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お嬢様と勉強会〜リリエッテサイド〜2

疲れたようで熟睡している彼女がいた。

「まぁさすがにバレちゃうから落書きなんてしないけど…」それからは、毎晩ただ見るだけの仕事。その分昼間仮眠がとれるし、少し生活リズ厶が変化するだけだと思っていた。


この仕事を始めてどれくらい経った頃だろうか。

「さて、もう見なくてもバレないし帰っちゃおうかな〜」

と、その時

「ん、んう…」珍しく唸っている。

「あとから責任問われても困るし…。」私がいつものように彼女の天蓋をあけると、

「わ、たしは…だ…れ…?」そう繰り返し呟きながら汗でびっちょり濡れ、歯を食いしばるレイティーン。その気持ちは少しわかる。私もたまに自分の価値とか意義を疑問に思う。でも、彼女はそれともどこかちがかった。内側からは仄かに発光していて、なんだか今にも天に召されてしまいさそうだった。

「急いでメイドを!」そう叫び走り出したはず。…なのに、気づいたときにはベットの上でぼんやりとしていた。そうしてその日1日その報告をなぜだか思い出せず、また部屋に行って彼女の唸り声で今までのことも思い出す。走り出すとベットにまたいる。そしてまた報告を思い出せない…。それはもう何かの魔法にかかってしまったかのようにそれを繰り返す。魔法と言っても人ならざる、こんな事ができるなら神だとしかいいようがないような…。


そうしてひと月。使い魔が我が家へ来たりしたが、夜以外は特に問題もなく過ぎていった。今日は茶会で、本人たちは知らないが王太子とお嬢様の婚約の日だった。

「本日はお嬢様が王子様と顔を合わせるお茶会の日!」

「美しく着飾るわよ!」そう意気込んでメイドたちは随分早く彼女を着付け終える。さすが公爵令嬢 、そう絶賛したくなる美しさだったが、レイティーン以外の目がいっせいにこちらを向く。

「リリも同い年の貴族の娘!着飾ってお茶会へ!」

そう言われて私も化粧を施され、メイド仕事で少し荒れた手がわこらないように綺麗な手袋をはめられ、レイティーンと同じかそれ以上に豪華な装いにされた。レイティーンは唇をかみしめている。さすがに少し哀れになって、

「つける宝石を間違えたのではないですか?これだとどちらが主か分からなくなってしまいそうです!」そう無邪気な感じで言ってレイティーンに宝石をつけ直す。

「えっええ、そうね」レイティーンを助けたこと以前にメイドたちのやられたっ、という表情が私を愉快にさせ、ニコニコ笑っていると、「それで、何をしてほしいの?」とレイティーンが小声で尋ねる。「なにも」そう答えると、訝しげな顔をしながらも、少し笑って「ありがとう」といった。その少し尖ったような笑顔に、茶会への安心感が広がった。お嬢様は好きでも嫌いでもないが、きっと今日くらいは仲の良い主従に見せられる。


そんな浅はかな考えを反省したのは茶会が始まってすぐの、レイティーンが王太子への挨拶で立った時。突然ふらりと倒れ、どす黒い血をごぽりと吐き出した。そして、か細い声で唸る。「私は、だ、れ?」そう繰り返した。

「いつもの、夜だ…」そう困惑した私はなにもできずに呆然としていた。他の従者たちによって速やかに医務室から自宅へ運ばれ、レイティーンは助けられていたというのに…。きっと、仲がいいどうこうの前にふがいない従者に見えただろう…。


そんな回想を終え、横のお嬢様を見つめる。王太子が倒れたあの日以来彼女はなんだか変だ。普段なら転ばないようなところで自分の足を踏んで転ぶし、突然叫んだりもする。一度「ハイヒールなんかなければいいのよ!」と靴を脱ぎかけたときはコレが本当にあのお嬢様なのだろうかと疑問に思い慌てて止めたほどだ。そして、あのように毎夜唸らならなくなった。でも、この間庭先で気が狂い、自らをナイフで刺し殺そうとしていた彼女をみて、あぁ、やはりあの哀れな娘なのだと感じた。その後体があの夜のようにほんのりと輝き、静止していたが、しばらく経つとナイフをぽとりと落として、倒れた。なにが起こったかわからなかったが、無我夢中でメイド長を呼びに行く。こういうときは信用が築けていると便利だ。私がナイフを突き刺したと疑われることもなく、彼女はベットに運ばれていった。それから2週間もに及ぶ昏睡状態に陥った彼女。普通ならこのまま死ぬか大きな後遺症が遺るかと思われたが、ウソのように健康に回復していった。なんなんだろう。私の知る彼女ではなくなってしまったようだが、今のほうが見ていて楽しい。

「次は何をやらかしてくれるやら」意地の悪い笑みと幸せそうな吐息は淡く消えていった。

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