09
「絡んでおいて言うのはあれだが、変な遠慮なんかするんじゃねえぞ」
「しないよ、りんちゃんを困らせたくないからね」
「それにしても俺らが同じ存在を好きになるなんてな」
まあ、素直に頼ってこないところにむかついたときもあるが。
それと俺のは断っておいて貴一には背負われて帰ったというのも気になる。
つねったりして止めたのだって全部こいつのときだけ、調子が悪いときに離れたりしたのが悪かったか。
「でも、りんの考えは危なくもあるよな」
「どちらかふたりに恋をする、なんてね」
「ま、俺らは悪いことを企んだりはしないから見る目があったんだな」
「最初は平吉だけだったんだけどね」
「お前があの翌日にあっさりと動き出した時点で怪しかったわ」
だが、怪しいのはこちらも同じだった。
守ると口にしたからとはいえ、こいつがいるところにすぐに現れていたらりん的には怖かっただろう――って、りんに限ってそれはないだろうが。
まあ、違う人間だったらという話かこれは。
「最初から負けていたよな、だってりんが俺と仲良くできるよう行動しようとしていたしな」
「あ、そういうことの積み重ねではないと思うんだよ」
彼はなんとも言えない笑みを浮かべてからこっちの腕を突いてきた。
「俺が逃げたからか」
「うん、五分五分だったよ」
「そうか」
いまから言っても遅いが戦う勇気がないわけではなかった。
でも、自分が振り向いてほしいときに「上刈の方がいい」と嘘でも言えるこいつの強さに戦う前から負けてしまったというか……。
一応こちらもなんも影響を与えられないわけではないということは分かっていたが、なんか急に恥ずかしくなったんだよな。
「あ、来たね」
にしてもりんもよく気にせずに来られるもんだ。
ここは一応俺の家なのに、そうしたら当然のように俺もいるのにな。
「ん? なんか焼けてねえか?」
「外で遊んでいたらこうなった」
「遊んでたって、こいつはここにいたが」
「今日だけじゃないけどひとりでボールを投げていた」
はっ、この高い気温の中ひとりでなにをやってんだが。
その割には汗もかいているようには見えないが、とりあえず飲み物を飲ませておくことにした。
「りん、せめて名前で呼んでくれないか?」
「平吉、ふふ、名字も名前もふたりはちょっと似ている」
「ふっ、俺は刈る人間だがな」
だから俺からりんを守れという気持ちをこめて貴一を見てみた。
だが、残念ながら全く伝わっていなかったどころか、コップを見せてから「おかわりが欲しい」なんて言ってくれたから呆れつつ注いでおいた。




