病院編
それは。
Yahooのトップの記事に。
次の日の新聞の一面に。
デカデカと存在感強く、
『ワトソン--ついに泌尿器科へ! 新たなるワンナイト戦士誕生か!?』
そんなふざけたタイトルの情報が載るという、あり得ない妄想をしながら、彼は、臭いミミズを車から捨て、消臭し、泌尿器科へ行くべく、病院へ向かっていた。
臭い車はなんとか、臭くなくなり、新たな体臭コスモを身につけ、車を走らせる。
走っている最中に考える。
今後のこと。
未来のこと。
俺が泌尿器科へいってしまった場合のこと。
きっと町は大騒ぎだ。
多くの女性たちが押し寄せ町中は困難に。
トラブルは必至で、暴虐、略奪、喧嘩、惨劇。
相次ぐだろう。
つがねーよw
数多くの女性が、ワトソンという、魔法使い手前の26歳まで守り抜いた、DTを一斉に奪いにくる。
ワンナイト希望の女性。
セフレ希望の女性。
そして、奪い合いの争奪戦が起こることは目に見えていた。
みえねーよw
だからこそ、俺は、今日のこの日のために、そんな混乱がおきぬよう、誰ひとりとして、抱かずに、泌尿器科へも行かずに、DTフィールドを展開しつづけたのである。
病院へ向かう最中。
ISUZUのトラックが走ってあった。
あのISUZUの車は、組織――元職場の人が臨時で、派遣されISUZUにもぐり込み、俺を監視をするためのトラックなのである。
その後、工事現場を通りかかり、そこでは、青いヘルメットを被った、元パワハラ上司藤田の姿があった。
その時思った。
間違いない。
埼玉にいた組織の連中。
そして、多くの著名人や、スポーツ選手、現役、OB。
みんなこの町にいる。
この町に集合している。
俺のために。
よくよく思い出せば、萩本欽一、きんちゃんにがパチンコを打っているところを目撃していたり(妄想や幻覚)
鏡先生がガソリンスタンドで給油していたり。
オードリーの若林がポップンミュージックをやっていたり。
長州小力もどきが、ゲームセンターで遊んでいたり。
そんな町の状況だった。
そして、いろんなことを思い出し、妄想していると、とうとう、車は病院についた。
泌尿器科へついに。
ついに。
ついに
ついに。
ついに行くのか!?
妄想で。
狂気乱舞する多くの女性。
衝撃を受ける日本国民。
しめしめ……と思い、その後の混乱に無責任な思いで考えるアンジャッシュ渡部。
俺は、さぁいくぞ、さぁいくぞと病院の周りを周回する。
まだかなまだかなと。
みんな注目し、俺の動きを固唾を飲んで見ている。
そして、俺は、その後、車から降り、病院へと足を運ぼうとした。
しかし、ここからは、妄想であり、実際には足を運んでいない。
病院の玄関へ俺は向かった。
玄関先に。
多くの報道陣、マスコミ、メディア。
俺が病院に入る前に、どうやら、待ち伏せ張り込んでいたらしい。
現地のリポーターが言う。
「たった今、わたなべゆうきさんが、ダイハツの車から降りました。今、病院の玄関まで、向かっている最中です。あ、今、玄関を通ります」
玄関を通る俺。
多くのマスコミ、カメラマンのシャッター音。
取材に質問してくるマイクをもった記者。
「今のお気持ちは?」
「日本は大変なことになりますよ?」
「今後は、どうするおつもりですか?」
「今日のウエスタンバイキングにはご出席するご予定ですか?」
「泌尿器科へ行くんですよね?」
質問の嵐。
俺は、一言だけ。
「うん……」
といって、あとその他多くの質問無視し、泌尿器科へと向かって言った。
そして、病室についた。
「いらっしゃい、とうとう決心したのね」
背の高い、エロそうな、女医が一人、回転する丸い椅子に、座り眼鏡をかけて一言。
「さぁ、すぐに始めるわよ」
なんの説明もなく、いきなり言ってくる。
「さぁ、おちんちんだして~♡」
嬉しそうな、表情で言ってくる。
「この試験管のなかにおしっこを入れて、わたし、試験管もっててあげるから」
紙コップではなく、なぜか細長い試験管であった。
「さぁ、はやく、おちんちんだして」
ためらう俺は、
「いや、自分でやりますからっ!」
そう言い、試験管を受け取り、トイレへと向かった。
トイレへ向かう最中も。
現地のリポーターが病院の中だったので、小声で
「こちら現場です。今、なにやら、細い試験管をもって、わたなべゆうきさんが出て来ました。これから、検尿を行うのでしょうか? 周りを少し、キョロキョロと見ています。気になる感じで、周囲を見ています」
そして、スタジオのものが、
「そちらの近くにはけっこう、女性の方は、いますか?」
リポーターは答える。
「こちらは、今、病院前では混乱を防ぐため、厳戒態勢を敷いており、本当に体調の悪い病人の方だけしか、中には入れないようになっています。あ、わたなべゆうきさんが、今、トイレに向かいました。現場からは以上です」
そして、スタジオの裏方が。
4カメラ回して。
4カメの映像が、TVに映し出される。
それは、トイレに仕掛けてある、トイレカメラだ。
ばっちり、トイレの斜め上から、はっきりと映るようになっている。
しかし、タチション用の、両端のガードがあるせいで、はっきりとは見えない。
「いやー、両端のガードがあって見えないですね」
スタジオの人間。
裏方の人間が。
「6カメ! 8カメどう?」
「ダメです。ちんぽ映っておりません」
「くそぉ……そうくるかぁ……」
よもや、これは、犯罪である。
トイレにカメラを仕掛け、それを眺めるだなんて、あり得ない愚行。
人のやる所業じゃない。
一応、言っておく。
これは、妄想。
実際の行動は。
病院の駐車場の車の中で、ワトソンはただただ佇んでいるだけであるからな。
そして、俺は、カメラを意識いながら、絶対に地上波に、俺の放尿シーンが流れないようにと、必死に便器の中央部の壁にポコチンを近づけ、試験管から的が外れないように、上手に、便器と、体の隙間から見える、一本の竿先をみつめ、そして、その竿先の亀頭から、少量のおしっこを、まるで、オシッコの内職職人のように、プロの技術で、一滴もこぼすことなく、手にかかることもなく、オンエアに醜態をさらすことなく、無事検尿を終えた。
そして、診察室へ戻り。
エロそうな女医は言った。
「お疲れ様。結果はのちほど連絡するわ。今日のバイキング楽しんで来てね」
そう言われ、俺は、診察室をでて行き。
「終わったな……」
一言いい、26年間のDTフィールドを解除したのであった。