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暗殺スキルで守りたい〜最強暗殺者の息子、父から教わった技でもう誰も失いたくない〜  作者: えうの むと
第2章 学院試験編

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23 別れ

 二日目の朝、俺は6時30分に目を覚ました。

 昨日とは違い、自然に目を覚ます事は出来ず、今日は目覚まし時計に叩き起こされた。

 これも昨日の試験の疲れが原因だろう。

 2日続けての試験は想像していたよりも過酷だな。

 

 しかも昨日は国内1位、今日は国内2位の学院を受験するんだ。さすがにハードスケジュールすぎる……

 だが、愚痴を言っていても仕方がない。

 

 俺は窓を開け日光を浴びてからいつも通りのルーティンを繰り返した。


 ―――――――――


 クライナート魔法学院の試験も無事に終了した。

 ラドフォーリア魔法学院と同じで午前中が筆記試験、午後からは実技試験という構成だった。


 国内二位のレベルなだけあって試験も、ひと筋縄ではいかなかったが、十分合格点は取れたと思う。


 昨日と今日の疲労がどっと体に押し寄せていた。

 しかし、俺たち、もとい、俺とキアラは試験が終了した後、すぐに合流し、もうすっかり日が暮れた夜の街を歩いていた。


 「疲れたー。」

 

 隣でキアラがうんと背伸びをしている。


 「ルカ君もお疲れ様! さてと、今日はパーッと打ち上げをしよう!」


 隣で張り切っているキアラを見て、俺も少しは体の疲れを忘れることができた。

 俺達はそのまま適当な店に入り、飲み物を注文した。


 「じゃあ、あらためて、試験お疲れ様」


 俺の声に合わせて二人でグラスを合わせる


  「「乾杯!」」

 

 そのままグラスに入った飲み物を喉に流し込む。

 

 一般的なジュースだと思うが、渇いた喉に染み込み、試験が終わった安堵感からか今まで飲んできたどんなものよりも美味しく感じられた。


 「キアラも明日帰るんだよな?」

 「うん、そうだよ」


 俺もキアラも明日一度家に帰る。

 試験の合格発表は約1ヶ月後だから、それまではお互いに実家で過ごす。

 もしも合格していたらまた王都に戻ってきて、そこからは学院の寮で暮らすこととなる。


 「私達、今日でお別れかもしれないね……」


  自信なさげにキアラが呟いた。

 

 「そんなことないさ」

 「ルカ君はラドフォーリア魔法学院に合格すると思うけど、私は自信ないなぁ。私はクライナート魔法学院も怪しいし」 

 

 正直、俺はラドフォーリア魔法学院も合格圏内ではあると思う。

 筆記試験もある程度できたし、実技試験ではルーメンから合格だろうと言われたからだ。

 正直、あの男から合格だろうと言われたことが俺の自信に繋がっている。

 だって、あのルーメン・ギルバルトだぜ?

 今日、部屋に帰ったあと少し調べたが、どうやらとんでもない男のようだ。

 そんなルーメンに『十分合格圏内だ』なんて言われたんだ。

 多分大丈夫だろう。


 「もしもお互い別々の所に進んでも、またこうして一緒にご飯食べようね」


 なんだか少し寂しそうなのは気のせいだろうか?

 

 上目遣いで美女からそんな事を言われたなら男として『了解です』と端的に答えるしか選択肢はない。


 「了解です!」

 「もー。なんで急に敬語なのっ」

 「あはは。ごめんごめん」

 

 ちらりとキアラの顔を見ると頬がほんのりと赤く染まっていた。


 「ところでルカ君はどんな女の子がタイプなの〜」

 「き、急にどうしたんだよ」

 「えーいいじゃん。これくらい教えてよ~」


 おかしいな。

 キアラが頼んだドリンクにもアルコールは入っていなかったはずだが。


 「まだ自分でも分からないな。今まであんまり女の子と関わって来なかったから」


 シエルとテイラさん以外でほとんど関わって来なかった。

 

 「え?そうなの?」

 「うん。村に同級生の女の子が少なくて」

 「ふ~ん」


 そのうち俺も恋をする日が来るのだろうか?


 「(じゃあ私が初めてって事か……)」


 ボソッとキアラが呟く。 

 

 「え? なんか言った?」

 「う、ううん。なんでもない」


 キアラは慌てて首を振った。


 「そういうキアラはどうなんだ?」

 「わ、私!? 私は………………」 


 一瞬キアラが俺を見た。

 そして数秒待ってから。


 「やっぱり、まだ教えない」

 「えー。教えてくれてもいいじゃん」

 「駄目だよ。ルカ君だって誤魔化したんだから」

 

 俺は誤魔化してはいないぞ。

 ただ本当に自分のタイプというのが分からないだけで。

  

 そんな他愛もない話を続けて、気づけば時刻は午後11時を過ぎていた。

 店から出ると、夜の冷たい空気が皮膚を刺激した。


 「じゃあ、ここで一旦お別れだね……」


 キアラが寂しそうに呟く。

 また会えても1ヶ月後だ。

 

