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専属メイドと勉強会②

「ジェリー、よろしくね」

「はい、お嬢様。お嬢様はある程度学園の予習を終わらせていると伺いましたが、復習も兼ねて初めから学ばれますか」

「そうね、お願い。後、『ある程度』とか濁さなくても大丈夫よ。実技以外、でしょ?」

そう軽く笑いながらいうと、2人にギョッとしたように見つめられる。まあ、昔の私がこういうことはなかっただろうから仕方がないか。



「ええと、まずは、私たちの体について学んでいきます。私たちの体には核がありその核の周りを取り囲み、守り、体を動かすのが『体力』で作られた内蔵です。その周りには薄い『体力膜』が存在し、体の内部を守っています。そして、体の中から外にかけて存在する見えない鎧のようなものが『魔力』です。これは武器にも変形し、癒しの力や様々な現象にも変えることができます。」

「それで、その魔力を使った術を『魔法』というのですよね」

「そうですリリエッテ。日々のメイド業務で忙しい合間にも勉強しているという話は本当だったのですね。素晴らしいです。お嬢様の良きライバルになるでしょう」いい感じで勉強してるなあ。

「次に、神様の体の作りです。神様は先ほどの魔力の中に神力というものも持っています。」

「シンリキ?」

「神様は桁外れな魔法のほかに、神術も行使することができるのです。」

「なるほど〜」


そうして1時間ほど勉強した。

「少し休憩にしましょうか」

「「はい!」」

カチャカチャ。しばらく無言でカトラリーを動かし、おやつのケーキを食べる時間が続いた。


「紅茶の代えを持ってきますね」

「ええ、お願い」そうしてジェリーが退出していった。

「ねえ」そう言いながらベッドの淵に座り直す。。

「はい、なんでしょうか?」

「なぜ、リリエッテはそんなつまらなそうにいつも過ごしてるの?」

「つっ、つまらなそう!?」

「ええ、いつだって愛想よく笑ってはいるけど、目が笑っていないわ。全てを嘲笑しているかのような、逆に自分の意義がわからなくなって感情がほとんどなくなっているような…」いつも思っていた。なぜ彼女は形ばかりの笑みしか貼り付けていないのだろうか、と。

「ねえ、リリエッテ。私でよければ、たくさんの楽しいことを教えてあげるわ。いつだって優秀だったあなたの超えられないような壁にだってなってあげる。だから、そんなに私を避けないで。私をひとりにしないであげてほしい。今までのことなら、ごめんなさい。もう一度、私たちの関係を始める気には、なってくれませんか」そう言って頭を下げた。きっとこのことは、大人にもこどもにもカウントできない13歳という少しだけ物事を俯瞰できるようになった私が、この体に入ってリリエッテと同じ目線になり、また自身も優秀でつまらない日々を過ごしていたからこそ気づけた奇跡なのだ…。だから、どうか通じて欲しい。この言葉が私とあなた2人を繋いでほしい。そう心から思った。ゆっくりと、頭を下げていく。心を誠実に表現することは気はずかしい。今はとても彼女の顔を直視できない。そう感じた。



しばらく無言だった。刺すような沈黙に耐えきれなくなって、席から立って深く下げたままだった頭をゆっくりとあげる。

彼女の瞳は揺れていた。静かに、頬を濡らしていた。部屋のカーペットがゆっくりと丸いしみを広げていく。

「ずっと。ずっと寂しかったんです。理解してくれる人がいなくて。私には、利用価値しか、ないみたいで。私自身を、私だけをみ、てくれる人、ずっと、探し、て、…。」

ひっく、ひっくだった啜り泣きが大声のううぇ〜んに変わり、私は安心で立ち尽くしてしまった。そして、ひとしきり彼女は泣いた後、

「どこまでもついて行きます。いえ、行かせてください。」そう言って流れるような動作でひざまづき、敬愛を表す手の甲に頭をつける動作をした。この世界では大きな意味を持つ、一生に1人しかできない動作だ。ゆっくりと顔を上げた彼女は、今まで見たことがあるどの笑顔よりも美しく笑っていた。思わずその顔に見惚れてしまうのと、生涯に1人の主人に急に選ばれてしまったことに呆然としていると、部屋の扉が開いた。

「暖かいダージリンでございまっ!?」

「驚かせてすみません、メイド長。」

「あら、そうなったのね」柔らかく微笑むメイド長に、口をぽかんと開けて敬愛されている主人と、満面の笑みの従者はどのように映ったのだろうか。まあ、2人とも幼児であるため、可愛らしいながめだったのはいうまでもないが…。

「今涙でひどい顔していますよね?洗ってきます。」

「あ…」




バタン

扉を閉めてリリエッテは思う。ずっと、この満ち足りすぎていつも満足できない気持ちをわかって欲しかった。ずっと……。その願いが叶った喜びに思わず彼女を生涯の主人に選択してしまったが、それに後悔することは、一生来ないだろうとも思う。レイティーンはどこか変わった。前の彼女がああ頭を下げるだなんてあり得なかったはずだ。でも、それでいいと思う。それがいいと思う。私が支えたいのは今の彼女だし、中身に変化があってもレイティーンはレイティーンだ。死ぬまでついていこう、いや、死んで地の底を張ってでもついていこう。そう決意した。




ぞわりと悪寒が走る。なんだか狂信者ができてしまった気がするが、気にしないでおこう…。もしや、こんなに簡単に理解してくれたのも神のおかげ(せい?)かもしれないな。よし、神様ひどい神様ひどい!


今どこかで、僕たちは何もしてないよー、と聞こえた気がした。

「陶器姫の成り上がり」というシリーズも始めましたので、どうぞよろしくお願いします。

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