ウスイホン/カタナ/スイジン
その宗教に属する女性は自らを腐っていると卑しめる。
聞けば薄い本を神の象徴として崇める邪教で、千年前から存在するらしい。
いまに至るまで特定の国の国教に定められたことはないが、信徒は世界中にいるという。
ある日、親友と思っていた女性から、自分は腐っていると告白されたのには驚いた。
母にそれを相談したら、あら私もよ、と薄く笑った。
* * *
刀を拝領した。
しかし実に奇妙な形。
くねっており、大きすぎる四角い部分がある。なぜ穴が開いていて、周りに玉が揺れているのか。
鞘もなく、持ち方すらわからぬ。そして時折細かく分かれて床を這うのだ……。
見張り続けていないと不安で、眠る事も登城する事もできない。
もしかして私は戦功などあげておらず、罰せられているのか。
* * *
毎日泣いていたら水の神様として祀り上げられた。
私を囲んで神殿が建ち、大勢が拝む。私の涙をあてにして随分農地も広がったらしい。
綺麗な服、丁寧に世話をしてくれる人達、不自由のない生活。
もう何を悲しんでいたのか思い出せない。
涙がおさまりかけているけれど、一度泣きやんだ時の皆の顔ときたら…。
Fino