 正直、俺にとってキアラはもう、戦友みたいなものだ。

 今生の別れではないが、友達と1ヶ月会えないのは中々寂しい。

 

 「今日は楽しかったよ」

 

 言葉を交わすほど、辛くなると思ったので俺は簡単に切り上げようとした。

 「じゃあ……」

 「待って」

 

 手を挙げて別れの合図をした俺を、しかし、キアラは呼び止めた。

 何か言いたげで、俯いていたキアラは、意を決してか口を開いた。

 

 「……正直言うとね、私、多分ラドフォーリア魔法学院は落ちてると思う」

 「……」

 「そして、ルカ君はきっと合格してると思う」


 その言葉に俺はどう返して良いか分からず、ただ彼女の話に耳を傾けた。

 それから、彼女は赤裸々に胸の内を語った。 


 「ラドフォーリア魔法学院は筆記試験も全然できなかったの。緊張して、いつもの実力が出せなかった。…………いいえ、見栄を張ったわ。いつもの実力でもきっと、私には難しかったと思ってる。実技試験の時も、ルカ君がすごかっただけで、私は全然何もできてない」


 俯いてしまって表情こそうまく読み取れないが、ただスカートの端をきゅっと握りしめる手が彼女の心を表していた。


 「私、悔しかったの。何もできない自分が嫌」


 ポロッとキアラの目から涙がこぼれた。


 「ラドフォーリア魔法学院はもう無理。クライナート魔法学院は…………正直どうかな? 自信は全くないな」


 そこでキアラは『あはは』と無理に笑ってみせた。

 

 「言ってなかったんだけど、どっちも合格できなかったら、実家の手伝いをすることになってるの。だから、もし両方だめだったら、もう王都には戻らない。それが受験するための親との条件なんだ……家があまり裕福な方じゃなくてね。私が無理言って受験させてもらってたから」


 え?


 「ごめんね。急に暗い話しちゃって」

 

 じゃあこれが最後の別れになるかもしれないのか?

 俺はてっきり、またキアラとも王都で会えると思っていたのに……

 だから、簡単な別れで済ませようとしたのに。

 いや、まだそうと決まったわけじゃないだろ。

 ネガティブなことばかり考えるな。

 

 「私達は、きっと進路は別々になってしまうけど、…………ううん、何でもない。あらためてルカ君、ありがとう」


 それだけ伝えると、キアラは走りだし人混みの中に消えていった。


 「キアラ!」


 俺の呼びかけにも応えず、夜の街に吸い込まれるようにして俺の前からいなくなった。


 クソ!

 なんでこうなる!


 「あーもう!」


 俺の中でやるせない気持ちが溢れ出す。

 時刻はまだ、12時を過ぎてはいない。


 俺は急いで商店街の方に足を運んだ。


 

 



 ―――――――――


 

 俺が知ってるのは、キアラが明日出発するということだけだ。

 どこから出発するのか、何時に出発するのかは何も分からない。


 あれがキアラとの最後の別れになるなんて絶対に嫌だ。


 じゃあどうすればいいか?

 答えは簡単だ。


 大通りの前で、1日中待っていればいい。

 馬車は必ずここを通るからだ。

 だから俺は一睡もせず、夜の12時からずっと、馬車に乗っている人物を確認し続けた。


 そして現在の時刻は朝の6時。

 2日間の試験のせいと、睡眠不足のせいで俺の体は悲鳴を上げていた。


 さっきから視界がぼやけて、気を抜くと眠ってしまいそうになる。


 睡魔との戦いに耐えながら、俺はなんとか意識を保っていた。


 その時――――――


 視界の端で、綺麗に結ばれた茶色のポニーテールがゆらりと映った。


 その瞬間、俺はその馬車を走って追いかけた。


 「キアラ!!」


 そう叫ぶと、馬車の窓から顔を出した彼女は驚いたようにこちらを見た。


 馬車においつくように、全力で足を動かした。


 そして、


 昨日商店街で買った半月型のペンダントの()()を、キアラに渡した。

 


 渡したのは冥狼のペンダント。

 半月型のペンダントが2つに割れたデザインで、それぞれを合わせると満月の形になる。

 冥狼という危険度Aランクの魔物の牙から作られたペンダントで、古代から離れ離れになる者たちが再び出会えるようにという願いが込められ作成されたものだ。

 

 俺は帰りの馬車代をすべて使ってそのペンダントを購入した。


 「俺はまだまだキアラと話したいことがいっぱいある!! だから、また必ず会おう!!」




 俺の言葉に、キアラは馬車の窓から落ちそうになるほどに身を出した。


 「うん!! また、必ずね!! 

 ありがとーーー!!!!!」


 彼女は泣いていて、そして、笑っていた。


 視界の中で馬車はどんどんと小さくなっていく。

 また会える日を信じて、俺は大きく腕を振り上げた。

 

不定期更新申し訳ないです……

これで学院試験編は終わりとなります。一つの区切りとして、ここまでの内容を評価していただけたら幸いです。


面白ければ、ブックマーク、☆☆☆☆☆などよろしくお願いします。

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