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18 二人の戦い

 仕組みは単純だった。

 俺は閃いた瞬間、魔力探知を行った。

 思った通り、俺の周りにはルーメンの魔力が充満していた。


 つまり、ルーメンが右手を上に振り上げたあの時から、奴は自分の魔力を周りに分散させていたんだ。

 それがあの、何もないところから疾風刃(ウィンドブレイド)が飛んでくる理由になっていた。


 自分の身体から離れた魔力を操作することで、いたるところから疾風刃(ウィンドブレイド)を生成していたんだ。


 だからこの戦況を切り抜ける方法は一つ。

 ルーメンの魔力が周りに感じない所まで、逃げればいい。

 遠くに場所を移す。

 そう考え、俺は無数の風刃が降り注ぐ中、タイミングを見計らって走り出した。


 考えどうり、俺を追撃してくる疾風刃(ウィンドブレイド)の数は徐々に減っていく。

 

 あいつの技術は半端ない。

 通常、魔力は体の中で扱うものだ。

 身体から離れた魔力を扱う技術は、直観や意志、生まれつきのセンスなど、あらゆる能力が必要となる。

 って本に書いてあった。

 ちゃんと勉強しておいて良かった。


 おそらく、ルーメンの技術力はこの試験を受けている奴らの中で一番だ。

 天才と称されるだけのことはある。

 まったく、面倒な奴に目をつけられたものだ。


 「やっと気づいたか」


 俺を追いかけてきたルーメンがそう呟く。

 

 「だが、少し遅かったな。日頃から魔力探知を行っていればすぐ気づけたはずだ」


 そんなこと誰がしてるんだよ! とツッコミたくなったが、こいつからしてみればそんなこと普通なのか?

 天才の常識は理解ができない。


 しかしそれは俺にとっていいアドバイスになった。

 確かに俺は今まで人の気配や、音などで索敵を行っていた。

 そこにさらに魔力探知が加われば、より正確に敵の位置が分かるようになるかもしれない。

 今後の課題だな。


 一分ほど全力で走ったところで、ルーメンのテリトリーからは抜け出すことができた。

 周囲に他のチームがいないことを確認して俺は足を止めた。


 「あの技はなかなか面白かっただろう?」

 「もう御免だね」

 「ははっ。安心してくれ。トリックに気づいたのなら、同じ技は君に通用しないことくらい僕も分かってるさ」


 さっきの技でルーメンとしても膨大な魔力を消費しているはずだ。奴としても同じ技は使いたくないだろう。


 「そうそう。気になっていたんだが、なぜ魔法を使わない? さきの戦いでもう魔力を使い果たしたのか、それとも、お前なんて魔力を使わずとも勝てるという挑発か?」


 ルーメンは少々威圧感のある声でそう発言した。

 そんな安っぽい挑発なんてするわけないだろ。

 使えたら使ってるよ。

 馬鹿にされることを覚悟で、俺は正直にルーメンに話す。

 

 「…………使えないんだ」 


 しかし、返ってきた返答は以外にもあっさりしていた。

 

 「ふん、そうか」

 「……馬鹿にはしないのか?」

 「別にしないさ。現に君は僕の魔法をまだ一度もまともにくらっていないじゃないか。それが君の強さを証明している。それに、かの三代目王国騎士団長を務めたルーカスも魔法なんて使わずに、剣一本で最強の位置まで上り詰めている」


 王国騎士団長。それはこの国での最強の称号。

 

 「さっきある貴族に魔法が使えないって言ったら心底馬鹿にされてな。貴族はみんなそういう奴だと思っていたが、どうやらそうでは無さそうだな」

「僕をそんな低能と一緒にしないでくれ。結局、魔法というものは、強く成るための一つの手段でしかないのさ。魔法だけで相手の強さを決めつけるなんて行為は愚かだよ」

 

 聞いているかリゴドー。

 お前、低能で愚か者だってよ。


 「しかし、多くの貴族が今君が話した貴族のように間違った考え方をしているのも事実だ。ラドフォーリア魔法学院には当然貴族が多い。平民で、しかも魔法が使えない君にとっては、少々()()()()()()()()かもしれないよ?」

 「それは俺が決めることだ」

 「フッ、そうだね。余計な事を言った。謝ろう」


 ルーメンは軽く頭を下げた。

 その一挙手一投足に上品さがにじみ出ている。

 こういう奴が一番侮れないんだよな…


 「さて、バトルを再開しようか」

 「ああ、こい!」


 短い会話を交わした後、俺たちは再び戦闘態勢に入った。




 ―――――キアラ視点―――――


 

 キアラは必死に逃げていた。

 追いかけてくるナーコから距離を取りながら。

 決して正面から戦おうとしない。


 「面白くない」


 ぽつりとナーコの呟きが聞こえる。

 

 キアラは昔から相手の力量を測ることに長けていた。

 正面から戦えば負けるのは確実。

 それくらいキアラとナーコとの間には差がある。


 つまりこのチームに勝つための方法は1つ。

 ルカ君がルーメンを倒して、私と2対1でナーコと戦うしかない。


 「本当にあの男の言葉を信じているの?」


 『後で駆けつける』

 ルカ君の言葉が頭に浮かぶ。


 「信じてるわ」


 迷いなく、そう答える。


 「ルーメン君に勝つなんてできないよ。私、今までルーメン君が負けたとこなんて見たことないもん」


 噂は知っている。

 伝統あるギルバルト家。 

 その中で歴代屈指と言われる才能の持ち主。

 魔力操作に秀で、ついた二つ名は

 

 『風の舞踏者』


 「ルカって人なかなか強いと思うよ。ルーメン君笑ってたし。けど、()()()()()()()()()()

 「!?」


 物静かなナーコが強調していったその言葉に、不安が生じる。

 数秒考え、しかし

 ううん!

 とキアラは首を振った。


 ルカ君も相当強い。

 少なくとも私には測れない位に。


 「面倒くさい」


 その言葉と同時にナーコは手を構える。


 「岩石弾(ストーンブレット)


 数十個の拳より大きい岩石がキアラに襲い掛かる。

 瞬時に振り返り、キアラも魔法を発動させる。

 

 「『樹木(じゅもく)防壁(ぼうへき)』!」

 

 地面から木をはやし、ナーコの攻撃を防ぐ。

 しかし、すべてを防ぎきることはできなかった。

 よけようと左に跳ぶが


 「っいた!」


 着地の瞬間、キアラは足を捻ってしまう。

 

 「うっ…」


 それでもキアラは足を止めなかった。 

 再びナーコから全力で逃げる。

 

 ルカ君も頑張ってるんだ! 

 そう自分を鼓舞して足を動かした。



 


 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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