖かったらしい。
「で、でもオレは公爵の部下だ!お前の刺客だぁ!」
錯乱したようで、胸元にまだしまっていたらしい銃を乱射する。私は大丈夫だろうが…
「リリ!カラメロ!」
あ…大丈夫だったわ。リリは銃弾を剣で気持ちよく縦真っ二つに切ってるし、カラメロは光魔法で壁を生成した。
「リリは剣の才能エグすぎ!んでもってカラメロは呪文唱えんの速すぎ!」
私は突っ込んだが、ジュロンからしたらありえないものだったらしい。口をあんぐりと開けてぱくぱくしている。
「なんなんだあの少女と猫は…。そしてレイティーンは避けてもいないのに無傷!ひいっ!」
ばたん
「あ〜あ、また気を失っちゃったよ、レイティーン」
「先ほどは錯乱して申し訳ございません!私も命が惜しいです。従属の契約なんかいくらでもします。お願いですからどうぞ部下に…。」
次は額を床に擦り付けて平身低頭の謝罪と懇願。私達の強さがよく分かったらしい。
「ええと…。顔を上げてください。部下にはしますが、従属契約用の魔紙がなくて…。かといって放っておくのも不安なので、我が家にこっそりついてきてくれません?」
「その必要はございません、お嬢様!こんなこともあろうかと、従属契約用の魔紙をお持ちしております!!」
「いや、日常的に従属契約いつすんの!」
思わず突っ込んでしまったがありがたい…
「お嬢様の素晴らしさに気がついた町中の人々が従属契約を求めてくるのではないかと50枚ほどいつもお持ちしております!!!」
ありがたくないかもしれない…
「まさか、こんなコトで使うとは思いませんでしたが」
憎々しげにジュロンを睨みつける。
「まぁまぁ、これからはリリの方が上ではあるけど同僚よ。仲良くしてちょうだい」
「ですがお嬢様!」
「命令」
「はい…」
従属契約
レイティーンを主とし、いかなる命令にも従い、主の命を最優先にし、誠心誠意仕えることを誓います。もし破れば天罰をも受けましょう。 ジュロン
魔紙に書かれた文言に、思わず眉間に皺が寄る。前世日本で過ごした身としては、いくら自分の身を守るためとはいえ、なんの害もなかった彼に強要するのは…。
魔紙は魔獣を原料とし、その文を現実的に可能な範囲でできるだけ実行する効力をもつ。しかし、
「助かったぁ」
「よく働いてくださいね!」
「なんか、悩んでるの?まぁ、皆納得してるしいいでしょ」
「そう、ね」そういってサインする。
「それで、私は何をすればよろしいのですか?」




