嘘…チートだ
砂埃が落ち着いたようだったので、もう一度完全に目を開けると、目の前には森ではなく更地があった。
「あはは、チートすごすぎるね(棒読み)。さあ、リリこれを癒して」
「で、できるわけないですよ」
「できるところまで」
「わかりました。本当にお嬢様は規格外なんですね…。『我、七柱の神の一柱、光の女神に助力を請う。我にたぎる力を癒やしと創生へ変化させ、我が望みを叶えたまえ。』」
あかちゃけてひび割れた土が徐々に潤い、短い草花が生えてきたと思うと、くるぶしくらいまでの高さになった。
「すごいわ!」
「本当にすごいよ、リリエッテ。ここまでの光魔法、私は創生メインだからできないもん」
「あ、ありがとうございます。でも治りきりませんでしたね。どうしましょう」
「私がやるわ」
「え、でもこれは苦手なのでは…?」
「チートの力見てなさい!『right』」祈りを捧げるかのように、両腕が自然に上がる。魔力がふわっと引き出されていくのを感じる。
草花が急成長を始めた。一気に腰くらいまで伸びて、急に木も生え、あっという間に周りの森と同じ、いや、その3倍は立派で植物が豊かな森へと変わった。
「すごい…」
「ふふっ。ありがと。チートって気持ちいいのねぇ。」
「レイティーン次は水とか色々また試すの?」
「あたり前田のクラッカー!」
「随分と古いネタを…」
「あれ?なんで知ってるの」
「前レイティーンが六十年くらい前のギャグだって言ってた」
「うわ、墓穴を掘ってしまった。穴があったら入りたい。よし、風魔法で穴を!」
「まっt」
「『『wind』」
立っていられないような暴風が吹き荒れ、さっき直したばっかだった森に半径十メートルくらいの大きな穴が開いた。
「あれぇ?手加減したのに」
「「どこが手加減!?」」
「これじゃあ入っても落ち着かないから、埋めちゃうわよ」
「土魔法?」
「うん。『soil』」穴は一瞬で埋まり、先ほど治癒した時ともまた違う様子でどんどん植物が生えてきた。蔓のようなもの、太い木、珍しい花。さっきよりも植生が豊かだ。
「はあ、水魔法と闇魔法はどうするの?」
「もちろんやるわ」二人が体に力をグッと入れて構えているのを横目に、
「『water』『dark』」
「いや一気に二つとか聞いてないぃ!」何やらカラメロが突っ込んでいるが、私は洪水というのを人生初経験かもしれない。立っていられないような水流に足元をさらわれ、ぐるぐる回る視界の端では黒いモヤに植物が侵食されていた。何分にも感じれれるような波がようやく収まったときには黒いモヤも消えていた。代わりに木もなかった。
「『soil』」本当に少ししか魔力を注がずにやった結果、木が周りと同じくらいまで成長するだけ(?)で済んだ。
[[本当に規格外な令嬢だ]]
レイティーン以外の心が一致した瞬間だった。
「ん?今なんか黒い影が見えなかった?」木の影に確かにいた。確かに居たのだが…
「気のせいじゃないですか」
「そうかもね。みんな、ここでの光景は秘密にしてね。そのためにジェリーを戻したのだから」
「「承知しております」」
「はあ、せっかくチート手に入れても、普通の公爵令嬢の暮らしじゃ扱う機会がないわよねぇ」
「しかし、お嬢様がそんな能力を持っていると知られても危険です。まだ味方が少ないうちは、悪用しようとする輩も出て来るでしょうし、何より国が放っておくとも思えない。」
「そうよねぇ。立場が固まるまで私の能力は隠すべきなのよねぇ。」
「国に縛り付けられて自由に行動できなくなるのはレイティーンの思惑からズレるよね」
「そうなのよね」
「あのさ、私思ったんだけど」
「「ダメです」」
「まだなんもいってないっ!」
「『あのさ、私思ったんだけど』でわかりました!よからぬことを企んでいますね!」
「っ!そんなそんな。私はただ平民のフリして冒け」
「お嬢様が冒険者ギルドに登録だなんて絶対駄目です!せめてもっと強くなってから…。あれ?十分に強いですね?ええと、他の強いお供ができてから…。あれ?カラメロも私もお嬢様の強さのせいで忘れられてますけど世間一般に見たら普通の成人男性より強いですね?」
「そう、そうなのよ!だから、大丈夫でしょ?」
「ダイジョブダトオモイマスあれ?」
「あ〜あ、丸め込まれちゃった」
リリはキツネにつままれたような顔をしている。少しかわいそうだが、私の自由な生活に多少の犠牲はつきものだ!
「よし、冒険者ギルドに行くぞ~!」
お〜!と続いてくれた人は誰もいなかった。悲しい
数日後、発注者が分からないようにして頼んでおいた冒険用の服が届いた。いくらなんでも公爵令嬢がこれを直接注文するのは無理があったけどいい出来だ。
レイティーンの分は全体が白で、角襟と胸元にファスナー付きでへそ出し、下はものすごく短い短パンに白いタイツ、靴が真っ赤でヒールが微妙についてるのが特徴だ。この服を頼んだらリリは はしたない!って叫んでたけど、公爵令嬢として分からないにはこのくらいがいいし、前世はこんな人いっぱいいた。足が出ていないことを強調して、ようやく許してもらえた。
リリのは丸襟の超シンプルな白いワンピース。さすがに物足りなかったから、私が勝手に腰回りのひだを出しておいた。
カラメロと私、リリのサイズに合わせて、最終的に光魔法の正体隠蔽のローブを作って羽織ったら準備完了。
「レイティーンは本当にすごいね。正体隠蔽効果付きだなんて、この国で作れるのレイティーンだけじゃないかな」
「そう?さあ、行くわよ!」
いちおう両親に囚われてる身としては、真正面から出ていくわけには行かない。
庭から回って、練習してある程度制御できるようになった風魔法で垣根の一部を吹き飛ばす。そこを潜り込み、外へ出る。簡単そうに書くが、レイティーン以外ならできないであろう。
「わぁ、初めて外に出た。」そこには中世ヨーロッパの貴族街風の、緑豊かで美しい風景が広がっていた。
「楽しんでいる所悪いのですが、公爵邸は高位貴族なため平民街は遠いです。急ぎましょう。」
「あ、それなら私、空飛べるようになったの」
「「空ぁ!?」」
「熟練の風魔道士しか飛べないのに…。いいですよ。先行ってクダサイ」
「いいえ、一緒に!」その途端ものすごい風が3人の体を吹き上げ、飛ばした。
「う、無詠唱でもこれだけなんですね…」
ゆっくりと三人が目を開けた先の看板には「冒険者ギルド」。
レイティーンの胸は激しく高鳴るのであった。




